止まない利上げ

 世界の多くの中央銀行はインフレの息の根を止めるため未だ利上げを繰り返しています。

 しばらく利上げを見合わせていたオーストラリアとカナダの中銀が利上げを再開したのに加え、欧州中央銀行、英国、スイス、ノルウェー、トルコなどの中銀が揃って利上げしています。

米国の政策金利の見通し

 FRBは米国の中央銀行は連邦準備制度理事会です。先の6月14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では過去1年半で初めて利上げが見送られました。

 これをもって「すわ利上げ打ち止めか?」と考えるのは間違っていると思います。FRBは今後一回おきのミーティングで0.25%の利上げを行うことをシグナルしています。言い直せば、均してみれば毎回0.125%のペースで利上げを継続するのと同じ効果があるということです。

 FRBメンバーへのアンケート調査を集計した経済予想サマリーでは2023年末のフェデラルファンズ・レートは5.6%というコンセンサスになっています。それは年内にあと2回利上げがあるということに他なりません。

円安の理由

 このところ為替は円安に振れています。その理由は世界の中央銀行が利上げする中で日銀だけが緩和的なスタンスを堅持しているからです。

 円安は輸出企業にとってプラスですのでこのところ日経平均も好調です。

 しかし株高による資産効果は限定的と考えるべきだと思います。その理由は家計部門の金融資産構成を見ると日本では株式・投信が占める割合は13%に過ぎないからです。米国の場合、それは45%です。

米国の第2四半期決算は楽観できない

 一方、昨今のドル高は米国の輸出企業の業績が苦しくなることを意味します。第1四半期の決算カンファレンスコールでは為替のことは殆ど話題に上りませんでした。それもあってアナリストのS&P500指数のコンセンサスEPS予想は少し上昇しました。これは楽観的過ぎると思います。つまり7月半ばから始まる決算発表シーズンは要注意だということです。

株式バリュエーションを決定する二大要素はいずれも悪い方向へ

 株式のバリュエーションは(1)金利と(2)企業業績によって決定されます。その意味では世界の政策金利が未だ引き上げられているということは悪い材料です。なぜなら金利と株式バリュエーションはシーソーの関係にあり金利が上がっている局面では株式の理論価値は下がらなければならないからです。

 加えて企業業績面では上に述べたようにドル高がもたらす業績への悪影響が心配されます。

金融コンディションについて

 インフレを退治する即効薬は金融コンディションをタイト(緊縮的)にすることです。金融コンディションとは「おカネの借りやすさ」を指します。そしてそれの端的な指標と考えられているのが株価指数です。株価指数がどんどん上がっている状態では、金融コンディションはタイトだとは結論付けられません。

 するとFRBは意図的に株安を演出することで金融コンディションをタイトな方向へ持ってゆく可能性もあるわけです。

 FRBがそうした非常手段を講じるかどうかは今後のインフレにかかっています。もしインフレがしつこく高止まりするようならFRBは株価のトークダウンを始めると覚悟すべきです。

 なお、これは今回だけに限った事ではなく、景気拡大の最終局面ではいつでも話題になるお定まりのコースです。

 従って昨今の株高に関しては余り有頂天になるべきではありません。