米インフレは3%近くまで低下したがさらに低下するか正念場

 米景気はソフトランディングかハードランディングか、鍵を握るのが、インフレです。米景気が堅調なうちにインフレが収束するか、いつまでもインフレが収束せず、米景気はリセッション入りするかどうか、米インフレの行方に注目が集まっています。

米インフレ(CPI総合・コア指数の前年比上昇率)推移:2020年1月~2023年7月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 総合インフレ率が3.2%とピーク(2022年6月の9.1%)の約3分の1まで低下したことから、インフレ収束の期待が高まっています。ところが、コア・インフレ率が4.7%と高止まっていることから、さらなるインフレの低下が難しいとの見方もあります。労働市場のひっ迫、米国の景況がどう変化するか注目されています。

 そうした中で9月1日に発表された8月の雇用統計は、やや軟化したものの、依然として労働需給が強い環境は変わっていません。

非農業部門の雇用者増加数(前月比):2021年1月~2023年8月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 8月の雇用者増加数は前月比18.7万人でした。景気好調と言われる20万人増を割り込んでいますが、雇用増加が続いていることは変わりません。

米完全失業率:2014年1月~2023年8月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 8月の完全失業率は3.8%と、前月よりも0.3%ポイント上昇しました。それでも、コロナ前の実質完全雇用の時の3.5%に近い水準にあることには変わりありません。

 9月1日に発表されたISM製造業景況指数は47.6と少しだけ持ち直しました。

米ISM製造業・非製造業景況指数の推移:2018年1月~2023年8月(非製造業は7月まで)

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 製造業景況指数は47.6と、依然として景況分かれ目の50を割り込んだままです。それでも、前月比で持ち直しが続いており、ここから製造業が一段と悪化するとの見方は減ってきました。

 来年にかけて、AI(人工知能)や半導体への投資が盛り上がり、米景気が持ち直すとの期待が出ています。長短金利は逆転しているものの、これまでの経験則は当てはまらず、米景気はソフトランディングするという楽観が広がっています。