米国の株式市場は世界最大の時価総額を持ち、建国当初から株価は右肩上がりの成長を続けています。その理由の一つとして、常に企業の新陳代謝が起こり、時代ごとに革新的な企業を生み出していることが挙げられます。

 米国株式の代表的な株式指数は、鉄道・公共事業以外の工業株30銘柄で構成される「NYダウ平均株価」、NASDAQ(ナスダック)に上場している全銘柄を対象とした「ナスダック総合指数」、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQに上場している大型株500銘柄を対象とした「S&P500種指数」があります。

 これらに採用されている企業は長期間にわたり利益を出し続け、株価も上昇し、配当を増配し続けている銘柄も珍しくはありません。

 そこで2023年9月権利落ちの米国株高配当5銘柄について解説します。

▼参照データ
•    株価…楽天証券のHPにて、日本時間2023年8月11日終値を採用
•    時価総額…楽天証券のHPにて、日本時間2023年8月14日時点の記載情報を採用
•    配当情報、決算情報…Investing.comのHPにて、日本時間2023年8月14日時点の記載情報を採用
•    為替:1ドル =145円で計算
※上記日付のデータで数値を抽出・算出しております。記事公開後の市況変動で数値が異なる場合がございますので、ご了承いただきますようお願いいたします。

 その前に、日本と米国の高配当銘柄への投資で、特に重要な三つの違いについて、お伝えします。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%の課税がされます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

※米国市場で上場していても、国籍が米国籍企業以外の場合、配当金にかかる源泉税率は日本との租税条約によって異なり10%ではありません。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら売却時にも外貨決済で米ドルにしなければ無駄に手数料を支払うことになります。

 そして、2024年から制度改正された新NISAが始まる予定です。つみたて投資枠と成長投資枠と分かれていますが、米国株も投資できる成長投資枠では年間240万円を運用期間無期限かつ最大1,200万円まで投資が可能となり、制度期間も恒久化されました。

 これまで1年間の枠を気にしたり、ロールオーバーなどで手間暇がかかりましたが、それもなくなり、非常に使いやすい制度になります。とはいえ、米国株でNISAを必ず枠全部まで利用しなければいけないわけではありません。運用期間が無期限になったことにより、自分のペースで投資をすることができますので、無理のない範囲で長期投資の手段として有効活用していきましょう。

【2024年からの新NISA制度について、詳しい説明はこちら

米国高配当株1:ニューモント・コーポレーション(NEM)

 1921年に設立された世界有数の金鉱山会社で、主に米国、カナダ、メキシコ、ドミニカ共和国、ペルー、スリナム、アルゼンチン、チリ、オーストラリアで金生産を行っています。

 優良な鉱業管轄区域を中心に事業を展開し、2022年12月31日の金資源は7,530万オンス、推定金資源は3,610万オンス、土地総面積は約2万3,700平方マイルを有し、現在S&P500種指数に上場している唯一の金生産会社となっています。

 時価総額は317億ドルで、日本円で約4兆6,000億円となっています(1USD=145円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は今期より見直しが行われ、12の鉱山事業と、バリック・ゴールド(Barrick Gold)との合併事業であるネバダ・ゴールド・マインズ(NGM)となりました。地域別には、北米・南米・オーストラリア・アフリカとネバダ・ゴールド・マインズの持ち分から構成されるネバタ州にわかれています。

「ネバダ・ゴールド・マインズ」は、2019年にバリック・ゴールドが61.5%、ニューモント・コーポレーションが38.5%の出資で設立された合弁会社で世界最大の金生産複合施設となっており、「Boddington」はオーストラリアのボディントン鉱山での生産を表しています。

競合他社

 競合他社として、貴金属の生産を行うカナダに本拠を置く金採掘会社であるアグニコ・イーグル・マインズ(AEM)、カナダを拠点とする金と銅の生産者であるバリック・ゴールド(GOLD)、カナダを拠点とする貴金属ストリーミング企業であるウィートン・プレシャス・メタルズ(WPM)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を下回って推移しており、配当は今年に入って減配しています。

