今日の為替ウォーキング
今日の一言
今日の勝利を確定することで、明日や明後日の勝利を捨ててしまうこともある
Hit Me With Your Best Shot
金利差は通貨を動かす最も大きな要因である。金利差の拡大は最初、金利が高い通貨を上昇させる。しかし、しばらくすると金利高による経済にダメージが通貨を下落させる転機が訪れる。
ECB(欧州中央銀行)が前回9月の会合で利上げを決定した理由は、欧州のインフレ見通しが上昇していることが理由だった。インフレ見通しが上昇した理由は、ユーロ安によって輸入価格が上昇したからである。ユーロは6月から9月の3カ月間で、対ドルで5%も安くなった。ユーロ安の背景は、ECBの利上げだった。ECBはインフレ制御を目的として利上げしてきたが、インフレより先に経済が参ってしまった。
FRBの最新の予測によると、米国のインフレ率が目標値の2.0%まで低下するのは2026年以降で、あと3年も先だ。しかし、FRBは利上げを見送ったが、ECBは、域内のインフレ率が2025年までに2.1%まで低下すると予想しているにもかかわらず、9月に利上げを断行した。
利上げ政策の難しさは、前もって適正な金利水準がわからないことだ。ECBの場合は、利上げをやりすぎてしまった。利上げ見送りを好感してNY株式市場は上昇しドル高になったのとは対照的に、欧州では企業の投資意欲が後退し、欧州株式市場からは資金が流出するなかでユーロ安が進んだ。そのうえ通貨安になるほど輸入インフレが上昇するので、また利上げするという悪循環にはまってしまった。ECBがタカ派になるほど、皮肉なことにユーロ安が進む結果となったのだ。
その反省からか、ECBは10月の会合で、11会合ぶりに利上げを見送り、デポ金利を4.00%に据え置くことを決定した。ECBが、なにがなんでもインフレを抑制するという頑迷な姿勢から、ある程度柔軟に対応するに姿勢が変わりつつある。ECBの政策金利がピークに到達したとの見方が広がるなかで、ユーロ/ドルは 1.0500ドルから1.075ドル近辺まで一気に250ポイントもユーロ高が進んだ。
2024年のマーケットのテーマは「インフレ」から「成長」へと変わるだろう。インフレ抑制を重視して金融引き締めにこだわる中央銀行の国の通貨の評価は下がる。一方でFRBのように、成長を重視しインフレと共存することを模索する中央銀行の国の通貨の評価は上がる。「利上げ」イコール「通貨高」から、「利下げ」イコール「通貨高」の時代になるのだ。