毎週金曜日午後掲載

本レポートに掲載した銘柄エヌビディア(NVDA、NASDAQ)スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI、NASDAQ)マイクロソフト(MSFT、NASDAQ)アマゾン・ドット・コム(AMZN、NASDAQ)メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ)ディスコ(6146、東証プライム)アドバンテスト(6857、東証プライム)レーザーテック(6920、東証プライム)東京エレクトロン(8035、東証プライム)

1.AI半導体と生成AIの大ブーム、現在までに何が起きたのか

1)2022年11月30日、「ChatGPT」の公開によってITとハイテクグロース株投資が一変した

 今回は、2024年1-3月期、2-4月期決算発表シーズンを前に、ハイテクグロース株投資について考えてみたいと思います。銘柄選別をせずにハイテクグロース株に投資するにはどうすればよいか、アメリカの金利とハイテクグロース株投資をどう考えるかなどです。これらの問題は、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を使ったハイテクグロース株投資にもかかわってきます。

 なお、ここでの私の意見は、アナリストとしての今中個人の意見です。楽天証券がこれまで発信してきたことと相違点があることもあるかもしれませんが、その点はご理解ください。

 2022年11月30日、アメリカのAI研究機関「オープンAI」が対話型生成AI「ChatGPT」を公開しました。対話形式でAIに質問することで、検索の代わりになったり、文書生成、プログラミング生成ができたりと、それまでのAIと大きく違ったAIが出現したことに世界は驚き、関連する企業の株価は大きく上昇しました。オープンAIはマイクロソフトと密接な提携関係にありますが、マイクロソフト以外にも、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、アルファベットのGAFAMの各社が相次いで自社の生成AIと生成AI戦略を発表しました。

 また、生成AIシステムを動かすには高性能AI半導体を搭載したAIサーバーを大量に設置した大規模データセンターが必要になることから、AI半導体メーカーであるエヌビディア、AMDの株価が上昇しました。半導体製造装置にも大きな影響があるため、東京エレクトロン、ディスコ、アプライド・マテリアルズなど日米の半導体製造装置メーカーの株価も上昇しました。

 このほか、エヌビディアと密接なつながりをもつIT企業、セールスフォース、オラクル、サービスナウ、スーパー・マイクロ・コンピューターなどの株価も上昇しました。

2)エヌビディアが強大になってきた

 ChatGPT等の生成AIが多くの人に使われるようになっていく過程でデータセンターのAIサーバーの増強が必要になり、AI半導体の需要が急増しました。その結果、AI半導体で市場シェア90%前後を握るエヌビディアの業績が急拡大し、半導体市場、IT市場そして株式市場へ大きな影響力を持つようになりました。

 生成AIとAI半導体の市場見通しも、各々年率70%以上の高成長が予想されています。

 生成AIが誕生したそもそもの理由は、

  1. グローバル展開している大手企業が発行する文書類、例えば、製品・サービスの取扱説明書、環境、人権等の関連文書、法務関係文書などが急増しており、これらの文書類を数十カ国語に翻訳して毎年更新しなければならない。これらの文書をAIで自動生成できないか。
  2. 情報システムが巨大化するにしたがって、プログラミング需要も大きくなっているが、定型化されたプログラミングも多い。それらを自動生成できないか。
  3. 広告宣伝の分野でも、マス・マーケティングから広告の対象を特定の層に絞り込む「個」マーケティングへとマーケティングが変化している。この動きに従って、企業が作る広告やプレゼンテーション資料が急増している。そこに載せるイラスト、画像、動画をAIで生成できないか。

 このような需要があったことが生成AI誕生のそもそもの問題意識であったと思われますが、これを突き詰めてお金をかけて開発した結果、「ChatGPT」のような対話型AIアシスタントへと進歩したのです。これを製品化した代表例がオープンAIの生成AI「GPT-4」を搭載した業務支援ソフト、マイクロソフトの「Microsoft Copilot」です。

