今日の為替ウォーキング

今日の一言

 あなたの野心を小さくする人々とは距離を置きなさい。本当に偉大な人間は、あなた自身も偉大になれると思わせてくれるものだ - マーク・トウェイン

I Still Haven’t Found What I’m Looking For

 日本のインフレが止まらない。2023年の飲食料品の値上げ品目数が3万品目を突破した。今バブル崩壊以後の30年間でも異例で、記録的な22年(2万5768品目)を上回り、過去最大級の値上げラッシュとなっている。10月には酒類や調味料などを中心に、さらに3716品目が値上げの予定がある。

 企業は、原材料価格や物流費の高騰、円安で値上げは仕方ないと消費者を説得する。しかし、実際はというと、原油価格はウクライナ戦争前の水準まで下がり、インフレどころかディスインフレ状態になっている。ウクライナ戦争で小麦不足が言われているが、実はEU(欧州連合)欧州委員会は、割安な価格のウクライナ産穀物の大量流入がEU農家に痛手を与えているとして「輸入制限」をしているのだ。

 つまり、現在の値上げの多くは便乗値上げなのだ。便乗値上げとは、原材料費、エネルギーコストの上昇など合理的な理由によって値上げを行う際に、その差額以上の値上げをすることである。消費者に気づかれる前にできるだけ多くマージンを上乗せする「企業努力」をしているのだ。

 インフレに対応する日銀の政策について聞かれた植田総裁は次のように語っている。「金融政策の引き締めの遅れで2%を超えるインフレ率が持続するリスクより、拙速な引き締めで2%の物価安定目標を実現できなくなるリスクの方が大きい。」つまり、何もしませんということだ。

 植田総裁は、日本のインフレが十分に育つ前に萎れてしまうことを心配しているのだ。しかし、どうか安心してほしい。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエルFRB議長も、2年前の21年6月の議会証言では「インフレは一過性」で「FRBは予防的に利上げすることはない」と語っていた。同時期のECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁も「政策対応は時期尚早である」と大言壮語していた。

 FRB議長とECB総裁の予測が正しければ、現在の米国と欧州のインフレ率はすでに2%以下になっているはずだ。しかし現実は、米国のインフレは瞬く間にFRBの目標値の2%を超え、一時は9%まで上昇した。FRBが5%以上も金利を引き上げても、なお目標の2倍の水準で高止まりしている。欧州のインフレ率も一時10.0%を超えた。2年後の日本のインフレ率がどうなっているか楽しみである。

今週の注目経済指標

出所:楽天証券作成