中東情勢の緊迫化は原油相場を押し上げるか

 7日に始まったイスラエルとイスラム組織ハマスの武力衝突が緊迫を増しています。バイデン米大統領は18日にイスラエルを訪問しネタニヤフ首相と会談。イスラエルが自衛する権利を容認しましたが、パレスチナ自治区ガザでの戦闘激化を鎮静化できるかどうかは不確実です。

 そもそもパレスチナ問題の根源は「二つの悲劇」にあるとも言われています。一つは、2000年の長い歴史の中で世界に離散し迫害を受けてきた「ユダヤ人の悲劇」です。イスラエルを建国し、それを死守していきたいとの思いをユダヤ人はもっています。

 もう一つは、パレスチナの地に根を下ろしていた人々が、イスラエルの建国で故郷を追われたという「パレスチナ人の悲劇」です。パレスチナ人が住んでいるのはヨルダン川西岸とガザ地区で、国になれないまま実質的にイスラエルの占領下におかれているのが現状で、周辺の国々にも多くが難民として暮らしています。

 こうした中、宗教上でパレスチナとイスラム教を共有するイランがハマスに武器や資金を提供しているとの見方があります。親イスラエルでイランに対し経済制裁を課している米国としては看破できない状況です。

 仮にイランの関与が明らかとなり、米国がイランに対する制裁措置を強化(例:イランからの原油輸出を一段と制限)し、イランが報復措置としてホルムズ海峡を封鎖するような事態となれば原油相場がさらに上昇する可能性が高まります。

 図表2は、WTI原油先物相場と全米ガソリン価格平均の推移を示したものです。夏の需要期を過ぎて下落しているガソリン価格が、原油相場の上昇に沿って再上昇することとなれば、消費者のインフレ予想や企業の投入コスト増加を介して景気や企業業績に影響を与えかねないリスクがあり市場の警戒要因となっています。

<図表2>原油相場上昇でガソリン価格も反転上昇するか

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年10月18日)