日銀がマイナス金利を解除するのはいつ?
以上の通り、デフレ脱却4条件が確信をもってクリアできたと判断するのは、もう2~3四半期、つまり来年前半くらいまで待った方が良いと思われます。そうした環境が整えば、政府もデフレ脱却宣言に踏み切る可能性があります。
日銀が正常化に踏み切るタイミングも、2013年1月に発出した共同声明(「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」)を踏まえれば、当然、政府と足並みをそろえるべきであり、日銀の物価見通しがどうなるかだけで考えるべきではありません。
市場では、日銀の「展望レポート」で2026年度の物価見通しが公表される来年4月のMPMで、マイナス金利が解除されるとの見方が強まっています。
図表4に整理した通り、現在の日銀の物価見通しは、特に2023年度が実勢に比べ低く、市場コンセンサスであるESPフォーキャストの見通しを勘案すると、今月末の10月MPMで、2023年度が3%程度まで上方修正されると予想されます。
ただし、おそらく2025年度にかけて1%台に縮小していくとの姿は変わらず、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っていないという判断も変更されないと予想されます。
来年4月になってこの判断を変更するためには、2026年度の見通しが2%になるだけでなく、その後も安定して2%程度で推移していくという考え方を、根拠をもって説明する必要があります。
図表4 消費者物価の見通し
来年1-3月期のGDPギャップやULCが判明するのは来年の5月、過去25年にわたって実施してきた非伝統的金融政策を多角的に検証する「多角的レビュー」の第2回ワークショップも同じ5月に開催される予定です。統計的なエビデンスや理論武装のしやすさなどを考えれば、正常化に踏み切るタイミングとして、4月MPMよりも6月MPMの方が無難かもしれません。
とはいえ、4月でも6月でもしょせんその程度の差。正常化という大きな流れの中にいること自体に違いはありません。ざっくり4~6月がそのタイミングだと見ておけば良いように思います。そのとき金利がどうなるのか、非常に気になるところですが、これについては別稿に譲ることにします。