 メキシコのPenasquito鉱山での操業が労働者のストライキ通告により停止し、カナダ・ケベック州で起きた森林火災によりEleonore鉱山の操業が停止するなどしたことで生産能力が低下し業績が悪化したこともあって株価は下落しています。

 業績の悪化にはこれらの理由に加えインフレも影響していますが、一方でこのような状況下でもオーストラリアのNewcrest社の買収を行うなど事業拡大の姿勢も見せています。

 今年後半には生産が持ち直すとの予想を会社側は発表しており、それに伴う業績の回復と、買収企業が今後の業績にプラスに寄与することが期待されます。

業績動向

 2023年7月20日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を下回りました。

 一部鉱山の操業停止などで業績が悪化し前年同期比を下回りましたが、会社側は2023年下半期にAhafo、Cerro Negro、Tanami、Akyem、Nevada Gold Minesにおいて生産量の拡大とコストの改善を見込んでおり業績の回復を予想しています。

 また、会社側は金価格が1オンスあたり100ドル上昇すると、それに起因するフリーキャッシュフローが4億ドル改善すると予想しており、今後も実物資産としての金の需要は続くと見込まれることからニューモント・コーポレーションの業績が長期的に拡大していくことが期待されます。

 次回2023年10月26日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 金の採掘による環境悪化への対応は各国によって異なっており、政権交代などで鉱山での金採掘にマイナスの政策などが発表された際には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.60ドル
配当利回り:3.98%
株価:40.19ドル(約5,800円)

 この銘柄、権利落ち日は9月6日(権利実施は9月21日)です。

 配当利回りは814日時点で3.98%、株価は811日終値が40.19ドルでおよそ5,800円から購入できます(1USD=145円計算)。

 2020年からの最高値は85.42ドル、最安値は37.79ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株2:ハンツマン(HUN)

 1970年創業の有機化学製品の世界的メーカーで、北米、アジア、欧州と多岐にわたる地域で事業を展開しています。

 製品は接着剤、航空宇宙、自動車、塗料、建築、建設製品、耐久・非耐久製品など、化学製品の数は数千に及び、広範囲にわたる消費者および産業用最終市場にサービスを提供する世界中のメーカーに販売されています。

 時価総額は50.6億ドルで、日本円で約7,300億円となっています(1USD=145円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「ポリウレタン原材事業(Polyurethanes)」で、続いて「パフォーマンス・プロダクト事業(Performance Products)」、「先進マテリアル事業(Advanced Materials)」となります。

「ポリウレタン原材事業」では、MDIベースのポリウレタンのグローバルリーダーであり、90カ国以上で3,000社以上の顧客にサービスを提供しています。

 また、「パフォーマンス・プロダクト事業」ではアミン、無水マレイン酸、および炭酸塩などの製造と販売を展開しており、これらの製品において世界をリードし続けています。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

競合他社

 競合他社として、顧客向けに製品を調合、流通、ブレンド、製造し、特殊化学品および原料の会社であるホーキンス(HWKN)、子会社を通じて、主にメンテナンスおよび改善用途向けの特殊塗料、修理製品、保護コーティングなどの特殊化学製品ラインの製造・販売を行うRPMインターナショナル(RPM)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初近辺の水準で推移しており、配当は今年から増配しています。

 年明け以降株価は上昇していたものの、物言う株主で有名なジェフリー・スミス率いるスターボード・バリューが2月中旬にハンツマンの株式保有を解消すると発表して以降、マーケット環境が芳しくなかったことと業績が悪化したこともあり株価は下落し、その後配当を12%増配させるなどの株主還元が発表されましたが、スターボード・バリューの株式保有解消を発表する前まで株価は戻らず、横ばいで推移しています。

 2023年上半期に約2億ドルの自社株買いを行っていますが、年間では4億ドルの自社株買いを目標としており、今後は自社株買いによる株価下支えと業績回復による株価上昇が期待されます。

業績動向

 2023年7月31日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を下回りました。各事業において平均販売価格の下落や為替の影響、需給関係の悪化などによって業績が前年同期比で下回っています。

