毎週金曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:シノプシス(SNPS、NASDAQ)、オン・セミコンダクター(ON、NASDAQ)
シノプシス
1.2023年10月期2Qは9.1%増収、21.2%営業減益
シノプシスの2023年10月期2Q(2023年2-4月期、以下今2Q)は、売上高13.95億ドル(前年比9.1%増)、営業利益2.87億ドル(同21.2%減)となりました。売上高と営業利益は今1Qよりわずかながら増加しており、業績は堅調でした。一方、前年比では売上高は9.1%増と前年を上回りましたが、営業減益となりました。前2Qは採算が良いデザインIP(共通化できる設計部分(インターフェース、セキュリティなど)の設計図を外販する)の売上高が大きかったためです。
今2Qのプロダクトグループ別売上高を見ると、EDA(Electronic Design Automation。ロジック半導体設計システム)は9.008億ドル(同14.5%増)と順調に伸びました。一方で、デザインIPは3.352億ドル(同3.8%減)と減収となりました。前述のように、これが利益面でのマイナス要因となりました。またソフトウェア・インテグリティ(他社製品を含む各種のセキュリティ管理ソフト)は1.321億ドル(同17.0%増)とこれも順調に伸びました。
会社側の見方では、民生品向け中心に半導体デバイス市場は厳しい状況が続いていますが、半導体景気の回復を見込んだ半導体の設計需要が多くなっています。2023年4月末の全社受注残高は73億ドルとなり、過去最高だった2022年4月末73億ドルと並びました。
また、シノプシスが約10年前から自社のソフトウェアに積極的にAIを搭載してきたことが顧客から評価されています。今のロジック半導体、特に一桁ナノ台の微細化が進んだロジック半導体は、優秀な設計用AIがなければ設計できないか、大幅に時間がかかるようになっています。
表1 シノプシスの業績
表2 シノプシス:プロダクトグループ別売上高(四半期、新区分)
表3 シノプシスの地域別売上高(四半期)
グラフ1 シノプシスの受注残高
2.楽天証券では2024年10月期二桁増収増益の見方を維持
今2Q決算発表時の今3Q会社予想(予想レンジの平均値)は、売上高14.80億ドル(前年比18.6%増)、営業利益3.27億ドル(同39.7%増)です。今3Qは納入が多いため、前年比では大きく伸びる見込みです。
また、2023年10月期通期会社予想業績(予想レンジの平均値)は、売上高58.10億ドル(前年比14.3%増)、営業利益12.67億ドル(同9.0%増)となっており、今1Q決算発表時予想の売上高58.00億ドル、営業利益12.33億ドルとほぼ同水準になりました。
楽天証券では、2023年10月期予想は会社予想と同水準、2024年10月期予想は前回予想の売上高68.00億ドル(同17.0%増)、営業利益15.00億ドル(同18.1%増)を維持します。
表4 シノプシス:プロダクトグループ別売上高(年度、新区分)
3.今後6~12カ月間の目標株価を前回440ドルから520ドルに引き上げる
シノプシスの今後6~12カ月間の目標株価を前回の440ドルから520ドルに引き上げます。
業績だけを見ると、シノプシスの50倍台後半のPER(株価収益率)には割高感があります。ただし、シノプシスが積極的に設計用AIを自社製品に取り入れてきたことから、株式市場ではシノプシスをAI関連と位置付ける見方があるようです。AIを取り入れてすでに時間が経過しているため、AIによってシノプシスの業績が大きく変化することはないと思われますが、PERは高い状態が続くと予想されます。
そのため、2024年10月期の楽天証券予想EPS(1株当たり利益)8.92ドルに今の評価であるPER55~60倍を当てはめました。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。
オン・セミコンダクター
1.2023年12月期1Qは0.8%増収、12.7%営業減益
オン・セミコンダクター(以下オンセミ)の2023年12月期1Q(2023年1-3月期、以下今1Q)は、売上高19.60億ドル(前年比0.8%増)、営業利益5.65億ドル(同12.7%減)となりました。
