6月のビットコインイベント

NEW! 6月5日 SEC、バイナンスを提訴
NEW! 6月6日 SEC、コインベースを提訴
NEW! 6月15日 ブラックロック、BTC現物ETFを申請

*2023年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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6月の振り返り

6月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

急反発

 6月のBTC(ビットコイン)は大きく上昇。

 3月から続いた2万5,000~3万1,000ドルのレンジをいったん下抜けたが、そこから急反発、レンジの上限を上抜け、年初来高値を更新、折からの円安も手伝って、450万円にワンタッチした。

 米国債のデフォルトが回避され、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ見送りが確実視される中、BTCは2万7,000ドル台で底堅く推移していたが、6月5日に米SEC(証券取引委員会)が世界最大手の交換所バイナンスとCEOのCZ氏らを提訴したことで2万5,000ドル台に急落した。

 翌6日にSECは米最大手交換所コインベースも提訴、悪材料出尽くし感もあり相場はいったん反発したが、ゲンスラーSEC委員長はCNBCで「これ以上、デジタル資産は要らない」「暗号資産業界は詐欺師やねずみ講だらけだ」と反暗号資産姿勢を鮮明に打ち出し、またSECに「証券」に該当すると名指しされた暗号資産の取扱いを停止する交換所が続出し、BTCはじりじりと値を下げていった。

 6月FOMCでは予想通り利上げが見送られたが、参加メンバーによる金利予想、いわゆるドットチャートで年内2回の利上げが想定され、議長も今回の利上げ見送りは停止でなくペースダウンだと示唆、「タカ派スキップ」という見方からBTCはレンジの下限を下抜け、2万4,000ドル台半ばに値を下げた。

 しかし、世界最大の運用会社ブラックロックがBTC現物ETF(上場投資信託)を申請すると風向きが一変する。続いてドイツ銀行やクレディ・アグリコルが暗号資産カストディを申請、フィデリティやシタデル、チャールズシュワブが出資する交換所EDXが始動、現物ETFの申請も相次ぐなどさまざまな形態での金融機関の暗号資産参入の動きが続き、BTCは一気に年初来高値を更新した。

 ただし、3万ドルを超えた水準では2021年から2022年に塩漬けになったロングポジションのやれやれ売りもあり、やや伸び悩んでいる。

急騰した理由

BTC現物ETFの重要性

 この急騰を理解するには、少し予備知識が必要だ。個人を中心に発展したBTC市場は法人、特に機関投資家マネーが流入すれば大化けすると言われてきた。2020年後半から2021年にかけてヘッジファンドやファミリービジネスなど米投資家の一部が参入してブームに至ったが、銀行や証券、保険や年金など伝統的な金融機関はBTCの保管方法に問題があり参入は進まなかった。

金価格推移

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 かつての金でも保管の問題があり、2000年代初頭のETF誕生により金価格は数倍に跳ね上がった。米国でETFが承認されればBTCでも同じことが起こるのではないかと期待されている。実はこのBTC現物ETFを実現させようという試みは2017年ごろから始まっており、Bloombergによれば既に30件以上の申請がなされ、そのいずれも否認もしくは取り下げされている。

 2021年にはカナダで現物ETFが承認され期待が高まったが、米国ではCFTCの監督下にあるCME(シカゴ先物取引所)の先物ベースのETFが承認されたものの、いまだに現物ベースのETFは承認されていない。

ブラックロックの申請

 今回、資産運用最大手のブラックロックが申請したことで、承認の可能性が高まったと期待する声も聞かれる。ではこの申請が通るかと言えば、そんなに容易な話ではなさそうだ。従来よりSECは現物ETFを認めない理由としてカストディと相場操縦を挙げていた。

 前者は徐々に整備されつつあるが、後者はまだ手付かずだ。ブラックロックは、この点をCMEなどとの価格監視協定を盛り込むことでクリアしようとしているが、今までの経緯を見るにそういう問題なのか疑問が残る。

BTCとSECに証券と名指しされたソラナSOL・カルダノADA・ポリゴンMATIC

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 加えて、SECのゲンスラー委員長は暗号資産への締め付けを強めている。ソラナ・カルダノ・ポリゴンといったメジャーな暗号資産を突然「証券」とみなして、バイナンスとコインベースを証券法違反で訴追した。

 後者は昨年から何が証券に該当して何がしないのか基準を明確にしてほしいと嘆願していたのに、これに回答せず、さらに裁判所からの回答指示も拒否しながら、提訴に踏み切る強硬姿勢を見せている。

 上記でも述べた通り、委員長は「これ以上、デジタル資産は必要ない」「暗号資産業界は詐欺師やねずみ講ばかりだ」と業界に対し対決姿勢を鮮明にした。ブラックロックの申請といえども、この委員長がすんなり承認するとは考えにくい。

 SEC委員長がこうしたかたくなな姿勢を見せ始めたのには反暗号資産軍を標榜する上院民主党左派の中心人物ウォーレン議員がいると指摘されている。

 消費者保護の大家である同氏は以前からそうした姿勢を貫いているが、悪いことに民主党の大統領候補ケネディJrや共和党の有力候補デサンティス・フロリダ州知事がバイデン政権のこうした暗号資産への締め付け強化を批判し始めた結果、にわかに暗号資産の取扱いが来年の大統領選挙の争点に浮上してしまい、それ故、ゲンスラー委員長が態度を硬化させたとも指摘される。

 このように、政治問題になったために話が複雑になったのだが、政治問題だからこそ政治力で糸口が見えるかもしれないという希望も生まれつつある。ブラックロックの申請は民主党の有力支持者であるフィンクCEOがゲンスラー委員長の姿勢に同意しないという意思表示ではないかと市場の雰囲気が一変した。

 すなわち、SECが「投資家保護」を理由に暗号資産を実質的に禁止に追い込もうとしても、民主党の支持基盤であるウォール街から異論が噴出し、そんなことにはなりそうにないと市場が安堵(あんど)したことが今回の急騰の背景にあると思われる。

 見方を変えれば、SECから証券とみなされていないBTCは大丈夫だという安心感とも解釈でき、実際時価総額におけるBTCのシェアが5割を超えた。

実際時価総額におけるBTCのシェア(ドミナンス)

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成