上がったり下がったりのレンジ相場から一気に上昇する動きに
日経平均株価(225種)は、3月までは2万7,000円を中心に、上がったり下がったりのレンジ相場となっていましたが、4月から突如上がり始め、一時は3万3,000円台を付けるまでの動きとなっています。
景気循環からは、企業業績が悪化しやすく、過去においては株価が下がりやすい時期に位置しています。
では、今回の上昇はどうやったら捉えられていたのでしょうか?
一つ、捉えようとしてずっと見ていた指標で、結果として捉えられなかったものがあります。今回、その指標についてお伝えをしていきたいと思います。
まず、私が考える景気循環における株価のイメージは次のとおりです。
(図1)景気循環における株価のイメージ
景気循環において、各局面を独自分析に基づいて「春」「夏」「秋」「冬」という季節になぞらえていて、それぞれ次のように位置付けています。
「春」…不況から景気回復の局面
「夏」…景気回復から好況の局面
「秋」…好況から景気後退の局面
「冬」…景気後退から不況の局面
現在は、「冬(前半)」という時期に独自分析上なっていて、過去においては企業業績が悪化しやすく、株価も下げやすい局面に位置していますが、日経平均は大きく上昇する動きとなっています。
日経平均は予想EPSの前年比増減率に左右される
では、どうやったら今回の上昇を捉えられていたのでしょうか?捉えようとして、結果として捉えられなかった指標、それが、日経平均の予想EPS(1株当たり利益)の前年比増減率でのボトムアウトです。
(グラフ1)日経平均株価と予想EPSの前年比増減率、景気循環との関係
(グラフ1)をみると、景気循環の位置にはあまり関係なく、濃い青線である予想EPSの前年比増減率が上がっているときには、日経平均は上昇する傾向があり、その逆もしかりであることが見て取れます。実際には、濃い青線がボトムを付ける少し手前から日経平均は上がり始めています。
通常の景気循環におけるボトムは、2016年7月と2019年11月にあって、ちょうど景気循環における「春」になり始めのころとなっています。日経平均はこのボトムのときにはすでに上がり始めており、上がり始めはボトムの2カ月前あたりとなっています。
このため、ボトムの2カ月前を予想して、そうなったら分析上もポジションを買いのほうにシフトという形にしていましたが、今回においては、すでに6月2日にボトムを付けていたことが6月16日に判明するという、後付けで分かる結果になりました。
6月2日の2カ月前は4月2日、そのときの日経平均は2万8,000円あたりでまだ大きく上昇し始める前でしたので、今回のケースにおいても、ボトムの2カ月前あたりから上昇しており、この分析自体は効いているということになります。
ただし、事前に捉えられなければ、後の祭りです。では、どのようにしたら捉えられていたのでしょうか?
直近の企業業績の伸び率ではなく、ボトムの4カ月前を捉える
これまでは分析上、直近1カ月の企業業績の伸び率を出し、それを延長させた場合にどうなるかで、ボトムの2カ月前を捉えようとしていて、その結果、事前に捉えることができず、後付けとなりました。
これを、直近の企業業績の伸び率を基にするのではなく、アナリストの上方修正も下方修正もどちらもないと仮定してボトムの時期を予想し、その4カ月前を捉えるという形にすれば、日経平均が上昇する前を捉えられる形になります。
今回のケースでいくと、ボトム予想は7月14日であり、その4カ月前の3月14日の日経平均は2万7,222円ということになります。
ちなみに、2016年のケースではボトム予想は7月29日で、その4カ月前の3月29日の日経平均は1万7,103円、2019年のケースではボトム予想は9月13日で、その4カ月前の5月13日の日経平均は2万1,191円となっています。
「冬(前半)」はボトムアウトのため日経平均が下落する可能性あり
ただし、今回、注意が必要な点は、「冬(前半)」におけるボトムアウトということです。「冬(前半)」は企業業績が悪化しやすい時期であるので、今後、企業業績において下方修正が出てくると、一転してピークアウトとなり、日経平均は下落するという展開も考えられます。
いずれにしても、ボトムアウトについて、残念ながら今回は事前にお伝えすることはできませんでしたが、次回、その機会が来たときには、ぜひお伝えができればと思っています。
投資はあくまでも自己責任で。