分野別売上高を見ると、自動車は9.860億ドル(前年比38.0%増)と前4Qと比較してもほぼ横ばいでした。パワー半導体(特に最新型のSiCパワー半導体)と自動運転用イメージセンサが順調でした。
産業用は5.562億ドル(同2.4%増)となり、前4Q比でほぼ横ばいでした。これもパワー半導体とイメージセンサが堅調でした。産業向けイメージセンサでは、オンセミにとって最新の8メガピクセル版を出荷開始しましたが、これがセキュリティ、監視等に採用されています。従来の1~2メガピクセル版に比べ、平均単価が最大で2.5倍になるため、今後オンセミの業績への貢献が期待されます。
一方で、その他は、4.175億ドル(同39.3%減)と前年比、前4Q比ともに大幅減となりました。不採算事業からの撤退が続いています。
事業別売上高を見ると、最も売上高が大きいパワー・ソリューションズ・グループが10.128億ドル(同2.6%増)、前4Q比でも微減となりました。SiCパワー半導体の出荷は会社予想を上回った模様であり、前4Q比約2倍となりました(従来型パワー半導体は減少)。SiCパワー半導体の増加による利益貢献も大きかった模様です。
インテリジェント・センシング・グループは3.542億ドル(同31.7%増)となり前4Q比で横ばいでした。この売上高の95%が自動車向け、産業向けです。
一方、アドバンスド・ソリューションズ・グループは5.927億ドル(同14.0%減)となり前4Q比でも減収でした。不採算の民生品向け中心に撤退を進めている事業がこの事業区分に多いことを反映しています。
また、グローバルファウンドリーズから買収したアメリカニューヨーク州イーストフィッシュキルの半導体工場の所有権が、今年2月にオンセミに移りました。この工場は、オンセミにとってアメリカ最大の工場となり、主力製品であるイメージセンサ、SiCパワー半導体、アナログ半導体などを生産する見込みです。ただし、当初の想定よりも運営コストが高くなっており、これが今1Qの利益率悪化要因の一つになっています。
表5 オン・セミコンダクターの業績
表6 オン・セミコンダクターの分野別売上高(四半期ベース)
グラフ2 オン・セミコンダクターの分野別売上高
表7 オン・セミコンダクターの事業別売上高(四半期ベース)
2.今2Qは今1Q比で緩やかな業績回復へ
今2Qの会社側ガイダンス(予想レンジの平均値)は、売上高20.25億ドル(前年比2.9%減)、営業利益6.18億ドル(同5.8%増)です。今1Q比でわずかながら増収増益となる見込みです。会社側は自動車向け、産業向けは今1Q比で増収となり回復が期待できるとしています。
一方で、不採算事業、非中核的事業からの撤退が続くため、その他向けは減収が続く見通しです。
楽天証券では、オンセミの2023年12月期業績予想を前回の売上高89億ドル、営業利益27億ドルから売上高86億ドル(同3.3%増)、営業利益27億ドル(同14.4%増)へ、2024年12月期を売上高110億ドル、営業利益36億ドルから売上高108億ドル(同25.6%増)、営業利益36億ドル(同33.3%増)へ修正します。非中核事業からの撤退が続くことを織り込みましたが、SiCパワー半導体、イメージセンサの採算が良いため、営業利益は修正しません。
イーストフィッシュキル工場については、会社側では稼働率上昇と追加投資で採算を引き上げることを目論んでいます。
表8 オン・セミコンダクターの分野別売上高(年度ベース)
表9 オン・セミコンダクターの事業別売上高(年度ベース)
3.今後6~12カ月間の目標株価は前回の120ドルを維持する
オン・セミコンダクターの今後6~12カ月間の目標株価は、前回の120ドルを維持します。楽天証券の2024年12月期予想EPS5.71ドルに、成長性とリスクの両方を考えて、想定PER20~25倍を当てはめました。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:シノプシス(SNPS、NASDAQ)、オン・セミコンダクター(ON、NASDAQ)
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