好決算によく反応する株価

 今回の決算発表シーズンの特徴として良い決算を出した銘柄が大幅高を演じることが多くなっていることが指摘できます。

 メタ・プラットフォームズ(ティッカーシンボル:META)パランティア・テクノロジーズ(ティッカーシンボル:PLTR)アーム・ホールディングス(ティッカーシンボル:ARM)エンフェーズ・エナジー(ティッカーシンボル:ENPH)ソノス(ティッカーシンボル:SONO)などの銘柄が決算発表後急騰しました。

 これは投資家のキモチが大きくなっており積極的にリスクテーキングしていることの現れです。

なぜ積極的に?

 その理由としてAIブームがどうやら一過性のものではなく今後数年にわたって繰り広げられる大きなテーマだという認識が投資家に広がっている事が挙げられます。

 AIではマイクロソフトがコパイロットで先行していることは周知の事実ですが、これに対抗するカタチでアルファベット(ティッカーシンボル:GOOG)も「ジェミニ」を同社のさまざまな製品・サービス群に実装してゆくと発表しました。

 一方、ChatGPTで先行したオープンAIは出張旅費の精算やメールへの返信など、人間に代わって入力作業を代行する能力を備えた、「エージェント」に開発の力点をシフトしてゆくと伝えられています。

 それは「クリックする」「カーソルを動かす」「タイプする」というような作業をソフトウエアが勝手にやってしまうことを目指しています。

 そういう説明はマルウエアを想起させ、(なんだか嫌だな)と感じるユーザーもいます。つまりAIが自分のパソコンの中を勝手に動き回るのを明白な手法で制限することが必要になるのです。

 そこで「エージェント」機能に関しては例えばメモリー・スティックのような形状をした別のデバイスに保管し、その都度、必要なときだけプラグインするなどAIそのものをこれまでのクラウド一本やりから専用デバイスに落とし込むなど、さまざまな試みがいま動き始めています。

 そのことはソフトウエアのみならず、ハードウエアや半導体に関しても、今後、ありとあらゆるデバイスが考案、発売される可能性があるわけで、決算発表後にARM株が急騰した背景にはそのような裾野の広いAIブームを予想し始める投資家が増えたことがあります。

投資家の関心が経済統計、FRBからAIへシフト

 いま米国経済はとても良い感じで推移しています。物価は沈静化してきていますし雇用も相変わらず強いです。

 つまりFRB(米連邦準備制度理事会)は慌てて金利政策を変更する必要に乏しく、ずっと様子見に徹するというのがメイン・シナリオになりつつあります。

 そうなのであれば経済統計やFRBが相場の関心事ではなく、もっと別のところへ投資家のフォーカスが移ってゆくと考えるのが自然です。

 実際、前回米国経済がソフトランディングを演じた1995年から2000年にかけての時期も金利政策の重要性は後退し、個々の企業の動向が相場を突き動かす原動力となりました。

 いまならさしずめ「AIでどこそこの企業がこんなことを企てている!」というような材料が重要になるはずです。

 もちろん株式投資で一番重要なのは金利や業績です。でも金利が動かないのであれば、投資家はその次に重要なファクターに注目ポイントを移してゆくわけで、相対的にAIのストーリーが株価形成に果たす割合が増えると考えるのが自然です。