「保有数量」は価格推移と同じくらい重要

 低迷パターンが圧勝したのは、この取引が「積立」だからです。

図:積立シミュレーション(3パターンの累積保有数量) 単位:グラム

出所:筆者作成

 多くの場合、大まかな収益の計算は「保有数量×価格」で行います。積立の場合、毎月一定額を購入に充てるため、価格が変動すると購入する数量が変動します。

 上の図は、暴騰パターン、暴落パターン、低迷パターンの累積保有数量の推移です。最終的な保有数量は、暴騰パターンが421グラム(貴金属の積立を想定しているため、数量の単位はグラム)、暴落パターンが984グラム、低迷パターンが5,262グラムでした。低迷パターンは、暴騰パターンの13倍、暴落パターンの5倍になりました。

 低迷パターンの価格は、取引開始から40年間、1,000円で低迷し続けました(2024年3月から2064年2月)。低迷パターンはこれを利用して累積保有数量を効率的に増やし、その増えた保有数量が決め手となり、資産の額で他を圧倒しました。

価格低迷は月々の購入数量を増やす大好機

 以下は暴騰パターン、暴落パターン、低迷パターンの月々の購入数量の推移です。低迷パターンは、最後の10年間こそ価格が上昇したため月々の購入数量は減少したものの、価格が長期で低迷した取引開始から40年間は、月々の購入数量は高止まりしました。暴騰パターンの4.5倍もの購入があったタイミングもありました。

図:積立シミュレーション(3パターンの月々の購入数量) 単位:グラム

出所:筆者作成

 このシミュレーションは、積立投資では「価格低迷が月々の購入数量をいかに増やしてくれるか」を改めて教えてくれています。

 さらに言えば、価格が「ゼロ円」に近づけば近づくほど、月々の購入数量は増加しやすくなります。仮に月々の投資額が9,835円(1万円の投資金で購入時の手数料1.65%を考慮)だったとして、価格が8,500円から6,500円に下がると、購入できる月々の数量は0.3グラム増えます。

図:積立シミュレーション(価格がゼロ円に接近した場合の月々の購入数量)

出所:筆者作成

 価格が6,500円から4,500円に下がると(同じく2,000円下落)、同0.6グラム増えます。4,500円が2,500円に下がると1.7グラム増、2,500円が500円に下がると15.7グラム増加します。低迷パターンの月々の購入数量が常に高水準だったことは、こうした曲線的な傾向の上で起きたと言えます。