国家統計局の現状認識
上記の数値を、当事者である国家統計局はどう認識しているのでしょうか。中国経済に限ったことではありませんが、現状や統計そのものよりも、当事者の「認識」こそがより重要であり、そこから今後の情勢を見極めるべきと思います。
6月15日、同局の付凌晖(フー・リンフイ)報道官が記者会見を開き、統計結果が反映する経済情勢に対する当局の認識を述べました。
付報道官は次のように足元の経済動向を描写します。
「5月の経済運営は全体的に回復の態勢を継続している。生産や需要を巡る主要指数が前年同月比でいくらか低下している理由として、昨年のこの時期の数値が高くなった経緯が影響している。昨年4月、国内経済はコロナの感染拡大で比較的大きな影響を受けた。昨年5月以降の経済は明らかに回復の態勢を示したため、関連数値も明らかに上がっていた」
確かに、昨年の統計をみると、4月の工業生産、小売売上高、調査失業率は、上海市におけるロックダウンなどの影響を受け軒並み悪化し、5月になると、いずれも回復している経緯が見て取れます。故に、今年の5月は、4月に比べると、前年同月比で数値が思ったほど伸びていない、というのが統計局の弁明ということなのでしょう。
2022年の主要経済統計
2022年 5月 |
2022年 4月 |
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工業生産 | 0.7% | ▲2.9% | |||
小売売上高 | ▲6.7% | ▲11.1% | |||
固定資産投資(1~5月) | 6.2% | 6.8%(1~4月) | |||
不動産開発投資(1~5月) | ▲4.0% | ▲2.7%(1~4月) | |||
調査失業率(除く農村部) | 5.9% | 6.1% | |||
同25~59歳 | 4.5% | 5.3% | |||
同16~24歳 | 18.4% | 18.2% | |||
中国国家統計局の発表を基に筆者作成。数字は前年同月比。▲はマイナス |
付報道官は、足元の経済に関して、(1)生産供給が持続的に増加、(2)消費、投資は徐々に回復、(3)対外貿易の強靭(きょうじん)性は健在、(4)雇用と物価全体的に安定、(5)質の高い発展が着実に推進、という5点を挙げた上で、次のように見通しを語っています。
「国際環境は依然複雑、深刻であり、世界経済は成長の原動力に乏しい。国内経済は回復、好転してはいるものの、市場における需要は依然明らかに不足しており、一部構造的問題も比較的突出している。質の高い経済成長を促すには一層の努力が求められる」
外需の低迷に加え、国内需要もまだまだ不足していて、しかも構造的問題が経済回復にとっての弊害になっているという現状認識は、中国経済が持続的、安定的に回復、改善していくためには、まだまだ多くの壁を乗り越えていかなければならないという、「前途多難」の道のりを予言していると言えるでしょう。