 このような状況で、ハンツマンは2023年末までにM&A(買収や合併)のシナジー効果や、グローバルビジネスサービスの拡張、サプライチェーンの最適化、欧州事業の再編によって最大2億8,000万ドルのランレート効果を見込んでいます。

 会社側は直近の決算において、引き続きコスト構造の効率化を推進し、需要がより正常な水準に戻れば、収益性を改善できる態勢を確保したと発表しており、今後の業績回復が期待されます。

 次回は2023年11月2日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 売上の中心は米国・カナダとなっており、この地域の景気状況によって同社の業績が大きく変動する可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.95ドル
配当利回り:3.38%
株価:28.03ドル(約4,100円)

 この銘柄、権利落ち日は9月14日(権利実施は9月29日)です。

 配当利回りは814日時点で3.38%、株価は811日終値が28.03ドルでおよそ4,100円から購入できます(1USD=145円計算)。

 2020年3月からの最高値は41.20ドル、最安値は12.87ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株3:フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシーズ(FIS)

 銀行、証券、保険、商社、エンタープライズ・テクノロジー、小売、レストランなどさまざまな業種に向けてテクノロジー・ソリューションを提供するリーディング・カンパニーです。

 アドバンス・インテグレーテッド・バンキング、コマーシャル・バンキングとアセット・ファイナンスの推進、次世代プラットフォーム・バンキングの構築、データソリューション、顧客コミュニケーション管理などさまざまなサービスを提供しています。

 S&P500、Fortune 500の一社であり、世界の資産の半分以上が同社のシステムで管理されています。

 時価総額は340億ドルで、日本円で約4兆9,000億円となっています(1USD=145円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「バンキング・ソリューション事業(Banking Solutions)」で、続いて「マーチャント・ソリューション事業(Merchant Solutions)」、「資本市場ソリューション事業(Capital Market Solutions)」, 「その他事業(Corporate and Other)」となります。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

「バンキング・ソリューション事業」では、コア・プロセッシング・ソフトウエア、トランザクション・プロセッシング・ソフトウエア、補完的なアプリケーションやサービスをグローバルな金融機関、米国の地方銀行、コミュニティ銀行、信用組合、商業金融機関、政府機関などに提供し、「マーチャント・ソリューション事業」では、世界中のあらゆる規模の加盟店にサービスを提供、電子決済取引の受け入れ、承認、決済を可能にすることに注力しています。

競合他社

 競合他社として、デジタル証券会社のプラットフォームを提供する投資持株会社であるフツ・ホールディングス(FUTU)、金融テクノロジーとソフトウエアソリューションの提供を行うストーン(STNE)、主にリアルタイムのデジタル決済を促進するソフトウエア製品およびソリューションの開発、販売、導入、サポートを行うACIワールドワイド(ACIW)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を下回って推移していますが、配当は2021年以降毎年増配しています。

 3月8日以降株価が下落し、その後少しずつ株価が回復してきているものの年初の水準にはまだ戻っていません。

 シリコンバレーバンク破綻による金融不安の影響を受けて、金融に関係する銘柄の多くの株価が下落し、フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシーズもその影響を受けて下落しました。

 今後は戦略的見直しの一環として「マーチャント・ソリューション事業」をスピンオフし、成長とマージンの可能性を活用するための戦略的・業務的集中の強化を行い、資本配分と資本構造を長期的な成長目標と市場の潜在的ニーズに合わせると会社側は発表しており、これからの株価回復が期待されます。

業績動向

 2023年8月2日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を上回りました。

 しかし、1株利益が前年同期を下回ったこともあってか株価はほとんど反応せずに推移しています。

 会社側は第2四半期の財務目標を上回り、通期ガイダンスを上方修正し、以前に発表した分離計画を加速して、より戦略的柔軟性の高い高度に集中した二つのグローバル企業を設立することで、堅調な業績を達成できたことを大変喜ばしく思うとともに、これらの好業績は、事業による継続的な業務遂行とFuture Forward企業変革プログラムの成功を反映したものですとしています。

 次回2023年11月2日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 傘下の決済サービス事業ワールドペイの株式55%を売却し、売却資金は債務返済と自社株買いに充当する計画であるが、これらの動きが一段落した際に目新しい材料が無ければ材料出尽くしとして売却される可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:2.08ドル
配当利回り:3.69%
株価:56.29ドル(約8,200円)