 ここまでのお話は、企業の中でも主に事務系、業務系の効率化についてです。

 ところが、エヌビディアが強大な影響力を持つにしたがって、単に事務系、業務系の効率化に止まらず、生成AIを企業活動の中枢部分に使おうという動きが出てきました。

 2024年3月に開催されたエヌビディアのテクノロジー・カンファレンス「GTC2024」において、エヌビディアは新型AI半導体「Blackwell」を発表しました。そして、「Blackwell」の大きな市場として、研究開発、製品開発と設計、工場の設計と運営に使える「シミュレーション」を挙げました(図1)。現在この分野は、スーパーコンピューターや専用の高性能ワークステーションで「エンジニアリング・ソフトウェア」と言われるシミュレーションの専門ソフトを動かしています。ハードウェア、ソフトウェアともに高額ですが、ここに「Blackwell」を2個から数百個以上搭載したシステムを投入して、スーパーコンピューターよりも安い金額で高度なシミュレーションができるようにしたいということがエヌビディアの野心だと思われます。

 要するに、単に企業の事務系、業務系の効率化に止まらず、研究開発、製品開発と設計、工場の設計と運営という企業(特に大規模製造業)の中枢に生成AIとそれを動かす自社のAI半導体を設置したいということです。対象業種は、薬品・バイオ、医療、航空宇宙、防衛、自動車と自動車部品、化学・素材などの幅広い業種と、気象、地質、医療などの国の研究機関などになると思われます。

 このビジョンを実現できるのは現在のところエヌビディアだけであると思われます。富岳クラスの高性能スーパーコンピューターを動かすのであれば別かもしれませんが(富岳は総費用約1,300億円、開発期間7年)、高精細CGを高速駆動するシミュレーションをAI用GPUで動かす場合、グラフィックの精度と処理スピードに関してエヌビディアの技術力に勝る企業は今のところないと思われます。

グラフ1 生成AI関連ソリューションに対する世界の企業支出

単位:億ドル、出所:IDC2023年12月21日プレスリリースより楽天証券作成、生成AIソフトウェアと関連のインフラハードウェア、IT/ビジネスサービスの合計

グラフ2 AI半導体の世界市場予測

単位:億ドル、出所:AMDより楽天証券作成、2023年はAMDのコメント(2027年4,000億ドル、年率70%成長)より計算

図1 エヌビディアが生成AIを使ったシミュレーターで参入を目論んでいると思われる分野

出所:「GTC2024」基調講演を参考に楽天証券作成

3)AI半導体の構造が複雑になるにつれ、半導体製造工程も複雑に

 AI半導体が行う処理が複雑なものになるにつれてAI半導体の構造も複雑になり、製造工程も複雑になってきました。

 AI半導体は、従来の半導体の考え方を大きく変えるものです(これについては、楽天証券投資WEEKLY2024年3月29日号、4月5日号を参照)。1,040億個ものトランジスタを詰め込んだ長方形のシリコンチップを2つ接続して(トランジスタは2,080億個。現在のエヌビディアの主力機種「H100」は800億個のトランジスタを搭載)、周辺に合計192GBの「HBM3e」(「HBM」はDRAMの最新規格「DDR5」をベースにした特殊メモリ。「HBM3e」はHBMの最新型)を配置して、一体でパッケージします。これが一つの「Blackwell GPU」です(図2)。シリコンチップを2つ接続するのは、1枚のシリコンチップの面積がEUV露光装置の露光限界になるためと思われます。生産ラインはTSMCのN4P(4ナノの拡張版)を使います。

 この「Blackwell GPU」2個を接続したものが「B200」、「Blackwell GPU」2個とエヌビディアの自社製CPU「Grace」1個を接続したものが「GB200」になります。さらに、「Blackwell GPU」72個、「Grace CPU」36個を接続して、液体冷却装置を付けたものが「GB200NVL72」になります。価格は「Blackwell GPU」1個が3~4万ドル。「H100」が推定2.5~4万ドルです。

