日銀追加利上げ・米利下げ転換が後ろ倒しの場合、円安長期化も

 一方、日銀の3月会合後に、7月、10月会合での利上げ観測が報じられましたが、この観測記事のように日銀の年内追加利上げが実現し、米国の利下げが見通し通り年内3回実施となる局面になれば円高に反転するかもしれません。

 しかし、日銀の追加利上げ実現には時間がかかるかもしれません。

 日本の景気は、2023年10-12月期の実質GDP成長率が年率換算でマイナス0.4%からプラス0.4%に改定され、2四半期連続のマイナス成長は回避されました。しかし、伸びは鈍い状況となっています。2024年1-3月期GDP見通しはマイナス成長の予想も出ており、景気に力強さはありません。

 2月の消費者物価指数も、政府の補助金による電気・ガス代の押し下げ効果が一巡したため、生鮮食品を除く総合指数は前年同月比2.8%上昇と、前月から0.8ポイント上昇しました。生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数は3.2%上昇と前月の3.5%上昇から伸びが鈍化しており、上昇率縮小は6カ月連続です。

 日本の景気が低迷している限り、金融緩和環境は長引く可能性があります。また、17年ぶりの利上げの背景となった賃金と物価の好循環も、賃金上昇が中小企業にどの程度波及していくのか、また、この循環は来年度も続くのかどうか確認されるまでは日銀は追加利上げに慎重になるかもしれません。

 一方、米経済は軟着陸に向かい、堅調に進んでいる状況です。この環境が続けば、利下げ時期が後ろ倒しになる可能性が高まり、年内の利下げ回数が減ることも予想されます。日銀の金融緩和が長引き、追加利上げが後ろ倒しとなることに加え、FRBの利下げも後ろ倒しになれば、円安地合いが長引くシナリオが想定されます。

 このように日銀の追加利上げに時間がかかるとすれば、円は米国要因に左右されそうです。しかし、その米国にも注意が必要です。パウエル議長はハト派姿勢を明確に出し、利下げは適切と述べていますが、好調な米経済とインフレ高止まりの見通しと年内3回の利下げの整合性がどのように展開するのかが注目されます。今後の経済指標で明らかになってくると思われますが、相場の波乱材料になることにも留意する必要があります。