 この銘柄、権利落ち日は9月7日(権利実施は9月22日)です。

 配当利回りは814日時点で3.69%、株価は811日終値が56.29ドルでおよそ8,200円から購入できます(1USD=145円計算)。

 2020年からの最高値は157.44ドル、最安値は49.70ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株4:シルバークレスト・アセットマネジメント・グループ(SAMG)

 超富裕層の個人および機関投資家に対して、ファイナンシャル・アドバイザリーおよび関連するファミリー・オフィス・サービスを提供することに重点を置いた、フルサービスのウェルス・マネジメント会社です。

 ウェルス・マネジメント・ビジネスを名目とする企業がひしめく中で、2023年6月30日現在、シルバークレスト・アセットマネジメント・グループの運用資産は319億ドルで、1,000万ドル以上の投資可能資産を持つ個人およびファミリーを対象とし、2,500万ドル以上の投資可能資産を持つファミリーには、包括的な投資およびファミリー・オフィス・サービスを提供しています。

 時価総額は2.8億ドルで、日本円で約406億円となっています(1USD=145円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は「資産運用事業(the investment management industry)」の単独事業です。

 その中で売上の中心は「運用&助言手数料(Management and advisory fees)」で、続いて「ファミリーオフィス・サービス費用(Family office services)」、「成功報酬&資産管理費用(Performance fees and allocations)」となります。

「資産運用事業」では、株式、債券、現金に焦点を当てた伝統的な投資戦略のほか、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ・ファンド、不動産、コモディティなどの非伝統的な投資戦略についても助言を行い、それ以外にもファミリー・オフィス・サービスや、ファイナンシャル・プランニング、税務計画・準備、パートナーシップ会計、ファンド管理、連結財産報告などの関連管理サービスも顧客に提供しています。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

競合他社

 競合他社として、代替資産管理ソリューション会社であるGCMグロブナー(GCMG)、主にサードパーティーのウェルスマネジメントサービスを提供する中国を拠点とする会社であるハイウィン・ホールディングス(HYW)、リバースモーゲージや住宅改修ローンなど、幅広い柔軟なソリューションへのアクセスを顧客に提供する専門金融消費者金融プラットフォームを提供するファイナンス・オブ・アメリカ・カンパニーズ(FOA)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を上回って推移しており、配当は今回の9月配当から増配の予定です。運用成績が好調であることから、資金流入が続き運用資産が拡大しています。

 2022年12月31日現在、一任運用資産の約68%は個人顧客向けに32%は機関投資家向けに設定されていますが、運用能力は複数の著名な機関投資家コンサルタントの承認リストに掲載され、その結果、機関投資家からの資産受け入れは大幅な成長が今後も続くと思われると会社側も発表しており、今後も好調な業績とそれに伴う株価の上昇が期待されます。

業績動向

 2023年7月27日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を下回りました。

 運用資産総額は前年同期比で287億ドルから319億ドルに拡大し、主に収益をけん引する一任運用資産は、第 1 四半期と比べて 2 億ドル増加しているものの、昨年と比べて市場が回復したことによって解約が増え、ここ一年間で見ると一任運用資産からの収益が減少しています。

 しかし、会社側は機関投資家などとの新たな収益機会のパイプラインは引き続き堅調であり、「資産運用事業」への注力と共に、新たな収益機会にも注力していくと発表しておりこれからの業績回復が期待されます。

 次回は2023年11月2日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 会社側も発表していますが、マーケットに業績が大きく左右される業種であるため相場の大幅な変動の際には業績への影響が他の業種よりも大きい点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.76ドル
配当利回り:3.77%
株価:20.14ドル(約3,000円)

 この銘柄、権利落ち日は9月7日(権利実施は9月15日)です。

 配当利回りは814日時点で3.77%、株価は811日終値が20.14ドルでおよそ3,000円から購入できます(1USD=145円計算)。

 2020年3月からの最高値は22.54ドル、最安値は7.32ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株5:ニュートリエン(NTR)

