日経平均は史上最高値を34年ぶり更新、4万円の大台も突破

 直近1カ月(2月9日~3月18日)の日経平均株価(225種)は終値ベースで7.7%の上昇となりました。期間中前半から株高基調が続き、2月22日にはついに、1989年12月29日に付けた史上最高値の3万8,957円を、およそ34年ぶりに更新しました。3月4日には4万円の大台乗せも達成し、7日には高値4万0,472円まで上値を伸ばしています。

 その後は、12日の3万8,271円まで一時調整する形になっています。なお、この期間(2月9日~3月15日)のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均の騰落率は0.1%の上昇と横ばいでした。

 日経平均は2月13日には2020年6月16日以来の1,000円超の上げ幅となるなど、期間中前半から上昇ピッチが加速しました。米国の利下げ期待や日本株の先高期待などが反映される形になったようです。

 さらに、高値を更新した2月22日は、注目された米半導体大手エヌビディアの決算が市場予想を上回ったことが起爆剤となりました。その後も、米国の1月コアPCE(個人消費支出)価格指数が市場予想に一致したこと、政府機関閉鎖への懸念が緩和したことなど米国市場の不透明感後退が押し上げ材料となって、日経平均は4万円台に突入しました。

 期間中後半にかけては弱含む場面がみられました。3月18、19日の日本銀行金融政策決定会合で、マイナス金利政策が解除されるとの見方が急速に台頭、為替市場もドル安・円高反転の動きを強め、利食い売り材料とされました。2024年の春闘で賃上げ結果が明らかになるにつれ、こうした見方はより強まる方向になっています。

 また、米エヌビディアが利益確定売りによって一時急反落したことで、半導体株中心に売りが膨らむ場面もみられました。ただ、日銀が3月にマイナス金利を解除と報じられた3月18日には、一転してあく抜け感が優勢となっています。

 幅広い銘柄が買い優勢となりましたが、東京エレクトロン(8035)が20%超の上昇となったほか、日本マイクロニクス(6871)野村マイクロ・サイエンス(6254)トリケミカル研究所(4369)TOWA(6315)などの中小型株も含め、半導体関連株の強い動きが継続しました。エヌビディア関連として位置づけられるさくらインターネット(3778)も約9割の上昇でした。

 また、三井E&S(7003)は米子会社が政府支援を踏まえてクレーンの米国内生産を再開する方針を示したことで2.4倍の急騰となり、配当方針の変更に伴う大幅増配を発表した大林組(1802)の上昇も話題となりました。楽天グループ(4755)は2023年10-12月期の想定以上の収益改善が好感されました。

 半面、ANYCOLOR(5032)メルカリ(4385)ラクス(3923)など中小型グロースの一角が下落率上位になっています。

 メニコン(7780)コーセー(4922)などは決算が売り材料視され、マツダ(7261)は円高反転の動きがマイナス材料とされました。NIPPON EXPRESSホールディングス(9147)など株式売出による需給悪化が意識された銘柄も散見されています。

日本株上昇ピッチに過熱感、緩和見直しであく抜け感強まる場面でいったん利食いも

 日銀は3月19日、これまでの大規模金緩和策の見直しを決定しました。マイナス金利政策を解除したほか、YCC(イールドカーブ・コントロール:長短金利操作)の撤廃、ETF(上場投資信託)などリスク資産の買い入れ終了も決定しています。

 2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断したことが背景で、連合の2024年春闘第1次集計での賃上げ率が想定以上に拡大したことが、その判断に至った大きな要因になっています。

 なお、19日の前引け後に日銀のマイナス金利解除が伝わりましたが、直後の市場の反応としては株高、ドル高円安となっており、短期的な出尽くし感が先行する状況となっています。

 一方、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が19~20日に開いたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、5会合連続となる政策金利の据え置きを決めました。FOMCメンバーの金利見通しでは今年3回の利下げがあるとの予測が維持され、市場では6月の利下げ開始観測もこれまで以上に高まりました。

 こうした米国の利下げに対する見方は為替市場におけるドル安円高への反転に直結する材料になります。いずれにせよ日本株にとってはマイナス要因につながる可能性があり、日銀の政策修正を受けてあく抜け感が強まる場面では、いったんの利益確定売りも考慮に入れたいところです。

 ちなみに、日銀が大規模緩和政策を修正したことにより、これまでと比較して政府による為替介入が実施しやすくなっているとも考えられます。

 年初からの日本株の上昇ピッチの速さには依然として過熱感が拭い切れません。株高の原動力の一因とも捉えられる新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)ですが、3月の配当権利取りのニーズも強かったと考えられます。4月以降は新NISA資金流入などの需給期待もやや後退していく方向となりそうです。

 また、4月後半からは2024年3月期の本決算発表がスタートします。円高反転への織り込み、人件費の上昇などによる新年度ガイダンスへの警戒感も強まり始めるタイミングでしょう。物色テーマですが、高配当利回り銘柄に関しては、3月末権利取り通過によって、いったんは手控えムードが強まりそうです。

 逆に物色が強まりそうなものとして低PBR(株価純資産倍率)銘柄が挙げられます。これまでPBR1倍割れの改善策を公表してこなかった銘柄などは、本決算の発表と同時に一斉に公表してくるとみられます。株主還元策の拡充に対する期待感などを高めたいところです。

 ほか、日本では4月の衆議院解散総選挙も取り沙汰されるようになってきています。株式市場にとってプラス材料とされがちですが、岸田政権の長期化が一段の株高材料になるのかは疑問で、大きな株価変動要因にはつながらないと考えられます。