アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2023年9月29日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。▲はマイナス。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。

 9月29日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

 なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。

日経平均は9月前半高から伸び悩み、米政府機関閉鎖リスク意識

 9月(8月31日終値~9月29日終値まで)の日経平均株価(225種)は2.3%の下落となりました。

 中旬にかけて上昇し、15日には3万3,634円の高値を付けました。米国では雇用統計やCPI(消費者物価指数)の発表を受けてインフレ懸念が後退する展開となったほか、中国では製造業PMI(購買担当者景気指数)の上振れなどで景気底入れに対する期待感なども高まりました。

 欧州ではECB(欧州中央銀行)理事会は追加利上げを決定しましたが、むしろ利上げの打ち止め感が意識される形にもなりました。

 ただ、その後は一転して軟化する展開になりました。米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のタカ派スタンスを受けて米長期金利の上昇が続いたほか、米政府機関閉鎖の可能性がリスク要因として意識されました。また、年度末にかけての機関投資家のリバランス売りなども観測されたもようです。

 こうした中、ランキングTOP15銘柄の株価は12銘柄がプラスパフォーマンスとなりました。9月中間期末を控えて配当権利取りの動きなどが優勢となったようです。

 上昇が目立った銘柄としては、PHCホールディングス(6523)SBIホールディングス(8473)MS&AD(8725)などが挙げられます。

 PHCHDは第1四半期減益決算が嫌気されて前月が低パフォーマンスとなっていたことで、9月に入って配当権利取りの動きが活発化したものとみられます。SBIHDは、日本株売買手数料無料化の発表以降に口座数増加のスピードが加速し、口座数が1,100万口座を突破したと発表しています。MS&ADは米長期金利の上昇などが手掛かりになったとみられます。

 一方、FPG(7148)JFEホールディングス(5411)サンゲツ(8130)がマイナスサイドとなりました。FPGは9月末一括配当銘柄であり、配当権利落ちの影響が月末にかけて強く生じる形となりました。

 JFEHDは公募増資の実施を発表したことで、株式価値の希薄化が嫌気されました。サンゲツは8月に15%超の上昇率となった反動で、利食い売りがやや優勢となったもようです。

JFEHDが公募増資公表による株価下落でランクイン

 今回、新規にランクインしたのは、JFEHD(5411)の1銘柄にとどまり、除外となったのは、IDEC(6652)となっています。前月に続いて、あまり大きな変動はみられませんでした。

 JFEHDは公募増資の発表を受け株価が下落したことで配当利回りが上昇しました。公募増資とCB(新株予約権付社債)を組み合わせて総額約2,100億円を調達し、主に高性能鋼材「電磁鋼板」の生産増強投資に充当する計画としています。なお、公募株数は発行済み株式数の4.1%に当たる規模となります。

 半面、IDECは9月の株価下落によって、時価総額が選定基準の1,000億円を割り込みました。

 アナリストコンセンサスと会社計画で配当予想が大きく異なっている銘柄として、サンゲツ(8130)、西松建設(1820)大和工業(5444)などが挙げられます。

 会社計画ベースでの配当利回りはサンゲツが4.46%、西松建設が4.67%、大和工業が4.20%であり、ともにコンセンサス予想は高過ぎる印象です。ただ、サンゲツは第1四半期の好業績からみて、コンセンサス水準に近づく可能性はあるでしょう。

 半面、FPG(7148)は直近で配当計画を引き上げているため、会社計画ベースでの利回り水準4.88%が実態に近いといえます。ただ、9月期決算銘柄のため、実質的には今後発表される新年度の配当計画がベースとなります。

 SBIHD(8473)は、会社側で2024年3月期の配当計画を示していません。アナリストの配当予想は2023年3月期から3円増配となる153円程度となっています。

バリュー株はこの短期調整場面が買い場になると判断

 懸念されていた米国の政府機関閉鎖は、土壇場でつなぎ予算が可決されたことで回避されました。つなぎ予算の期日は11月17日までであり、期日が接近するタイミングでは再度、政府機関閉鎖への懸念は再燃する余地がありますが、短期的には買い安心感が強まっていく可能性が高いでしょう。

 さらに、10月に入ると需給面の改善も期待できます。9月末にかけて観測された機関投資家の売り圧力が後退するほか、例年、10月以降は海外投資家の資金流入が拡大するタイミングでもあります。米長期金利の行方などリスク要因もありますが、目先的には株式市場は上値追いの展開になっていくとみられます。

 配当権利落ち日の翌日である9月29日には、バリュー(割安)株がそろって大幅下落となりました。下半期入りで機関投資家のリバランス(銘柄入れ替え)の動きが強まりやすいタイミングでもあり、ここまで堅調な動きが続いたバリュー株からグロース株への資金シフトが強まっていく流れを予感させるような動きでした。

 ただ、仮にバリュー株が短期調整する場面は、以下の点などから押し目買いの買い場になるとも判断されます。

 10月後半からスタートする2023年9月中間決算発表において、PBR(株価純資産倍率)1倍割れ銘柄の対応策が多く発表されるとみられること、来年1月の新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)制度スタートを控えて、中心的にNISA投資対象となりそうな高配当利回り銘柄を先回り買いするような動きも強まるとみられることなどです。