クイズの正解:3条件は市場の成長性、占有率、参入障壁

 正解は、【3】、【4】、【5】です。

<成長株の3条件> 

No 評価項目 高い/低い
【3】 市場の成長性 高い
【4】 市場シェア(占有率) 高い
【5】 市場への参入障壁 高い
出所:筆者作成

 【1】過去3年の株価上昇率が高い、はダメです。確かに、過去の株価上昇率が高い銘柄には、成長株も含まれています。ただし、株価が上がってしまってから投資するのでは面白くありません。これから投資する成長株の候補を出すのに、過去の株価上昇率が高かった銘柄を選ぶのは、良い方法と思いません。

 【2】PERが高い、もダメです。高成長が期待できる銘柄にPERが高い銘柄が多いのは事実です。でも、単に業績が悪くてPERが高くなる銘柄もたくさんあります。成長株を選ぶのに、PERが高いことを条件とするのは、良い方法とは思いません。

 今、ITやAIによって、経済構造ががらりと変わる時代です。成長株の候補はたくさん見つかります。ただし、そこから、本当に成長する株を見分けるのが大変です。

 1番目・2番目の成長条件を満たす企業(高成長市場で高シェアの企業)は、けっこうたくさん見つかります。ただ、3番目の条件(参入障壁が高い)まで満たす株は、簡単には見つかりません。

 今までなかった新しいネットサービスをはじめ、需要が急増しているネット企業があると、投資家はそれを成長株としてはやします。そうなると、株価が大きく上昇します。ただし、その後が問題です。よくあるのは、新規参入が増えて、あっという間に過当競争になり、利益が稼げなくなることです。そうなると、株価は暴落します。

 参入障壁が低いビジネスで成長できる期間はとても短くなっています。だから私は、成長株の調査を行うとき、3番目の条件(高い参入障壁)が満たされるか、念入りにチェックします。

成長株の3条件を満たしていると確信した企業でも、成長できずに終わることがある

 どんなにしっかり調査して成長の3条件を満たしていると確信した企業でも、投資した後、成長ストーリーが崩壊して、株価が暴落することがあります。

 私がファンドマネージャーをしていた時代、私が「これはすばらしい」と考えた成長企業の候補でも、実際に大きく成長できたのは1割か2割しかありませんでした。

 失敗例に、例えばシャープがあります。1990年代には輝く未来の成長企業に見えていました。液晶の主要技術をほとんど押さえていて、「将来テレビが全てブラウン管から液晶に置き換わるときに、大きく成長する」と、成長3条件を満たす高成長企業として私は確信していました。

 実際、ブラウン管はほぼ全て液晶に置き換えられ、液晶市場は急成長しました。ところが、シャープは液晶でもうけることはできませんでした。知的財産権の防御ができていなかったシャープの液晶技術はほとんど無償でアジア企業に流出し、低コストで大量生産するアジア企業に利益を奪われてしまいました。

 成長を確信していた企業が成長できなくなってしまう例は、他にもたくさんあります。

損切りルールは必要

 値動きの激しい小型成長株投資では、失敗した銘柄は売る「損切りルール」が必要と思います。成功した銘柄は持ち続け、失敗した銘柄をきっちり売っていくことが、成長株で成功する鍵です。

 損切りルールとは、「買い値より10%下がったら売る」とか、「買い値より20%下がったら売る」というように、損切りラインを決めておくことです。何%下がったら売るかは、投資家が自分で決める必要があります。決めたら、そのルールをきっちり守って損切りすることが必要です。

 私は、「20%下がったら、どんな理由があっても絶対売る」と決めておくのが良いと思います。小型成長株を買ってから20%も下がるということは、何か大きな間違いをしているということです。どんな理由があっても売る、と決めておいた方がよいと思います。

 もちろん「10%下がったら売る」というルールでも構いません。皆さまが管理しやすい%で結構です。以下は、損切りがなぜ必要なのか分かっていただくために、作成したイメージ図です。

<急落する失敗銘柄を早めに損切り(イメージ図)>

出所:筆者作成

 成長株投資で大成功して一財を成した人は、大もうけした銘柄の話をよくしますが、その陰には失敗銘柄を早めに損切りした話がたくさんあるはずです。それができたからこそ、本物の成長株で大もうけすることができたに違いありません。

 失敗銘柄を、早めに損切りできることが、高成長銘柄で稼ぐための条件となります。ところが、成長期待企業の、成長ストーリーが崩壊していることに気付くには時間がかかります。失敗銘柄が失敗銘柄だと、はっきり分かったときには、株価は暴落して大けがした後です。

 そうなる前、「なんか変」と思う段階で、すばやく損切りすることが必要です。どんなに遅くとも、20%下がったときには、損切りすべきだと思います。