2023年いっぱいで廃止が決まっているジュニアNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)。ただ、2023年9月末日までは新規口座開設ができ、2023年12月末日までは新規の買い付けも可能です(受渡日ベース)。

 さらに、これまで「18歳になるまでは利益確定はできても払い出しは不可」だった制度が、廃止が決まってからは、18歳を待たずして払い出しが可能になりました(詳しくは「さよならジュニアNISAパパママ投資座談会」または日本証券業協会のホームページをご覧ください)。

 新規口座開設できる期限が9月までとはいえ、お子様が18歳になるまでは運用が続けられるというメリットがあります。そこで、ジュニアNISA枠を駆け込み利用したい方向けに、「今ジュニアNISAをしている人はどんな銘柄を持っているのか」人気ランキングをご紹介します(出所:2023年6月23日時点の、楽天証券内の銘柄保有者数ランキング)。

 また、資産運用のプロフェッショナルである、リーファス株式会社・西崎 努さんに、ランキングの傾向を解説していただきました。ジュニアNISAならではの傾向もみられ、興味深い考察になっています。ご自身の投資知識や経験、そして資金力を改めて見直し、ジュニアNISAの駆け込み活用を検討してみてください!

[個別株式編]ジュニアNISAで持ってる人が多い順ランキング

順位 ジュニアNISA 一般NISA 楽天証券全体
1位 オリックス(8591) オリックス(8591) **楽天グループ(4755)
2位 ヤマダHD(9831) 三菱UFJ FG(8306) オリックス(8591)
3位 三菱UFJ FG(8306) 日本たばこ産業(2914) 三菱UFJ FG(8306)
4位 ENEOS HD(5020) ENEOS HD(5020) **イオン(8267)
5位 日本たばこ産業(2914) **楽天グループ(4755) ENEOS HD(5020)
6位 *ビックカメラ(3048) **イオン(8267) 日本たばこ産業(2914)
7位 *三菱HCキャピタル(8593) ヤマダHD(9831) トヨタ自動車(7203)
8位 *KDDI(9433) ソフトバンク(9434) **ANA HD(9202)
9位 トヨタ自動車(7203) トヨタ自動車(7203) ヤマダHD(9831)
10位 ソフトバンク(9434) **日産自動車(7201) **日本航空(9201)
*ジュニアNISAのみに登場する銘柄に*を、ジュニアNISAでは登場しない銘柄に**をつけています
出所:2023年6月23日時点の、楽天証券内の銘柄保有者数ランキング

西崎努さんが分析!ジュニアNISA、人気上位は「子どもに残したい」銘柄

 一般NISA、ジュニアNISAのランキングを見比べてみましょう。どちらを利用した場合でも高配当銘柄が人気ですが、親が投資する一般NISAの方がジュニアNISAよりもやや値上がりを狙った投資も散見されます。全体の保有残では配当銘柄に加えて優待銘柄を購入している人が多いことから、非課税という制度のメリットをどう生かすか、自分の資産形成と、子どもたちに残す資産の違いを考えた上で投資しているようにみえます。

 ちょうど一般NISAが始まった頃は、リーマンショック以降大きく下落していた世界株式が持ち直してきていて、アベノミクスの効果もあり日経平均株価が大きく上昇している頃でした。そういう意味では、ジュニアNISA対象のお子様がいる世代は「投資の痛み」を少なからず知っている世代とも言えます。

 自分の資産形成でリスクの高い投資に手を広げることは、投資知識だけでなく精神的な負担も大きくなります。そうした理由や投資可能金額の制限を鑑みると、株式銘柄の人気ランキングからは、NISAで個別株式を投資する際には、値上がり益を非課税にすることよりも、高い配当金への非課税へ注目した人が多いことが感じ取れます。

 一つひとつの銘柄には業績や将来性など各人の意見があると思いますが、長期的に保有ができて非課税のメリットが生かせるという点を満たせていれば良いと思います。このランキングは、おおむね、その点をカバーしている銘柄が多いランキングであると考察します。

[投資信託編]ジュニアNISAで持ってる人が多い順ランキング

順位 ジュニアNISA 一般NISA つみたてNISA
1位 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
2位 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・VTI) 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・VTI)
3位 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・VTI) eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
4位 eMAXIS Slim 先進国株式インデックス eMAXIS Slim 先進国株式インデックス 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・VT)
5位 eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本) ひふみプラス eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
6位 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・VT) <購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド **eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
7位 *iFreeレバレッジNASDAQ100 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・VT) MAXIS Slim バランス(8資産均等型)
8位 eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) **ニッセイ日経225インデックスファンド eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
9位 ひふみプラス eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本) <購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド
10位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド **eMAXIS Slim 新興国株式インデックス ひふみプラス
*ジュニアNISAのみに登場する銘柄に*を、ジュニアNISAでは登場しない銘柄に**をつけています
出所:2023年6月23日時点の、楽天証券内の銘柄保有者数ランキング