「Blackwell GPU」は2個以上接続するため、「H100」よりも高くなりますが、性能が良いため、コストパフォーマンスは大幅に向上しています。「H100」と「B200」とでは推論性能は約15倍、学習性能は約2倍、「H200」(H100の主に省エネ性能を向上させたもの)と「GB200」とでは推論性能は最大約30倍になります。大規模システムを組んだ場合、8000個の「H100」で組んだシステムと2000個の「Blackwell GPU」で組んだシステムで各々機械学習を行うと、消費電力は約4分の1になりました。

「Blackwell GPU」のようなGPUでAIの機能である学習と推論を行うAI半導体は、HBMを搭載することが特徴です。先端ロジックと先端メモリが一緒にパッケージ化されているのですが、これは半導体の中でも珍しい構造です。そして、AI半導体を増産するためには先行してHBMの設備投資と増産が必要になります。AI半導体の増産は、DDR5ウェハの増産→HBMの増産と生産工程の複雑化→グラインダを始めとしていくつもの種類の半導体製造装置の需要増加、に結びつくと思われます。

 ここでもAI半導体の複雑さが半導体製造装置の需要に影響しています。AI用GPU、HBMともにダイ(半導体チップを「ダイ」と呼ぶ)が大きいことが生産の難しさにつながっているのです。

 また、「HBM3e」はDDR5ウェハを8枚、ロジック制御系ウェハを1枚積層して作ります。製造工程の模式図が図3ですが、複雑な製造工程になっており、ディスコのグラインダ(ウェハの底面を薄く削る)をはじめとして製造装置の需要増に結びついています。また、HBMの需要増加、生産増加によってDDR5ウェハの需要も増加していますが、これは早晩DDR5ウェハの需給逼迫に繋がると予想されます。このため、今はDRAMメーカーはDRAM市況が十分上がっていないことを理由に増産投資を控えていますが、2024年後半からDRAM投資が増加する可能性があります。

図2 エヌビディア:「Blackwell GPU」の構築(模式図)

出所:エヌビディア「GTC2024」基調講演より楽天証券証券作成

図3 HBMの製造工程(模式図)

出所:「ディスコ技術説明会2023」資料等を参考に楽天証券作成

4)半導体セクターのファンダメンタルズは良好、回復から再成長へ

 ハイテクグロース株のファンダメンタルズを確認するために、半導体デバイス、半導体製造装置の重要指標を見てみたいと思います。グラフ1は世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)のグラフ、表1は世界半導体出荷金額(単月)の2024年2月までの推移を示したものです。世界半導体出荷金額(単月)では2024年2月は前年同期比14.3%増、前月比0.8%増と順調に回復、再成長へと向かっています。

 TSMCの2024年3月売上高も前年比34.3%増、前月比7.5%増と強い動きになっています。

 日本製半導体製造装置販売高を見ると、これも底打ち反転してきました。

 このように半導体デバイス、製造装置の重要データを見ると、半導体セクターはすでに底打ちし、再成長に向かっていることがわかります。

グラフ1 世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)

単位:1,000ドル、出所:WSTSより楽天証券作成

表1 世界半導体出荷金額(単月)

単位:100万ドル、%
出所:WSTSより楽天証券作成。

グラフ2 TSMCの月次売上高

単位:100万台湾ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ3 日本製半導体製造装置販売高(3カ月移動平均)

出所:日本半導体製造装置協会、単位:100万円、%

2.銘柄選別をせずに投資するには、各種の指数別、業種別ETF

1)ハイテクグロース株の銘柄選別。半導体は絞り易いが、ITは銘柄選別が難しい

 これはハイテクグロース株全般に言えることですが、ハイテク株投資で難しいのは銘柄選別です。半導体銘柄の中核は今やエヌビディアですが、時価総額が2.2兆ドル(円換算すると約330兆円)の巨大企業なので金利や株式相場全体の影響を否応なく受けると思われます。一方で、競争相手の存在を心配する投資家も多いと思いますが、実際には、今のエヌビディアは技術力が高く巨大化しており、技術力をさらに伸ばすための資金は十分あります(「Blackwell」の開発費は約100億ドル(約1.5兆円))。そのため、この会社を打ち負かす半導体メーカーは当面出てこないと思われます。

