REITは、「株」と「債券」の中間的性格を持つ
J-REITは、円建てで、平均分配金利回りが4.3%(1月19日時点)と、利回り投資商品として魅力的です。長期(10年)国債の利回りが0.66%程度しかない時代に、魅力的な利回りです。国内債券の代替として、投資したいと思う人もいるでしょう。
ただし、注意が必要です。REITは確定利回り商品ではありません。業績が悪化すれば分配金が引き下げられ、利回りが下がるだけでなく価格も下がるリスクもあります。その意味では「株」に近い商品です。
リスク管理上、J-REITは、「日本株」と「国内債券」の中間的運用商品として扱う必要があります。
運用には「攻めと守り」が必要
私はかつて25年間日本株のファンドマネージャーとして、年金などの運用に携わってきました。アセットアロケーション(資産配分)を考える際に悩むのは、「攻めと守りのバランス」です。
「攻め」だけ考えるならば、米国・日本を含む世界中の株に分散投資すれば、それでOKです。債券に投資しても、長期的に株を上回るリターンは期待できません。特に、長期(10年)金利が0.66%にとどまっている国内債券は、投資価値が高くないと思います。
ただし、年金投資において、現実には株だけというわけにはいきません。株はボラティリティが極めて高いからです。リーマン・ショックやコロナショックのようなことがあった時、株だけで運用していたら、一時的に巨額の損失をこうむります。国民の老後資金を預かって運用する年金基金は、たとえ一時的でも大きな損失を出すわけにはいきません。
世界最大級の年金基金で219兆円(2023年6月末時点)の運用資産を保有するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオは、その意味で参考となります。現在、外国株式25%、日本株式25%、外国債券25%、国内債券25%を、運用の基本方針としています。株が半分、債券が半分で、まずまずバランスがとれた運用といえます。
ただし、やや違和感を覚えるのが、国内債券に25%も資金配分していることです。10年国債利回りが0.66%しかない今、国内債券に投資するのはあまり効率的とはいえません。
国内債券の代わりに、円建ての利回り商品で何に投資したら良いでしょう? しばしば話題になるのが、J-REITです。株のポートフォリオに、J-REITを入れれば、長期的に運用の安定化に一定の寄与はあります。
ただし、J-REITが有効なのはあくまでも長期的なリターンの安定化にとってです。短期的には、J-REITはまったく債券代替となりません。リーマン・ショックやコロナショックで株が暴落する時、J-REITも同じように暴落してきたからです。