今日の為替ウォーキング
今日の一言
全てを知れば、全てを許すことになる - デール・カーネギー
You May Be Right
安定の円安だ。日本と世界の国々(中国を除いて)との金利差はどんどん広がる一方だ。原材料が値上がりしても、企業は消費者に価格転嫁できるようになった。円安による収益悪化を悩む必要はない。訪日外客数でインバウンド需要も本格的に回復している。誰も円安に不満はない。円安が続いてほしいと思っている。この安定を脅かすものがあるとすれば、おそらく為替介入くらいだろう。
マーケットは政府・日銀の介入の本気度を試しているようだ。神田財務官は、今週になって2回目の円安牽制発言をした。ドル/円はいったん下落したが、すぐに144円台に戻している。
「行き過ぎた動きには適切に対応する」と財務官は警告している。確かにドル/円は着実に円安が進んでいるが、1日の円安としては0.50円程度。これを「行き過ぎた動き」と断定できるのかは疑問。むしろ、ファンダメンタルズを反映した秩序ある円安と評するべきだろう。シントラのECBフォーラムでも、改めて日米欧の金融政策の方向性の大きな違いが確認された。
為替介入に関して、神田財務官は「特定の水準を念頭に置いているわけではない」と述べている。別の見方をするならば、22年9月に24年ぶりの円買い介入を実施した145円台で再び介入した場合、値動きよりも水準を考えていることになる。これがなぜ問題かというと、「為替レートは市場で決定されるべき」というG20の合意を破ることになってしまうからだ。財務省は、介入の大義名分が立つような「急激な円安」を待っているかもしれない。
2022年10月に行われた為替介入のインパクトは確かに強大だった。しかし円安の進行を食い止めるのが精一杯で、円安トレンドを変える力はなかったのだ。ドル/円のトレンドが本格的に円高に切り替わったきっかけは、日銀が12月の会合でYCC(イールドカーブ・コントロール)政策の変動幅拡大を通して実質上の利上げに踏み切ったことである。植田総裁が決断しない限り、円安相場は続く可能性は高い。