アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2023年6月30日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線、いずれも東証プライム上場銘柄。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。

 6月30日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

6月の日経平均は先高観続き上昇基調、米FOMCは昨年3月以降初めて利上げ停止

 6月(5月31日終値~6月30日終値まで)の日経平均株価(225種)は7.5%の上昇となりました。

 米国における利上げ停止観測の強まりや政府の債務不履行回避を受けて、月初から上昇ピッチを速める展開となりました。米国の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC、13、14日)では昨年3月に始まった利上げ局面では初めてとなる利上げ停止を決定し、日本銀行も金融政策決定会合(15、16日)で大規模な金融緩和政策の現状維持を決めました。日米の金融政策決定を受けて、日経平均は一段高となり、19日の取引時間中には高値3万3,772円まで上昇しました。

 その後、経済指標の上振れに伴う米追加利上げ観測の高まり、6月四半期末を控えた機関投資家のリバランス(資産配分の調整)などの動きから、日経平均は一時調整に転じる場面もありました。しかし、先高期待は依然として高く、25日移動平均線(直近25日間の終値の平均値を算出し、その平均値の動きを折れ線グラフで表したもの)近辺では、一時的に割安になった場面を狙って買いを入れる押し目買いの動きが優勢になっています。

 こうした中、ランキングTOP15の株価も総じて堅調な推移となっており、ベルシステム24(6183)を除いて3%以上の上昇となっています。全般的に、ここまでの株価上昇に伴って、ランキング内銘柄の利回り水準はこれまでよりも低下してきている印象があります。

 上昇が目立った銘柄として、日本製鉄(5401)大和工業(5444)日本曹達(4041)などが10%以上の上昇となっています。中国の景気刺激策への期待が高まったことで、鉄鋼や非鉄金属株などの景気敏感株に資金が向かう場面が何度か見られ、日本製鉄や大和工業が大きく上昇しました。大和工業は合弁会社を米国で展開している米ニューコアの株価の大幅上昇も刺激になっています。日本曹達は半導体のフォトレジスト材料を手掛けていることで、産業革新機構がフォトレジスト最大手のJSR(4185)を買収すると発表したことが思惑材料となったようです。

 株価が唯一マイナスサイドとなっているベルシステム24(6183)ですが、コールセンター専業大手で、選挙関連銘柄とも位置付けられていることで、衆議院解散が見送られたことはマイナス材料になったとみられます。

個別材料乏しく、ランキング銘柄は小幅な入れ替えにとどまる

 今回、新規にランクインしたのは、ベルシステム24(6183)、かんぽ生命(7181)三井金属鉱業(5706)の3銘柄です。一方、除外となったのは、TOYOTIRE(5105)双日(2768)JFEホールディングス(5411)となっています。

 前回のランキング13~15位の銘柄が除外され、今回の13~15位銘柄に変更されている格好であり、基本的に大きな変動要因があったわけではありません。ちなみに、除外された銘柄の月間上昇率は、TOYOTIREが12.4%、双日が13.7%、JFEHDが18.9%などとなっています。双日に関しては、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが大手総合商社5社の買い増しに動いていることで、同じ総合商社株として連想買いも入ったようです。

 アナリストコンセンサスと会社計画で配当予想が大きく異なっている銘柄は2銘柄で、日本製鉄(5401)とNIPPON EXPRESS(9147)になります。会社計画ベースでの配当利回りは、日本製鉄が4.66%、NIPPON EXPRESSが3.70%となっており、それぞれアナリストコンセンサスが高い状況にあります。配当計画引き上げの余地はあるでしょうが、それでも、この2銘柄のコンセンサス予想は高過ぎると考えます。

 SBIホールディングス(8473)は、会社側で2024年3月期の配当計画を示していません。アナリストの配当予想は2023年3月期と横ばいになる150円となっています。

今年の日経平均上昇幅はバブル後最大に、短期的な過熱感から再び調整も

 2023年に入ってから、日経平均の上昇幅は6月30日時点で7,094円にまで達しています。1989年のバブル経済崩壊以降、最大の上昇幅だったのは安倍政権の経済政策「アベノミクス」に沸いた2013年の5,896円であり、わずか半年間でこの水準も大きく超過しています。

 6月後半にいったん調整する場面もありましたが、短期的な過熱感は否めず、再び一時的な調整が必要な場面であると感じられます。ここにきて、米国では想定以上に好調な景気指標も目立ってきていますので、利上げ再開への警戒感が相場の上値を抑える要因になるものと考えます。

 また、海外投資家にとっては、7月からは下半期に入ることになり、ポートフォリオ(資産構成)の入れ替えなどが活発になってくるとみられます。上昇ピッチの速い日本株には利益確定売りの動きが強まる可能性を警戒したいところです。

7月後半の決算発表ではPBR1倍割れ銘柄の株主還元策に注目!

 7月後半からは、4-6月期の決算発表がスタートします。東京証券取引所では3月末に、PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に対する改善施策を開示するように要請しています。4~5月の決算発表では、改善施策の公表が時間的に準備できなかった銘柄も多いとみられるため、今回の4-6月期決算発表と同時に公表する銘柄が増えてきそうです。

 ここからは、PBR1倍割れ銘柄への注目度を高めておくべきでしょう。主な施策として、自社株買いの実施や大幅な増配アナウンスなどが中心になる可能性は高く、今後、配当利回りランキングなども大幅に銘柄が入れ替わってくる公算があります。