投資家の負担と予算への影響
長く続いたイールドカーブ・コントロールによって低位で安定した長期金利が当たり前となり、金融機関をはじめ多くの投資家がそうした前提の下でポートフォリオを組んでいます。こうした状況で急激な長期金利の変動が生じれば、多くの投資家の損失と混乱につながる恐れがあります。
物価の安定だけでなく、金融システムの安定も日銀に与えられた使命であり、金融市場が不安定化しないよう、慎重に正常化を進める必要があります。
政府にとっても長期金利が想定以上に上昇すると、計上していた予算額(国債費)が不足するため、大きな影響を受けることになります。財務省では、直近の一定期間をとって10年金利を平均し、それに過去2回の金利ショック(1998年12月の「運用部ショック」、2003年6月の「VaRショック」)の金利上昇幅1.1%を足して、予算の想定金利を計算しています。
2024年度当初予算案における想定金利は1.9%。それを上回るような長期金利の上昇が生じれば、補正予算による国債費の補充が必要になる可能性も出てきます。
以上の諸点を勘案すると、日銀が長期金利の上昇につながる追加利上げを立て続けに行うとは考え難く、例えば10年金利の上限の「めど」を残すといった措置で長期金利の跳ね上がりを抑制しながら、慎重に追加利上げを検討していくのではないかとみています。
仮に1月か4月にマイナス金利政策を解除したとしても、海外景気の不確実性の高さを理由にしばらく様子見が続き、年後半にかけて海外景気がしっかりしてくれば、小幅の追加利上げを実施すると予想しています。