米国高配当株1:ニューモント・コーポレーション(NEM)

 1921年に設立された世界有数の金鉱山会社で、主に米国、カナダ、メキシコ、ドミニカ共和国、ペルー、スリナム、アルゼンチン、チリ、オーストラリアで金生産を行っています。

 優良な鉱業管轄区域を中心に事業を展開し、2022年12月31日の金資源は7,530万オンス、推定金資源は3,610万オンス、土地総面積は約2万3,700平方マイルを有し、現在S&P500種指数に上場している唯一の金生産会社となっています。

 時価総額は317億ドルで、日本円で約4兆6,000億円となっています(1USD=145円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は今期より見直しが行われ、12の鉱山事業と、バリック・ゴールド(Barrick Gold)との合併事業であるネバダ・ゴールド・マインズ(NGM)となりました。地域別には、北米・南米・オーストラリア・アフリカとネバダ・ゴールド・マインズの持ち分から構成されるネバタ州にわかれています。

「ネバダ・ゴールド・マインズ」は、2019年にバリック・ゴールドが61.5%、ニューモント・コーポレーションが38.5%の出資で設立された合弁会社で世界最大の金生産複合施設となっており、「Boddington」はオーストラリアのボディントン鉱山での生産を表しています。

競合他社

 競合他社として、貴金属の生産を行うカナダに本拠を置く金採掘会社であるアグニコ・イーグル・マインズ(AEM)、カナダを拠点とする金と銅の生産者であるバリック・ゴールド(GOLD)、カナダを拠点とする貴金属ストリーミング企業であるウィートン・プレシャス・メタルズ(WPM)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を下回って推移しており、配当は今年に入って減配しています。

 メキシコのPenasquito鉱山での操業が労働者のストライキ通告により停止し、カナダ・ケベック州で起きた森林火災によりEleonore鉱山の操業が停止するなどしたことで生産能力が低下し業績が悪化したこともあって株価は下落しています。

 業績の悪化にはこれらの理由に加えインフレも影響していますが、一方でこのような状況下でもオーストラリアのNewcrest社の買収を行うなど事業拡大の姿勢も見せています。

 今年後半には生産が持ち直すとの予想を会社側は発表しており、それに伴う業績の回復と、買収企業が今後の業績にプラスに寄与することが期待されます。

業績動向

 2023年7月20日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を下回りました。

 一部鉱山の操業停止などで業績が悪化し前年同期比を下回りましたが、会社側は2023年下半期にAhafo、Cerro Negro、Tanami、Akyem、Nevada Gold Minesにおいて生産量の拡大とコストの改善を見込んでおり業績の回復を予想しています。

 また、会社側は金価格が1オンスあたり100ドル上昇すると、それに起因するフリーキャッシュフローが4億ドル改善すると予想しており、今後も実物資産としての金の需要は続くと見込まれることからニューモント・コーポレーションの業績が長期的に拡大していくことが期待されます。

 次回2023年10月26日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 金の採掘による環境悪化への対応は各国によって異なっており、政権交代などで鉱山での金採掘にマイナスの政策などが発表された際には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.60ドル
配当利回り:3.98%
株価:40.19ドル(約5,800円)

 この銘柄、権利落ち日は9月6日(権利実施は9月21日)です。

 配当利回りは814日時点で3.98%、株価は811日終値が40.19ドルでおよそ5,800円から購入できます(1USD=145円計算)。

 2020年からの最高値は85.42ドル、最安値は37.79ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株2:ハンツマン(HUN)

 1970年創業の有機化学製品の世界的メーカーで、北米、アジア、欧州と多岐にわたる地域で事業を展開しています。

 製品は接着剤、航空宇宙、自動車、塗料、建築、建設製品、耐久・非耐久製品など、化学製品の数は数千に及び、広範囲にわたる消費者および産業用最終市場にサービスを提供する世界中のメーカーに販売されています。

 時価総額は50.6億ドルで、日本円で約7,300億円となっています(1USD=145円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「ポリウレタン原材事業(Polyurethanes)」で、続いて「パフォーマンス・プロダクト事業(Performance Products)」、「先進マテリアル事業(Advanced Materials)」となります。

「ポリウレタン原材事業」では、MDIベースのポリウレタンのグローバルリーダーであり、90カ国以上で3,000社以上の顧客にサービスを提供しています。

 また、「パフォーマンス・プロダクト事業」ではアミン、無水マレイン酸、および炭酸塩などの製造と販売を展開しており、これらの製品において世界をリードし続けています。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

競合他社

 競合他社として、顧客向けに製品を調合、流通、ブレンド、製造し、特殊化学品および原料の会社であるホーキンス(HWKN)、子会社を通じて、主にメンテナンスおよび改善用途向けの特殊塗料、修理製品、保護コーティングなどの特殊化学製品ラインの製造・販売を行うRPMインターナショナル(RPM)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初近辺の水準で推移しており、配当は今年から増配しています。

 年明け以降株価は上昇していたものの、物言う株主で有名なジェフリー・スミス率いるスターボード・バリューが2月中旬にハンツマンの株式保有を解消すると発表して以降、マーケット環境が芳しくなかったことと業績が悪化したこともあり株価は下落し、その後配当を12%増配させるなどの株主還元が発表されましたが、スターボード・バリューの株式保有解消を発表する前まで株価は戻らず、横ばいで推移しています。

 2023年上半期に約2億ドルの自社株買いを行っていますが、年間では4億ドルの自社株買いを目標としており、今後は自社株買いによる株価下支えと業績回復による株価上昇が期待されます。

業績動向

 2023年7月31日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を下回りました。各事業において平均販売価格の下落や為替の影響、需給関係の悪化などによって業績が前年同期比で下回っています。

 このような状況で、ハンツマンは2023年末までにM&A(買収や合併)のシナジー効果や、グローバルビジネスサービスの拡張、サプライチェーンの最適化、欧州事業の再編によって最大2億8,000万ドルのランレート効果を見込んでいます。

 会社側は直近の決算において、引き続きコスト構造の効率化を推進し、需要がより正常な水準に戻れば、収益性を改善できる態勢を確保したと発表しており、今後の業績回復が期待されます。

 次回は2023年11月2日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 売上の中心は米国・カナダとなっており、この地域の景気状況によって同社の業績が大きく変動する可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.95ドル
配当利回り:3.38%
株価:28.03ドル(約4,100円)

 この銘柄、権利落ち日は9月14日(権利実施は9月29日)です。

 配当利回りは814日時点で3.38%、株価は811日終値が28.03ドルでおよそ4,100円から購入できます(1USD=145円計算)。

 2020年3月からの最高値は41.20ドル、最安値は12.87ドルとなっています(終値ベース)。