 そうなると、AI半導体についての投資対象は、エヌビディア、AMD(エヌビディア製AI半導体の需給ひっ迫が続くならばAMD製の需要も増加すると思われる)、TSMC(エヌビディア、AMDのAI半導体を受託生産している)、マイクロン・テクノロジー(HBMメーカー)など限られたものになると思われます。

 また、半導体製造装置メーカーにとっては、生成AIで使うAI半導体の製造工程は従来よりも複雑になります。その一方で、AI半導体の大量生産が必要になるため、半導体製造装置セクターの中でも各分野のトップ企業(ディスコ、東京エレクトロン、レーザーテック、アドバンテスト、ASMLホールディング、アプライド・マテリアルズ)は有望な投資先と思われます。

 このように、半導体デバイス、半導体製造装置メーカーは投資対象を絞ることは比較的容易であると思われます。

 一方で、生成AIそのものを開発したり、生成AIを使ったアプリケーションソフトを開発する企業、それらの生成AIそのものや生成AIアプリケーションを使って顧客企業に様々なサービスを行うIT企業、AI半導体をAIサーバーに組み込んで販売するAIサーバーメーカー、データセンターにAIサーバーを大量に据え付け、生成AIや生成AIアプリケーションを顧客企業に提供するクラウドサービス会社など、幅広くITの世界では「生成AI関連」の企業は数多くあります。それらをどう選別するか、投資にとって重要な問題です。

 また、ハイテクグロース企業は、栄枯盛衰が激しい面もあります。例えば、アップルは生成AIについてはほぼ何もしてこなかった可能性があります。アップルは当面は投資対象から外しても良いと思われます。ただし、アルファベットも生成AIでは出遅れましたが、巻き返すチャンスはあると思われます。一部で報道されたように、アップルがアルファベットの新型生成AI「Gemini」を使うのであれば、アルファベットはアップルを「Gemini」の「実験台」に使うことができ、「Gemini」の性能を高めることができるからです。

 このように、ハイテクグロース株投資の中でも幅広くITセクターの企業への投資は、個々の企業の製品・サービスの質、戦略、提携、買収などが市場全体に重要な影響を与えるため、銘柄選別が難しい面があります。

2)ハイテク系のインデックス連動型ETF

 ハイテクグロース株投資で銘柄選別をせずに投資する場合は、各種の指数連動型ETF(上場投資信託)を選ぶのがよいと思われます。注目したい指数は以下の通りです。

 半導体に関心がある場合は、SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)。構成銘柄はアメリカ上場の主要半導体関連企業30銘柄です。

 幅広く半導体を含むIT関連企業に投資したいときは、「NASDAQ100」と「S&P500」。「NASDAQ100」はNASDAQ上場企業の中から金融を除く時価総額上位100社を対象とする時価総額加重平均型の株価指数です。「S&P500」は米国の格付け会社「S&P」が算出している米国の株価指数で、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している大型株500銘柄の時価総額加重平均型の指数です。

「NASDAQ100」も「S&P500」も構成銘柄の時価総額上位は時価総額の大きいアップルのようなGAFAM系の会社やエヌビディアになります。ただし、「S&P500」のほうが、構成銘柄の数が多く、ハイテク系の銘柄ではない企業も多く含まれているため、分散度合いは大きいと言えます。

