日銀が口先介入で円安抑制図った見方も

 また、読売の記事は6日(水)に日銀本店で単独インタビューを行ったとのことですが、報道は9日(土)に市場が閉まっている時に記事が掲載されたことから日銀が意図的に情報発信したのではないかとの見方があります。

 日銀は7月の金融政策決定会合でYCCの運用を柔軟化し、長期金利の上限を「0.5%」から「1.0%」に引き上げることを事実上容認しました。

 植田総裁はその会合後の記者会見でYCCの副作用として為替市場を意識したのか記者に問われ、為替はターゲットにしていないが、「副作用の話の中で金融市場のボラティリティ(変動)をなるべく抑えるという中に為替市場のボラティリティも含めて考えた」との説明がありました。

 日銀が今回、突然のマイナス金利解除を話題に出したことで円安の抑制に動いたと市場からみられてもおかしくはありません。

 6日の神田財務官、8日の鈴木財務相のそれぞれのけん制発言、そして9日の植田総裁のインタビュー記事によって、少なくとも円安の動きはいったんは抑制されました。  

 今回の円高は一時的なものなのか、方向を変えるものなのか見極める必要があります。次回の日銀金融政策決定会合(21~22日)の注目度が一気に高まりました。会合では日銀の総意として、マイナス金利解除の可能性や時期について触れるかどうか焦点です。それまでは積極的に円売りをしづらくなるかもしれません。

 ただ、インタビュー記事と同じような内容であった場合は、市場はマイナス金利が解除されても日米金利差への影響は少ないと冷静に捉える投資家も増え、円売りが再び始まるかもしれません。マイナス金利解除からさらに利上げを継続するような内容が示されれば、この見方も後退すると思われますが、どの程度踏み込んだ内容になるのか注目です。

米利上げ年内あるか五分五分、原油高騰で金利高長引く可能性も

 日銀会合の前に、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が開くFOMC(連邦公開市場委員会)が19~20日にあります。現状では利上げは見送り、11月か12月の年内会合での利上げがあるかどうか五分五分とする見方が大勢のようです。

 今週13日(日本時間13日午後9時半)に発表される米国8月CPI(消費者物価指数)によっては、その見方が変わるかもしれません。

 ただ、前年同月と比べたCPIの上昇率は、原油高に伴うガソリン価格高騰によって前月よりも2カ月連続の上昇予想となっていますが、食品とエネルギーを除いたコアCPIは2カ月連続の低下予想となっており、結果が発表されても判断が難しくなりそうです。相場も動きづらいかもしれないため注意が必要です。夏場以降の原油上昇がどの程度CPIに影響を与えているのか確認したいと思います。

 FRBは9月のFOMC後に3カ月に1度公開する利上げ予想を発表します。6月時点と大きく変わらなければ、日銀会合が控えていることから為替相場も円安ドル高に再び動き出すことはなさそうです。

 しかし、CPI上昇率の高止まりなどからタカ派的な金利見通し(例えば、2024年末の見通しが2023年末からの利下げ幅が前回見通しよりも縮小など)となれば、日銀会合前にドル高地合いが醸成されるかもしれないため注意する必要があります。

 また、日米の金融政策の決定会合に先立って、ECB(欧州中央銀行)理事会が14日に開催されます。ラガルド総裁は直近の講演会で、14日のECB理事会について利上げを継続するのか、見送るのか具体的に言及しませんでした。タカ派的であったラガルド総裁が慎重な言い回しになっていることから、ECB内部で意見が分かれているのかもしれません。

 ECB理事会の決定やその後の総裁会見がハト派的な内容となれば、ユーロ売りとなります。ユーロ売りは対ユーロでドル高と円高それぞれをけん引する両方の動きが起こるため注意が必要です。ユーロが対円で売られること(円高)により、円安ドル高を抑制する単純な動きになるかどうか見定めたいです。