李強首相、景気対策に危機感にじむ

 中国経済を統括する李強(リー・チャン)首相が6月16日、国務院常務会議を主催し、「経済の持続的回復を推進するための、一連の政策措置を巡る研究」を最初の議題として取り上げました。李氏がこのテーマを国務院常務会議という、政府(内閣)にとって最も重要な定例会議で取り上げること自体、中国経済の現状がいかに深刻であるかを物語っています。

 李強首相は次のように語りました。

「昨今、中国経済は全体的に回復基調にある。これまでに打ち出した政策措置が実施されるに伴い、市場の需要も徐々に回復してきている。生産供給も持続的に増加し、物価や雇用も全体的には安定している。質の高い発展も着実に推進されている」

 ここまでは、前述の付報道官が提起した5点と全く同じ内容であり、目新しさはありません。李首相は続けます。

「と同時に、外部環境はより一層複雑且つ深刻化しており、低迷する国際貿易、投資などは、中国経済の回復プロセスに直接的に影響する」

 李氏が言及した「直接的に」というのは重い言葉です。それだけ、中国政府として、世界経済の伸び鈍化を、中国経済の回復にとってのリスク要因と見なしている現状が見て取れます。

 李氏は、中央政府として(1)マクロコントロールを強化、(2)有効な需要を拡大、(3)実体経済を強大化、最適化、(4)重点分野のリスク回避、予防、という4点に焦点を当て、対策を指示しました。その上で、「すでに条件がそろった政策は迅速に打ち出し、着実に実施すべきだ。政策の蓄えを増やし、政策の総合的効果を最大限に発揮すべきだ」と部下たちに指示を出しています。

 景気を回復させるための危機感がにじみ出る指示だと解釈しました。4点は、3月に発足した「李強施政」を踏襲するものですが、これまで以上に、「中央政府としてやれることは全て、すぐにやれ」ということなのでしょう。それらが6月の統計結果にどう反映されるか、引き続き、中国経済の動向を密に観察し、適宜検証していきたいと思います。