金利低下でも高水準の利益を維持、第1四半期(4-6月)も好調
三菱UFJ、三井住友FGとも、金利低下期でも、安定的に高収益を稼いできました。「金利が下がると銀行の収益が悪化する」というイメージは、この2社には当てはまりません。
三菱UFJ、三井住友FGの連結純利益:2014年3月期~2024年3月期(会社予想)
三菱UFJの2022年3月期の連結純利益は、7期ぶりに最高益を更新。2024年3月期も過去最高益を上回る見通しです。
発表されたばかりの今第1四半期(2023年4-6月期)業績も好調でした。三菱UFJは、最高益更新を見込む今期の純利益予想1兆3,000億円に対し、第1四半期だけで5,583億円【注】を計上しました。通期目標に対する進捗(しんちょく)率は43%でした。
【注】三菱UFJの第1四半期は、持分法による投資損益が前年同期比768億円増だが、それは主にモルガンスタンレーの持分法適用決算期を変更した要因である。ただし、その要因を除外しても、第1四半期の業績が好調だったという評価は変わらない。
三井住友FGは進捗率30%でした。両社とも、通期の見通しを修正しませんでしたが、増額修正含みと考えています。
上の表をご覧いただくと、「金利が下がると銀行の利益が出なくなる」という株式市場の思い込みが誤りであることがわかります。両社の連結純利益は、2019年3月期まで、長期金利がどんどん低下していく中でも安定的に高水準を保っています。
2020年3月期・2021年3月期はコロナ禍で信用コスト(貸倒償却および貸倒引当金繰入額)が増加したことによって利益水準がやや下がりました。それでも、「コロナ禍にもかかわらず高水準の利益を維持していた」と評価できます。
2022年3月期、2社ともコロナ前の水準に利益が戻りました。三菱UFJは、2015年3月期にあげた最高益を更新しました。想定されたほど貸倒れが発生しなかったことから、貸倒引当金の戻入益が大きくなったことが貢献しました。低金利でも稼ぐメガ銀行の姿がよく表れています。
2022年3月期には、ロシアによるウクライナ侵攻が起こりましたが、この期のうちにロシア関連の与信について貸倒引当金を十分に積んだので、今後、ロシア関連与信で大きな損失が発生することはないと予想されます。
このように、三菱UFJと三井住友FGは、海外収益の拡大とユニバーサルバンク経営によって、低金利でも高収益を稼ぐビジネスモデルを確立していると考えています。今後、国内の長期金利の上昇が続けば、国内商業銀行業務の利益も拡大するので、さらに投資価値が高まります。
前期に続いて今期も増配
両社とも株主への利益配分に積極的と評価できます。以下の通り、両社とも、コロナ禍で配当を据え置いた2021年3月期を除けば、安定的に増配を続けています。
三菱UFJ、三井住友FGの1株当たり配当金:2017年3月期実績~2024年3月期(会社予想)
両社とも、さらに自社株買いを積極的に行っていることが高く評価できます。ともに株主への利益配分に積極的です。
2社とも保有する有価証券に巨額の評価益、ただし外債には評価損
ドル金利急上昇で、米国ではシリコンバレー銀行など地方銀行3行が破綻しました。金利上昇ピッチが急過ぎたため、米国の銀行が保有する米国債に巨額の評価損が発生したことが、米国の地方銀行の財務悪化につながりました。
日本の銀行も、ドル金利急上昇で、保有する外国債券に巨額の評価損が発生しています。
三菱UFJ、三井住友FGの「その他有価証券」の評価損益:2023年6月末時点
三菱UFJ・三井住友FGも保有する外債に巨額の評価損があります。ただし、保有する国内株式に巨額の評価益があるので、財務上の問題はありません。両社とも、国内株式・外国債券の評価損益を合わせた「その他有価証券」トータルでは、巨額の評価益を有します。
保有する外国債券に巨額の含み損が生じたことを、ネガティブにコメントするメディアもありますが、私はそうは思いません。金利上昇によって、将来外債投資で得られる利回りが拡大する効果、預貸金利ザヤが拡大する効果を勘案すると、金利上昇のトータル効果は、銀行業にとってプラスの方が大きいと考えています。
実際、ドル金利の上昇に加えて、円の長期金利も上昇してきたことによって、国内海外とも預貸金利ザヤ(貸出金利と預金金利の差)が拡大しつつあります。
両社とも、不良債権比率は低水準にとどまり、財務良好と評価しています。PBR1倍を割れている両社の株価は過小評価で、中長期での投資価値は高いと判断しています。
最後に告知事項です。筆者は過去に三井住友銀行に勤務したことがあり、三井住友FG株を9,000株保有しています。