 実は生成AIが経済全体に与えるインパクトを考えるときに、ニューヨークダウも将来は重要な株価指数になる可能性もあるのではないかと私は考えています。それは、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、セールスフォースのような生成AI関連が入っているとともに、これから生成AIの大手ユーザー、特にシミュレーターの大手ユーザーになりそうな薬品・バイオ、航空宇宙の大手企業が入っていること、構成銘柄の株価を合算して銘柄数で割って一定の修正を加えて算出する株価平均型指数なので、個々の銘柄の株価の変化が指数に影響を与えることです。もし近い将来生成AIの業績上のインパクトがアメリカの大手企業に表れることがあるならば、他の指数よりもニューヨークダウにその変化が現れるかもしれないという仮説です。時価総額加重平均型指数の場合は、重要企業の時価総額が小さい場合、その重要企業の株価の上昇が指数に対して影響するには時間がかかります。

 もっともこの考え方はあくまでも仮設であって、過去のデータを見る限りニューヨークダウに投資する魅力は他のインデックスほどではないと思われます。

 ただし、同じ株価平均型指数であっても、日経平均株価はハイテクグロース株投資にとって重要な指数になると思われます。株価平均型指数ですから、東京エレクトロン、レーザーテック、ディスコ、SCREENホールディングス、アドバンテスト、ソシオネクストのような所謂値がさハイテク株の影響を強く受けるのです。

 この他に重要なのが、アメリカで盛んな業種別、テーマ別ETFです。半導体、IT等で何種類ものETFがあります。

 まとめると、SOX指数連動型ETF、NASDAQ100連動型ETF、S&P500連動型ETF、ニューヨークダウ連動型ETF、日経平均株価連動型ETF、アメリカの半導体、ITセクターETFに各々単独か、組み合わせて投資してみてはどうかということです。複数のETFに投資すると銘柄が重複する問題がありますが、普通の運用でも重複問題はあります。組み合わせる場合は投資家自身の今後の見方、好みや関心事によりますが、SOX指数に投資するか、NASDAQ100かS&P500か、ニューヨークダウと日経平均株価連動型ETFをどう考えるかです。

 私が選ぶとすると、SOX指数連動型ETF、あるいはNASDAQ100連動型ETFのいずれかと、日経平均株価連動型ETFの組み合わせです。半導体ブームの時はITブームの時期でもあり、半導体関連、IT関連の中核銘柄の株価上昇率が高くなるので、ハイテクグロース株投資の場合は分散度が高すぎる指数よりも、ある程度集中した指数のほうが良いというのが私の考えです。

グラフ4 フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)

単位:ドル、日次終値、出所:Bloombergより楽天証券作成

グラフ5 NASDAQ100指数

単位:ドル、日次終値、出所:Bloombergより楽天証券作成

グラフ6 S&P500指数

単位:ドル、日次終値、出所:Bloombergより楽天証券作成

グラフ7 ニューヨークダウ

単位:ドル、日次終値、出所:Bloombergより楽天証券作成

グラフ8 日経平均株価

単位:円、日次終値、出所:Bloombergより楽天証券作成

3.金利の問題と生成AIのマクロ経済へのインパクト

 ハイテクグロース株投資を志向する場合は、中心はアメリカ株になります。日本よりも圧倒的にハイテクの重要企業、成長企業の数が多く、企業規模も大きく、収益率、成長率が高く、グローバル展開していて、新しい技術を積極的に生み出しているからです。

 ハイテクグロース株は金利上昇が起こると下落することがあります。これはハイテクグロース株は成長性を評価されているため、往々にして高PER(株価収益率)になりますが、高PER株は金利上昇に弱いためです。ただし、いったん下がっても、高い利益成長が続く場合は、再び買い直されることが多いです。

 アメリカでは金利が高止まりしています。グラフ9、10を見ると、長々期で見るとアメリカは低金利局面が終わった可能性もあると思われます。景気が良く、雇用が増えているためですが、生成AIの大ブームはこの状況を後押しすることになっている可能性があります。

