資産運用での金融商品選び、なぜ悩んでしまうのか?

 金融商品といっても、株式・債券・REIT(不動産投資信託)や、金・原油といったコモディティ、これらをプロが運用してくれる投資信託など、他にも多種多様な選択肢があります。そのため、商品一つひとつを吟味しながら選ぶことは至難の業です。

 最適な商品選びは、個々人の資産状況やライフプラン、投資の知識や経験によって変わります。資産運用を始める前に「自分の現状」を確認することが必須です。

 現状把握ができたら「自分にとって」最適な商品を探して投資を始めましょう。

金融商品を見分けるポイントは、「安全性・収益性・流動性・手数料・実績」

 何となく投資をするのではなく、投資知識を蓄えつつ経験を積むためにも、自分の投資目的にマッチする商品を選ぶにはどうするべきかを「考えること」が重要です。

 今回は、私がアドバイザーとして、まず最初に押さえたいポイントとして、投資元本割れの可能性を考える「安全性」、投資収益の目安(期待値)を考える「収益性」、現金化して使うために必要な期間を考える「流動性」、運用するために支払う「手数料」、類似商品とのパフォーマンスを比較する「実績」から、あなたにとって最適となる金融商品の良しあし、その見分け方を説明します。

金融商品の見分け方1:「安全性」は商品のリスクで判断する

 投資するときに一番気になるのは、投資で失敗してお金が減る可能性ではないでしょうか? お金を減らしたくて投資をする人はいませんが、投資をする上では元金が減る可能性を0%にすることはできません。

 しかし、投資した商品の価格が変動することで、資産を増やすこともできるのです。投資の基本中の基本ですが、まずはこのリスク(価格変動の幅)を知ることが、商品の安全性がどの程度かを判断する、一番の材料です。

 このリスクは、高いか低いかで判断するのではなく、自分が許容できる範囲の価格変動かどうかで判断しましょう。

金融商品の見分け方2:「収益性」はリターン(期待収益)を見極める

 投資では預金と違って、毎年決まった収益が約束されているわけではありません。つまり、「このぐらいの収益が期待できる」という意味で「リターン」が表現されているわけですが、期待以上の場合もあれば、期待以下の場合もあるということです。

 リスクが低い(ローリスク、価格変動の幅が少ない)商品ならば、リターンも低くなる傾向にあります。高いリターンを期待するなら、リスクも高くなりますが、投資では「リスクが高い=悪い」ということにはなりません。逆にあまりにもリターンが低ければ、投資するまでもなく預金で良いという可能性もあります。

 リターンは、許容できるリスクや投資資金の使途、投資可能な期間などから逆算して期待できる収益を上限とし、適度なバランスを見極めましょう。

金融商品の見分け方3:「流動性」は将来の支出や目標を考慮する

 資産形成のやり方というと、長期積立投資がよく推奨されます。ずっと継続し続けることが理想ですが、不動産の頭金や子どもの教育費、親の介護費用など、現時点では予期せぬ支出が発生することも考えられます。また一定の目標をたてておき、運用した成果を実感することで、モチベーションを上げることにもつながります。

 お金が必要な時に現金化しづらい商品だと、いざというときに自由に使えなくて困りますし、株式など値動きの大きい商品の場合は、売り時と現金化する時がうまくマッチしてくれるとは限らないので、株価が高い(=利益が出ている)うちに、少しずつ売却しておくことがおすすめです。

 金融商品は購入時には解約に必要な期間や条件が記載されているので、必ずチェックしましょう。また価格変動の大きな商品を売却する時は、余裕を持って対応しましょう。

金融商品の見分け方4:「手数料」は類似商品の比較や労力から検討する

 金融商品の手数料は、基本的に商品の売買時に支払いますが、手数料を強く意識する必要がある場合のほとんどが、投資信託のようなプロに運用を任せる金融商品です。投資信託は保有中にも日割で、商品価格から運用にかかる手数料が差し引かれています。

 日経平均株価のような参考指数に投資する「インデックスファンド」なら手数料が低い商品を選べば問題ないでしょうが、特定のテーマや独自の手法などで運用する「アクティブファンド」の場合には、よくよく考えて商品を選ぶ必要があります。

 販売用資料やレポートで投資先を確認して、類似商品と比較することはもちろんですが、ベンチマークとたいして変わらない運用をしている商品、運用方法がよく分からない商品、期待リターンに対して手数料が高すぎる商品などは論外です。

 もちろん、運用中の手数料を自分で調べる労力などを考慮して、手数料を払っても良いと思える水準は、人それぞれだと思います。

 手数料は、高く払ったから良い商品というわけではありません。むしろ手数料をかけない運用を中心に考えること(費用の削減=収益の増加)で運用成果に良い結果をもたらしてくれるでしょう。

金融商品の見分け方5:「実績」は過去3年以上をみて評価する

 過去の値動きが良かったからといって将来の値動きが約束されるわけではないことは、当然なので参考にはなりませんが、逆のパターンはとても参考になります。つまり、過去の値動きが良くなかった場合です。

 例えば、ベンチマークと同じような値動きをしているのに、運用コスト分負けている。投資対象の近いインデックスと比較しても負けている。想定される値動きをしていない。想定していたよりもリスク(価格の変動幅)が大きいなど。

 特に投資信託などは、新規設定されたとしても本当に想定した運用がされるのかどうか、また運用方針通りの運用であっても自分の想定と合っているかどうかは分かりません。債券は満期保有すれば額面金額が返ってきますが、満期のない株式やREITも上場したばかりの時は様子を見た方が良いでしょう。

 実績のない商品をあなたが試してみる必要はありません。過去の実績は自分の投資目的や方針にマッチするかどうか評価するための指標になります。