金利が下がる都度、売られてきた銀行株

 三菱UFJ、三井住友FGが、株価指標で見て極めて割安なのは、これまで高水準の利益をあげてきたにもかかわらず、株価が長期にわたり低迷してきたからです。両社の株価が過去どう推移してきたかご覧ください。

日経平均および三菱UFJ、三井住友FG株価の動き比較:2007年1月~2023年8月(2日まで)

出所:2007年1月末の値を100として指数化、QUICKより作成

 両社とも2008年以降、金利低下とともに売られてきました。金利が低下している間は、日経平均を大幅に下回るパフォーマンスとなっていました。

 株式市場で「金利低下→銀行(金融業)の収益悪化」というイメージが定着しているので、金利が低下する都度、世界中で銀行株をはじめとして金融株が売り込まれました。

日米の長期金利(10年国債利回り)推移:2007年1月~2023年8月(2日)

出所:QUICKより作成

 三菱UFJ・三井住友FGは、日米の長期金利が低下する過程で売られました。日本の長期金利がゼロ近辺に低下すると、国内商業銀行業務の収益低下が懸念されて、さらに売り込まれました。

 銀行株が世界的に反転上昇に入るのは2021年からです。ドルの長期金利が上昇し始めると、世界的に金融株が見直され、日本のメガ銀行株も上昇しました。さらに2022年12月に、日銀が日本の長期(10年)金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げると、国内銀行業務の利ザヤ拡大の期待から、日本の銀行株の上昇が加速しました。

 2023年3月に欧米で金融不安が起こると、世界的に銀行株が売られ、日本のメガ銀行株も売られました。米国でシリコンバレー銀行などが破綻、欧州でクレディスイスの経営危機が表面化した影響が出ました。ただし、米国およびスイスの金融当局が迅速に対応を取り、金融危機の拡大を抑えると、もともと財務的に健全だった日本の銀行株は再び上昇に転じました。

 日銀は7月、長期金利の上限を事実上1.0%まで引き上げました。日本の長期金利は8月2日時点で0.6%台まで上昇しています。長期金利の上昇で、日本国内の商業銀行業務に収益改善期待が高まっています。