3 日本曹達(4041・東証プライム)

 工業薬品や化成品、機能材料などのケミカルマテリアル事業と、殺菌剤や殺虫剤などのアグリビジネス事業が二本柱となっています。前者では、カセイソーダ、塩素・塩酸などの基礎化学品を扱っているほか、ニッチな機能性化学品を手掛けています。医薬品添加剤のHPCでは世界シェアを二分する状況です。

 一方、後者では、畑作用除草剤「ナブ」が多くの国々で登録されているほか、殺菌剤「トップジンM」も1971年の発売以来のロングセラー商品となっています。青化ソーダ・青化カリなどを供給する水島工場の閉鎖を決定しました。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)営業利益は97億円で前年同期比33.9%減となっています。在庫調整の影響でアグリビジネスが大幅な減益となったほか、亜鉛建値の下落によってエコソリューション事業が赤字に転じています。

 2024年3月期通期では138億円で前期比18.3%減の見通しです。上半期の決算発表時に下方修正しています。アグリビジネスのほか、世界的な景気減速の影響でケミカルマテリアル事業も下振れのようです。年間配当金は前期比横ばいの240円を計画しています。

 2026年3月期までの中期経営計画では、当期純利益170億円(2023年3月期166.9億円)、総還元性向50%以上などを掲げています。2025年3月期は営業外収益の一過性要因などが剥落しますが、還元性向からみて、高い配当水準は継続される公算が大きいです。

 なお、2025年3月期の営業利益に関しては、生産能力増強効果や半導体市場の回復によってケミカルマテリアル事業のVPポリマーがけん引役となるほか、農薬の在庫調整も一巡するとみられ、二桁の営業増益に回帰すると予想されます。

4 三洋化成工業(4471・東証プライム)

 約3万種類の機能化学品を製造・販売しています。界面活性剤がコアビジネスで、紙おむつの製造に不可欠な高吸水性樹脂は1978年に世界で先駆けて商業生産を開始しています。

 ほか、自動車内装材原料やプラスチック向け機能付加製品、トナー観戦製品、住設産業向けポリウレタンフォーム用原料など幅広い産業向けに展開しています。海外生産拠点は5カ所、海外売上高比率は中国を中心に40%超の水準で推移しています。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)営業利益は42億円で前年同期比35.0%減となっています。全セグメントが減益となり、とりわけ、主力の生活・健康事業が液体洗濯洗剤用界面活性剤およびポリエチレングリコールの市況低迷、高吸水性樹脂の販売数量減少で赤字となっています。

 2024年3月期通期予想は従来の50億円で前期比38.5%減の見通し、進捗率は81.2%となっています。年間配当金も前期比横ばいの170円を計画しています。

 業績は現在がボトム期である公算が大きいでしょう。2024年3月期は高進捗から上振れ着地が見込めるほか、日本や中国工場でのコストダウン効果によって高吸水性樹脂事業の改善が見込めること、自動車関連製品の在庫調整終了などにより、2025年3月期は大幅増益転換が想定されます。

 株主還元は連結配当性向30%以上をめどとしていますが、PBRは0.6倍台と低水準にあるため、一段の還元強化が進む可能性もあるでしょう。風力発電用の炭素繊維収束剤、アルミ電解コンデンサ用電解液、前樹脂電池向け被覆活物質など、今後の市場拡大期待分野も多くなっています。

5 石油資源開発(1662・東証プライム)

 原油や天然ガスなどの開発、採掘、生産、販売を行う資源開発会社です。現在、国内10カ所(北海道・秋田・山形・新潟)の油ガス田で原油・天然ガスを生産しています。海外では5カ所でプロジェクトを遂行中、また、シンガポールを拠点としたLNG(液化天然ガス)の調達なども行っています。

 原油価格の影響度としては、1ドル/バレルの上昇で0.6億円の営業利益プラス要因、為替の影響度としては、1円/ドル円安で0.5億円の営業利益プラス要因となるようです。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)の営業利益は398億円で前年同期比2.9%増となっています。米国タイトオイル開発の販売量増加などが主要な増益要因となりました。2024年3月期通期営業利益は488億円の従来予想から507億円、前期比18.3%減に上方修正しています。英領北海・シーガルプロジェクトからの販売開始などが上振れ要因となるようです。

 上半期決算時に続く上方修正となっており、基本的に会社側の計画は保守的とも判断されます。年間配当金は前期比120円減配となる250円を計画しています。

 第3四半期までの状況から業績上振れ期待は高く、連結配当性向30%から年間配当金の上振れなども想定されます。有利子負債がゼロで、第3四半期決算期末時点のネットキャッシュは1,666億円となっており、これは時価総額の46%の水準にあります。

 PBR水準が0.7倍台にとどまっているほか、ネットキャッシュが極めて豊富である状況下、配当性向30%からの引き上げも今後は想定されることになるでしょう。なお、現在は8月末にかけて高水準の自社株買いを実施中であり、当面の下値抑制要因になると考えられます。