西崎努さんが分析!資金・知識・意欲がある家庭が、レバレッジ投信に挑戦できる

 ジュニアNISA、一般NISA、つみたてNISAと、3種類の「NISA」での投資信託人気ランキングを見比べてみましょう。上位はそれほど大きな差異はなく、低コストの国内外株式へ投資するインデックス投信が中心に選ばれていることがわかります。

 NISAで投資信託を購入する方の多くは、積立投資での資産形成を目的としているでしょう。そのため、ランキング上位に来ている銘柄は、いずれも「低コスト」「分散投資」「値上がり期待」で投資をする商品としては最適だといえるでしょう。

 ただよくみると、それぞれのNISAが開始された時期(一般NISA2014年1月~、ジュニアNISA2016年1月~、つみたてNISA2018年1月~)によって選ばれた銘柄に多少の違いがみうけられ、後に始まった制度ほど、より低コストかつ海外へ投資する商品が選ばれている傾向がみられます。

 また、ジュニアNISAでは、レバレッジ商品も選ばれていることが特徴的です。これは、ジュニアNISAに資金を投入するだけの資金力がある家庭が多いという理由が考えられます。

 ジュニアNISAという制度を知っている、という知識面から見ても、自分自身も一般NISAやつみたてNISAでの投資経験がある方が多く、それだけに投資知識も豊富である方が多いことがうかがえます。

 その資金力と投資知識で、レバレッジの効いた商品へ挑戦して、少しでも増やしてやりたいという目的意識があることが背景にあるのではないでしょうか。これはジュニアNISAが、自分のためではなく、子どもたちのための投資として、客観的かつ長期的な目線で考えやすいことも、影響しているのかもしれません。

ラストイヤー!ジュニアNISA活用の注意点

 もし2023年に駆け込みでジュニアNISAを使って買う場合は、二つの点に注意が必要です。

・非課税で新規投資ができるのは2023年12月末まで(受渡日ベース)であること
・18歳以降はNISA口座ではなく、一般口座または特定口座に移管されること

 この点にだけ注意しておけば、今からでも駆け込みで投資をしても問題ありません。今のうちに投資をしておけば、お子様が18歳になるまでは非課税口座での投資が可能という点は魅力です。

 今の株価水準に不安があれば、より資産を分散した商品を、複数選べば良いでしょう。ただし長期投資をすることを考えれば、そこまで神経をとがらせなくても、ご自身の目的に合った銘柄をいくつか選べばよいと思います。また、保有期間中も目を離さず、価格が上昇したタイミングで払い出ししましょう。

 大切なのは、投資する資金が余裕資金であり、長期投資ができることです。つまり、今の家計に余裕があり、まずは自分(もしくは家庭)の資産形成をするための投資ができていて、さらに子どもたちへの資産形成をする余裕があることが前提となります。

 無理をする投資は、長く続けられなかったり、銘柄選びを焦って後悔することもあるため、自身の家計や将来の収入などをよく吟味して、十分に余力がある、と確信できた人は、ジュニアNISA・ラストイヤーのスタートを検討してはいかがでしょうか。

 2024年以降は新しいNISA制度が始まりますが、そのポイントは「非課税投資枠の拡大」「非課税保有期間が無期限」「売却した投資枠が翌年以降に再利用可能」という点。そして「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が併用できることも大きな変更の一つです。

 これまでとは制度の内容が大きく変わりますが、投資の判断基準はこれまでと同じです。投資目的や投資期間、誰のための投資なのかを考えつつ、自分の許容範囲内でのリスクや金額を理解した上でうまく活用していきましょう!

リーファス株式会社
西崎 努さん
2007年に日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社、CFP資格も保有する全国トップセールスとして活躍し、シンガポール・ロンドンでの海外研修も経験。帰国後は新規・既存の上場会社や不動産投資法人(REIT)の公募増資等の株式引受業務に従事する。2017年4月に独立し、リーファス株式会社を設立。同年10月に金融商品仲介業の登録を受ける。トウシルにて『やってはいけない資産形成』『1万円で買える!今月の米国株高配当銘柄』などの人気連載を執筆。