希望と欲は投資のプロセスではない!

 FRB(米連邦準備制度理事会)ですら、世界の金融システムに対する地政学的リスクの高まりを警告している。ここからの相場は、非常に緊迫したものになりそうだ。

 そして悲しいことに、現実的な出口は見えない。中東におけるリスクの合流は、大戦につながりかねない地政学的な連鎖反応を脅かし、それに比べれば、金融市場の反応など取るに足りない事態となる可能性を秘めている。

 地政学リスクが増大し複数のリスクに直面している。金本位制の時代は、カネがなくなれば戦争は終わったが、今は輪転機を回せば戦争はエンドレスとなる。米国債の残高はたった1カ月で5,500億ドルも増加した。国債の総額は2021年7月には31.4兆ドルだったが、わずか4カ月で33.5兆ドルに増加した。これは10年債利回りが3.7%から4.6%に上昇する中で起こった。

米国の公的債務総額の推移

出所:Game of Trades

日・米の長期金利の推移(週足)

(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター(マーケットナビゲーターの売買シグナル)

ドル/円(週足)

(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター(マーケットナビゲーターの売買シグナル)

 米国政府は次の12カ月で7,600億ドルの公債の償還に直面している。ゴールドマン・サックスはCFTCのデータが、2年と10年国債に対する米国債のネットロングポジションが2018年10月以来の最低水準に減少していることも指摘している。

 中国、サウジアラビア、および他の国々の国債保有額が数年ぶりの最低水準に減少している。これは、新たな高まりを迎える地政学的緊張の中で本当に危険な状況だ。

 今週の月曜日、『ブラック・スワン』の著者ナシーム・タレブは、「地上侵攻はまだ始まっていないが、昨日、ロンドンで10万人が行進した。歴史の力学を見抜くことができないなら、あなたは深刻な問題を抱えている」とXに投稿した。

 グローバルマクロのトレーダーとして大成功を収めた伝説の投資家ポール・チューダー・ジョーンズは、「どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならない」と述べている。

 ストップロス注文を置かなくても助かってしまうということを繰り返していると、レバレッジのかかった取引では<3年から10年に1回の大きな下げ局面>で証拠金の多くを失うことになる。現物取引の場合でもポジションが塩漬けになる。いずれにせよ、「何もできず見ているだけ」という塩漬けの状態になり、<投資効率>が死んでしまうのだ。

 いまいちど、ポール・チューダー・ジョーンズの投資ルールを確認しておこう。

ルールその1:敗者から早めに手を引き、勝者を走らせる。

 市場をうまくナビゲートするには、とてつもない謙虚さが必要だ。投資が思うように進まないときに、傲慢(ごうまん)になることはない。大きなエゴに悩まされている投資家は、間違いを認めることができないか、自分たちがこれまでに生きてきた中で最も重要な株式投資家だと信じている。市場を生き抜くためには、自信過剰にならないようにしなければならない。

ルールその2:具体的な最終目標を持たずに投資するのは大きな間違いである。 

 投資をする前に、以下の2つの質問の答えを知っておく必要がある。

1. 自分の考えが正しければ、どのくらいの価格で売るか、利益を取るか?
2. 間違っていたらどこで売るのか?

 希望と欲は投資のプロセスではない!

ルールその3:感情的・認知的バイアスはプロセスの一部ではない。

 感情に振り回されず、バイアスにとらわれない点が大事である。

ルールその4:トレンドに従う。

 ポートフォリオのパフォーマンスの80%は根本的なトレンドによって決定される。

ルールその5:利益を損失に変えてはいけない。

 投資とは、時間をかけてリターンを生み出すことだ。

ルールその6:テクニカル分析がファンダメンタルズ分析をサポートすると、成功する確率が大幅に向上する。

 市場は長い間ファンダメンタルズを無視することができる。投資すべき「いつ」を決定するためにテクニカルを適用することで、リターンを大幅に改善し、資本リスクをコントロールすることができる。

ルールその7:負けているポジションを追加しないようにしよう。

「アベレージングダウン(株価の低い時に買って平均取得価格を下げる:ナンピン買い)」のジレンマは、より収益性の高い投資に資本を再配置するよりも損失を回復しようとし、投資資本のリターンを減少させる。敗者(値下がり株)をショートにすることで、長期的にはより大きな成長を可能にする。

ルールその8:強気市場では「ロング」であるべき。ベアマーケットでは「ニュートラル」または「ショート」。

 市場の主要な「トレンド」に逆らって投資することは、一般的に実りのない、もどかしい努力だ。強気相場の間は、株式のようなリスク資産に投資したままにするか、(既にリスク資産で買いポジションを保有している場合)「利大損小」を実践する局面と言える。

 弱気相場の間は、投資家は、目標とする資産配分に戻って、全体的なリスク資産の保有を減らし、現金を構築することを検討することができる。底打ちしたと信じて押し目を買おうとする試みや株式はこれ以上下落しないと思って購入することは一般的にうまくいかない。

ルールその9:リターンではなく、リスクを第一に考えて投資する。

 リスクを第一に考える投資家は、強欲の餌食になる可能性が低い。私たちは、投資の潜在的なリターンを重視し、それを達成するために取ったリスクを余計なものとして扱う傾向がある。責任あるポートフォリオ管理の目的は、長期的にお金を成長させて収益目標を目指し、それらの目標を達成するために取られるリスクを考慮することだ。

「ポートフォリオの大幅なドローダウンを防ぐための管理とは、ダウンサイドの大部分を捕捉することを防ぐために、アップサイドの一部を放棄することを意味する。ポートフォリオが壊滅的な損失を被っても、ポートフォリオはいつか元の状態に戻るかもしれないが、その間に失った貴重な時間は決して取り戻すことはできない」

(ポール・チューダー・ジョーンズ)

10月25日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 10月25日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、今中能夫さん(楽天証券経済研究所チーフアナリスト)をゲストにお招きして、「米国株は7銘柄の成績」ということで、今中さんに7銘柄の将来について、とことん聞いてみました。ぜひ、ご覧ください。

出所:YouTube
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 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

10月25日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

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<セミナーのお知らせ>

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(石原順)

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<タイムテーブル >

石原順講演:B会場 13:45~14:45(提供:楽天証券)