3.金融緩和が続く間は長短金利スプレッドが低水準継続

長短金利スプレッドが抑制されることで、10年国債利回りの上昇は抑制される

 最後に今後の日本の10年国債利回り動向を考えてみます。図表3は、日本の長短金利、長短金利スプレッド、および、日銀の国債保有割合の推移です。黒田前総裁が就任して以降、日銀の国債保有割合が10%強から50%強に大幅に増加しており、その影響などから10年国債利回りの大幅低下をもたらし、長短金利スプレッドが大きく縮小したようです。

 長短金利スプレッドの平均値を見ると、黒田前総裁就任前が約1.2%、就任後が約0.2%と大幅に縮小しています。

 では、今後の日本国債利回りはどうなるのでしょうか? 植田和男新総裁は、日本経済が好循環(企業業績成長、賃上げ、適度なインフレが足並みをそろえる状態)に確実に戻るまでは緩和を継続する意向を示しており、かなりの期間にわたって、利上げもなければ、保有国債の削減もないと思われます。

 7月下旬の金融政策決定会合ではYCCの運用の柔軟化を決定しましたが(10年金利を厳格に抑制する水準を0.5%から1.0%に修正し、0.5~1.0%の間では機動的に対応する)、展望レポートでの中期インフレ見通しにほとんど変化がなかったほか、植田総裁の会見でも「10年金利がすぐに1%に上昇するとは考えていない」と言及しました。

 そうしたこともあり、金融政策決定会合後の週明け月曜日時点で10年国債利回りは0.5%を超えましたが、それ以上の大きな変動は見られません。

 やはり、利上げや保有国債の削減がなければ、長短金利スプレッドに抑制がかかっているため、10年国債利回りが大きく上昇する可能性は小さいと思われ、当面の間は、長短金利スプレッドが緩和前水準まで拡大するとは考えにくく、10年国債利回りは1.0%には至らずに、日銀が機動的に対応すると設定した0.5~1.0%の範囲内で推移しそうです。

[図表3]  日本長短金利、長短スプレッド、および、日銀国債保有割合の推移  

期間(長短金利):2000年1月末~2023年6月末、月次
期間(平均スプレッド):2000年1月末~2013年3月末、2013年4月末~2023年6月末、月次
期間(日銀国債保有割合):2000年度~2022年度、年度
・短期金利:無担保コール翌日物レート
・長期金利:日本10年国債利回り(Bloomberg Generic)
・日銀国債保有割合:国債・財投債の保有割合
(出所)Bloomberg、日銀ホームページを基に野村アセットマネジメント作成

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