オン・セミコンダクター
1.2023年12月期1Qは0.8%増収、12.7%営業減益
オン・セミコンダクター(以下オンセミ)の2023年12月期1Q(2023年1-3月期、以下今1Q)は、売上高19.60億ドル(前年比0.8%増)、営業利益5.65億ドル(同12.7%減)となりました。
分野別売上高を見ると、自動車は9.860億ドル(前年比38.0%増)と前4Qと比較してもほぼ横ばいでした。パワー半導体(特に最新型のSiCパワー半導体)と自動運転用イメージセンサが順調でした。
産業用は5.562億ドル(同2.4%増)となり、前4Q比でほぼ横ばいでした。これもパワー半導体とイメージセンサが堅調でした。産業向けイメージセンサでは、オンセミにとって最新の8メガピクセル版を出荷開始しましたが、これがセキュリティ、監視等に採用されています。従来の1~2メガピクセル版に比べ、平均単価が最大で2.5倍になるため、今後オンセミの業績への貢献が期待されます。
一方で、その他は、4.175億ドル(同39.3%減)と前年比、前4Q比ともに大幅減となりました。不採算事業からの撤退が続いています。
事業別売上高を見ると、最も売上高が大きいパワー・ソリューションズ・グループが10.128億ドル(同2.6%増)、前4Q比でも微減となりました。SiCパワー半導体の出荷は会社予想を上回った模様であり、前4Q比約2倍となりました(従来型パワー半導体は減少)。SiCパワー半導体の増加による利益貢献も大きかった模様です。
インテリジェント・センシング・グループは3.542億ドル(同31.7%増)となり前4Q比で横ばいでした。この売上高の95%が自動車向け、産業向けです。
一方、アドバンスド・ソリューションズ・グループは5.927億ドル(同14.0%減)となり前4Q比でも減収でした。不採算の民生品向け中心に撤退を進めている事業がこの事業区分に多いことを反映しています。
また、グローバルファウンドリーズから買収したアメリカニューヨーク州イーストフィッシュキルの半導体工場の所有権が、今年2月にオンセミに移りました。この工場は、オンセミにとってアメリカ最大の工場となり、主力製品であるイメージセンサ、SiCパワー半導体、アナログ半導体などを生産する見込みです。ただし、当初の想定よりも運営コストが高くなっており、これが今1Qの利益率悪化要因の一つになっています。
表5 オン・セミコンダクターの業績
表6 オン・セミコンダクターの分野別売上高(四半期ベース)
グラフ2 オン・セミコンダクターの分野別売上高
表7 オン・セミコンダクターの事業別売上高(四半期ベース)
2.今2Qは今1Q比で緩やかな業績回復へ
今2Qの会社側ガイダンス(予想レンジの平均値)は、売上高20.25億ドル(前年比2.9%減)、営業利益6.18億ドル(同5.8%増)です。今1Q比でわずかながら増収増益となる見込みです。会社側は自動車向け、産業向けは今1Q比で増収となり回復が期待できるとしています。
一方で、不採算事業、非中核的事業からの撤退が続くため、その他向けは減収が続く見通しです。
楽天証券では、オンセミの2023年12月期業績予想を前回の売上高89億ドル、営業利益27億ドルから売上高86億ドル(同3.3%増)、営業利益27億ドル(同14.4%増)へ、2024年12月期を売上高110億ドル、営業利益36億ドルから売上高108億ドル(同25.6%増)、営業利益36億ドル(同33.3%増)へ修正します。非中核事業からの撤退が続くことを織り込みましたが、SiCパワー半導体、イメージセンサの採算が良いため、営業利益は修正しません。
イーストフィッシュキル工場については、会社側では稼働率上昇と追加投資で採算を引き上げることを目論んでいます。
表8 オン・セミコンダクターの分野別売上高(年度ベース)
表9 オン・セミコンダクターの事業別売上高(年度ベース)
3.今後6~12カ月間の目標株価は前回の120ドルを維持する
オン・セミコンダクターの今後6~12カ月間の目標株価は、前回の120ドルを維持します。楽天証券の2024年12月期予想EPS5.71ドルに、成長性とリスクの両方を考えて、想定PER20~25倍を当てはめました。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:シノプシス(SNPS、NASDAQ)、オン・セミコンダクター(ON、NASDAQ)