この記事の前半を読む:インボイス10月開始!会社員が知っておくべきことまとめ(1)

従業員への影響(2)経理担当は間違いなく作業負担が増える

 前回に引き続き今回も、会社勤めの従業員の方、そして小さい会社の経営者の方も最低限知っておくべき、インボイス制度による影響や注意点をお伝えしたいと思います。

 最も影響が大きいのは、経理担当の方でしょう。仕入れや経費精算の際に受け取る請求書や領収書がインボイスの要件に合致しているか、そもそも免税事業者かどうかというチェックに始まり、仕訳入力の際も、インボイス不要特例のものや、免税事業者からの仕入れにつき帳簿に追加でその旨を記載するという、これまでになかった作業を強いられます。

 さらには経費精算の際、経理の方が正しく仕訳入力できるように、必要な全ての情報を従業員の方がそろえてくれているかをチェックしなければなりません。

 資料がそろっていなかったら質問、確認、資料の追加依頼をする、そして経費精算書の内容確認の際も、軽減税率なのか、インボイス不要特例の経費なのか、免税事業者への支払いなのかなど、追加的に確認することが多々あります。

従業員への影響(3)個人名義の支出やクレカ払いは経費精算の際に要注意

 また、インボイス制度のスタートにあたり、今までは存在しなかったルールの新設が多々あります。

 例えば個人名義でネット上で商品を購入し、それを後日立替経費精算するケースを考えます。これまでは、個人宛の領収書などを会社に提出すればそれで済みましたが、インボイス制度が導入されると、個人宛の領収書はインボイスの要件を満たさないので、別途会社宛てに「立替金精算書」といったものを提出する必要があります。

 クレジットカード払いの経費精算も要注意です。特に規模の小さい会社であれば、社長がクレジットカードでの支払いにつき、わざわざ領収書や請求書などをもらわず、後日カード会社から送られてくるカード利用明細の記載内容から仕訳入力するケースが珍しくありませんでした。

 またルール上も、3万円未満の仕入れ・経費支払い等の場合は領収書、請求書がなくとも消費税が控除できるということになっていました。

 しかしインボイス制度が導入された後は、この「3万円未満の仕入れや経費支払いは領収書等が不要」という特例が廃止され、クレジットカードで払った場合も、たとえ100円の経費であっても全てインボイスの要件に合致した領収書がなければ消費税額を控除できなくなったのです。

 売上規模が小さい会社は、1万円未満の仕入れや経費支払いについてはインボイスが不要という特例は別途定められたものの、個人宛の領収書や、クレジットカードでの経費支払いなどは、今までとは異なるルールが定められていますので、十分気を付けてください。

従業員への影響(4)会社の経費精算のルールを守らないと経費として認められない?

 上記のように、経理担当の方は、仕入れ・経費支払いの請求書や領収書がインボイス対応となっているかのほか、インボイス不要の経費なのか、免税事業者からの支払いなのかなど、さまざまなチェックを余儀なくされます。

 そのため、会社として、経理担当が負担にならないような独自のルールを設定することも大いに考えられます。

 例えば上記で述べたような個人宛の領収書を受け取った場合はそもそも経費精算をしないとか、クレジットカード決済の経費は領収書を添付しないと認めない、といったようにです。

 また、例えば業者さんへの差し入れのため、自動販売機でジュースを買って配るといったこともよくありますが、この場合はインボイスが不要な一方、自動販売機が設置されている住所を帳簿に記載する必要があります。

 そのため、経費精算の段階で、精算書に「自動販売機での購入のためインボイス不要な旨」「その自動販売機の設置場所」を記しておいてもらわないと、経理担当者は正しい処理ができなくなります。

 そこで筆者の顧問先は、そもそも自動販売機でジュースを買った場合は経費精算しないというルールを設けることにしました。買うならコンビニエンスストアなど、しっかりインボイスが受領できるところで買うように、というお達しが出されました。

 このように、会社独自のルールを守らないと、経費精算ができなくなる恐れもありますので、会社で定められたルールをよく把握しておきましょう。

従業員への影響(5)電子インボイスが絡むと来年以降はますます複雑に

 実は10月からインボイス制度が始まるのとは別に、2023年いっぱいで「電子帳簿保存法」の宥恕措置期間が終わり、2024年1月から本格稼働することになります。

 例えばネット通販で備品を購入したような場合、領収書は紙ではなくPCからダウンロードする形となります。

 実は2024年1月から、紙ではなくデータで受け取る書類(請求書、領収書、契約書など)については、紙保存ではなくデータのまま保存しないといけないというルールがあります(ただし消費税の観点のみでみれば、紙保存も可となっています)。

 ですから、例えば今まで社長個人名義のクレジットカードでネット通販にて備品購入をしたような場合、領収書は出力せず、カード利用明細のみで経理処理をしていたようなケースでは、

・クレジットカード払いの場合も領収書が必要
・社長個人名義だとインボイスの要件を満たさないので立替金精算書が別途必要
・領収書はWeb上でダウンロードするため、2024年以降は紙ではなくデータ保存が必要

といったように、追加的な作業が必要となります。

 電子帳簿保存法についても猶予措置が設けられてはいますが、インボイス制度とともに、そろそろ電子帳簿保存法についても内容を理解しておくようにしましょう。