 世界最大の農作物投入資材、サービス、ソリューションのプロバイダーです。

「未来への食糧供給」を目的としてニュートリエンは、生産者が持続可能な方法で食糧生産を拡大できるよう支援しています。

 生産、流通、小売施設の世界トップクラスのネットワークを有し、農作物用栄養剤、農作物保護製品、種子を北米、南米、オーストラリアの農場センターネットワークを通じて生産者にサービス提供するとともに、肥料の3要素であるカリウム、窒素、リン酸を製造・販売し、2050年までに100億人に食糧を供給するという世界的な課題へのソリューションを開発しています。

 時価総額は445億カナダドルで、日本円で約4兆7,800億円となっています(1CAD=107.50円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「小売事業(Retail)」で、続いて「ニトロゲン事業(Nitrogen、窒素)」、「ポタッシュ事業(Potash、カリウム)」、「ホスフェート事業(Phosphate、リン酸)」となります。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

「小売事業」では、農作物用栄養剤、農作物保護製品、種子、を製造・販売し、「ニトロゲン事業」では窒素を、「ポタッシュ事業」ではカリウムを、「ホスフェート事業」ではリン酸の製造・販売を行っています。  

競合他社

 競合他社として、クリーンエネルギー、肥料、排出ガス削減、その他の産業用途向けに水素と窒素製品を製造するメーカーであるCFインダストリーズ・ホールディングス(CF)、濃縮リン酸塩とカリ作物栄養素の生産・販売を行うモザイク(MOS)、農業に特化した種子と作物保護ソリューションを提供するグローバル会社であるコルテバ(CTVA)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を下回って推移していますが、配当は今年に入って増配しています。

 会社側は世界的なカリウム価格下落の影響が出ており、主要市場、特に北米では需要が引き続き増加しているものの、海外市場では回復の過程にばらつきがあるとしています。

 また、2023年後半に予定されているプロジェクト完了後、市場環境に対応するため、カリウムの年間生産能力を1,800万トンに増強することを無期限停止するとともに、世界最大のクリーンアンモニア施設であるGeismar clean ammonia projectを中止すると発表しました。

 しかし、これらによって2023年の資本支出を約2億ドル削減する見込みで、これらの戦略的行動によって業績が改善しそれに伴って株価が回復することが期待されます。

業績動向

 2023年8月2日開示の四半期決算では、1株利益は市場予想を下回ったものの、売上は市場予想を上回りました。

 カリウム化合物であるPotashの販売価格の低下と海外での販売数量の減少が北米での販売数量の増加を上回るとともに、窒素の販売価格が下落するなどした影響で業績が悪化しました。

 今後について会社側は、ニュートリエンが取り扱っている製品の価格が下落しており、ロシアが黒海穀物取引を中止したことや米国中西部が今季記録的な乾燥に見舞われていることから、世界の穀物および油糧種子の需給逼迫(ひっぱく)に直面し、価格が下支えされる製品もあるが、それ以外でもコントロール可能なコストを削減し、2023年以降のフリーキャッシュフローを強化すると発表しており、今後、それらの対策が業績の回復につながるか注目です。

 次回2023年11月1日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 中国とのカリウム契約やロシアの問題など、世界で事業を展開しているが故に各国の対応が業績に影響を及ぼしますが、動きが想定しづらい国との取引も多くそれらが業績に影響を与える点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:2.12ドル
配当利回り:3.18%
株価:66.49ドル(約9,600円)

 この銘柄、権利落ち日は9月28日(権利実施は10月13日)です。

 配当利回りは814日時点で3.18%、株価は811日終値が66.49ドルでおよそ9,600円から購入できます(1USD=145円計算)。

 2020年からの最高値は114.50ドル、最安値は25.10ドルとなっています(終値ベース)。

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【要チェック】
 楽天証券「トウシルの公式YouTubeチャンネル」では、同筆者が執筆した「やってはいけない資産形成」のコラムを動画で視聴できます。

 また、リーファス社の公式YouTubeチャンネル『ニーサ教授のお金と投資の実践講座』では、同コラムの他にも動画でお金と投資の知識を学ぶことができます。