 というのは、ソフトウェアの開発にはもともとお金と人手がかかるためです。生成AIには通常のソフトウェアよりも多くの優秀なソフト開発者が必要になります。かける資金も数百億円から千億円単位の資金が投じられています。特に今回の場合、生成AIとAI半導体のブームが当然のことながら重なっています。ソフトウェアと半導体、半導体を組み込むハードウェアのブームが一斉に起きており、景気と雇用に対するインパクトはかつてなく強いものがあると思われます。この強さは今後時間とともに顕在化すると思われます。

 私の見方が正しければ、今回のAI半導体と生成AIの大ブームは長期化すると思われます。私が想定しているのは、1980代後半に欧米で起こったERPブームです。SAP、オラクルが引き起こしたERPブームは、1990年代前半には日本にも伝わり、ERPブームを含む7~8年の情報化投資ブームが起こりました。そのブームの中で1970年代から構築されてきた日本企業の情報システムの多くが刷新されました。

 今回の生成AIブームも生成AIを企業の情報システムに組み込むことが始まった2024年を起点として、7~8年のブームになると思われます。アメリカで過去最大規模のITブームになる可能性もあると思われます。

 こう考えてみると、生成AIとAI半導体のプラスのインパクトを相殺してしまうようなアメリカ内部あるいは外部のマイナスインパクトがなければ(例えば戦争による原油価格の急騰が続く場合、無理な利下げ、利上げを行った場合など)、金利が仮に高止まりした場合でも成長が評価されて生成AIとAI半導体関連の株価の上昇は続くだろうと言うのが私の見方です。

グラフ9 アメリカの政策金利

単位:%、出所:FRB(米連邦準備制度理事会)より楽天証券作成

グラフ10 アメリカ10年国債利回り

単位:%、日次、終値、出所:Bloomberg

グラフ11 アメリカの10年国債利回り

単位:%、日次終値、出所:Bloombergより楽天証券作成

グラフ12 アメリカの消費者物価指数:前年比

単位:%、出所:U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICSより楽天証券作成

グラフ13 アメリカの消費者物価指数:前年比(長期)

単位:%、出所:U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICSより楽天証券作成

グラフ14 アメリカの消費者物価指数:前年比(エネルギー、食品)

単位:%、出所:アメリカ労働省より楽天証券作成

4.2024年1-3月期決算スケジュール

 最後に2024年1-3月期、2024年2-4月期決算発表スケジュールを挙げておきます。

 注目点は、まず、4月18日のTSMC、その前日の4月17日のASMLホールディング。この2社の決算で半導体セクターの大きな流れが明らかになると思われます。

 その後は4月23~25日のマイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コムです。生成AIがどのような状況になっているかわかると思われます。

 日本の半導体製造装置メーカーでは、4月25日のディスコ、4月26日のアドバンテスト、4月30日レーザーテック、5月10日の東京エレクトロンが注目されます。特にディスコの今後の見通しに注目したいと思います。

 また、4月30日にスーパー・マイクロ・コンピューターの決算発表がある模様です(日付はまだ流動的です)。この会社の決算はエヌビディアの決算の前哨戦です。全社売上高の実績と2024年4-6月期会社ガイダンスを通じて、AI半導体市場の動きが分かるからです。

 今回の決算発表シーズンも締めは5月22日に予定されるエヌビディアになると思われます。エヌビディアに関しては数字の全て、ファンCEOが話すことの全てが注目材料と言ってよいと思われます。

表2 2024年1-3月期、2024年2-4月期決算発表スケジュール

出所:各種資料より楽天証券作成
注:表中の予定は予告なく変更されることがある。

本レポートに掲載した銘柄エヌビディア(NVDA、NASDAQ)スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI、NASDAQ)マイクロソフト(MSFT、NASDAQ)アマゾン・ドット・コム(AMZN、NASDAQ)メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ)ディスコ(6146、東証プライム)アドバンテスト(6857、東証プライム)レーザーテック(6920、東証プライム)東京エレクトロン(8035、東証プライム)