強い数字の裏に隠された米労働市場の質の悪化

 BLS(米労働統計局)が4月5日に発表した3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が30万3,000人増と市場予想(29万人増)を大きく上回り、2023年1月以来、約1年ぶりの高い伸びとなった。失業率は3.8%と前月(3.9%)に比べて小幅に低下した一方、平均時給は0.3%増と市場予想に一致した。

 雇用の内訳を見ると、教育・ヘルスケア分野(7万2,000人)と政府関連(7万1,000人)がそれぞれ7万人を超え、3月の雇用全体の約半数を占めた。その他、建設業で3万9,000人、レジャー・接客業は4万9,000人の増加となった。

政府関連の雇用が7万1,000人増加

出所:ゼロヘッジ

 雇用形態別の内訳は、フルタイム雇用が6,000人減少した一方、パートタイム雇用は69万1,000人増の2,863万2,000人となった。これらのことから、3月の雇用統計は、量的な面では改善が見られたものの、質的な面では決して喜べる内容ではない。

パートタイムの雇用が急増

出所:ゼロヘッジ

 予想を上回った米CPI(消費者物価指数)伸び率

 そうした中、昨日は3月の米CPIが発表され、消費者物価は市場の予想以上に上昇した。エネルギー費や住居費の急増がCPIをけん引している。CPIを受けて、米国10年債利回りは2023年11月以来初めて4.50%を超えた。

米国の電気料金の上昇

出所:Jeff Weniger

 FOMC(米連邦公開市場委員会)の会合に対する現在の市場の予想は以下のようになっている。

2024年5月1日:一時停止
2024年6月12日:一時停止
2024年7月31日:一時停止
2024年9月18日:25bps引き下げ、5.00~5.25%
2024年11月7日:一時停止
2024年12月18日:25bps引き下げ、4.75~5.00%

市場のFF金利予想

出所:クリエーティブプランニング

 バイデン大統領の就任以来、「バイデンフレーション」といわれるスタグフレーションが進行中だ。

 われわれは1970年代のインフレ移動の再現をみているのだろうか? 深刻な米国の債務不均衡は必然的に中央銀行を金融抑圧(インフレ以下の金利)に向かわせ、FRB(米連邦準備制度理事会)にインフレ率をより長期間高いままに放置させるよう強いることになる。しかし、インフレの軌道がこの青写真に沿うなら、金融市場は相応のショックを受けるだろう。

1974年から1982年のインフレサイクルと現在のインフレサイクル

出所:Game of Trades

 バイデン大統領はCPIの数字を受けて、「インフレのニュースは利下げを遅らせるかもしれないが、FRBが何をするかは分からない。しかし年末までに金利は引き下げられるだろう」とコメントした。

 11月の選挙前に緩和を確実に開始するために、来月あたりに銀行や商業用不動産の危機が利下げのいけにえとして差し出されるのだろうか? 5月相場の動きを注視したい。