春闘賃上げ率高く、マイナス金利解除近いと思われていることは円高要因

 先週は、円高材料も出ています。連合(労働組合の中央組織)は15日、今年の春闘の定期昇給を含む正社員の賃上げ率について、初回集計を発表しました。平均5.28%の上げとなります。

 5%以上増加するのは、1991年の5.66%増以来です。これで、やっとインフレ率を上回り、実質賃金がプラスになる見込みです。

 日本銀行(日銀)は、マイナス金利解除を含む、金融政策の正常化を画策していますが、春闘を通じて実質賃金がプラスになることが、その重要な条件の一つとしてきました。

 今回の春闘での賃上げ率が5%を超えたことで、3月18~19日の金融政策決定会合で、日銀がマイナス金利を解除する可能性が高まりました。それを受けて、日本の長期金利は先週、0.78%を超えるところまで上昇しました。これは円高材料です。

日本の長期金利(10年もの新発国債利回り)推移:2022年7月1日~2024年3月15日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 ただし、先週後半は、それでも円安が進みました。日本の金利上昇よりも、米インフレ率の高止まりを受けた、米長期金利上昇の方が、為替に与える影響は大きかったと言えます。

日米長期(10年)金利推移:2023年末~2024年3月15日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

今週の重要イベント

 今週は日米ともに金融政策決定会合があります。どちらも重要で、結果次第で、為替・日経平均が大きく動く可能性もあります。

【1】3月18~19日:日銀金融政策決定会合

 19日(火)の昼ごろに結果が発表となる予定です。マイナス金利解除が決定される可能性が高いと考えています。解除があると、日本の金利上昇要因・円高要因となり、日本株が売られる要因となります。ただし、事前にかなり織り込まれているので、大きな波乱とはならない見込みです。

 もしマイナス金利解除がないとサプライズ(驚き)となります。それでも4月に解除されるという思惑は残ると思われます。

【2】3月19~20日:FOMC(米連邦公開市場委員会)

 日本時間で21日(木)の早朝に、結果が発表となる予定です。金融政策の変更はないと見込まれています。ただし、FF金利の2024年末の予想(FOMCメンバー予測中央値)が発表となります。

 それにより、今年何回利下げが示唆されているかが、分かります。利下げ回数が少なければ、ドル金利上昇・ドル高(円安)で、日経平均が買い戻される要因となります。利下げ回数が多いと、ドル金利低下・ドル安(円高)要因となります。

日本株の投資方針

 日本株が割安で、長期的には良い買い場を迎えているとの考えは変わりません。ただし、短期的には、日経平均は過熱からスピード調整が続く可能性があります。

 時間分散しながら、投資していくことが肝要と考えます。

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