不動産販売・投資の低調が景気の足かせ、サービス業と消費の回復がカギに

 中国経済は5月も緩やかな回復基調を維持し、鉱工業生産やサービス業生産指数、小売売上高などの前年同月比の伸び率はおおむね、市場コンセンサス予想通りとなった。ただ、輸出が前年同月比7.5%減少。不動産業況はさらに低迷し、民営セクターの投資も低調だった。結果的に、中国経済は一段と減速し、市場では先行き懸念が高まっている。

 BOCIは経済構造という点から、引き続きサービス業生産指数と消費指標の復調がマクロ経済成長のカギを握るとの見方だ。5月には、この二つの指標はそれぞれ前年同月比11.7%増、12.7%増と、4月(13.5%増、18.4%増)から減速したとはいえ、相対的に堅調だった。半面、鉱工業生産と固定資産投資はかなり鈍く、5月に3.5%増、1.6%増(4月は5.6%増、3.6%増)。固定資産投資の中では、政府の景気刺激策を追い風としたインフラ投資が8.8%増(4月は7.9%増)と、底堅く推移した半面、製造業投資が5.3%に減速(4月は5.3%増)。もともと低調だった不動産開発投資は10.2%減(4月は7.2%減)と、さらに下げ幅を広げた。

 ゼロコロナ解除後の1-3月には、潜在需要の解放が中国経済の回復を後押ししたが、その勢いは続かず、4月には多くの経済指標が市場予想に届かなかった。中でも不動産販売および不動産投資、耐久財消費、工業企業利益、民営投資、若年層の雇用指標などが低水準に沈んだ。こうした中、政府当局は内需の押し上げに向け、公開市場操作の政策金利を0.1%引き下げたが、BOCIはさらに、インフラ投資、自動車購入の促進に向けた積極財政策の導入や、大都市部での不動産政策の一部緩和を見込む。

 5月の不動産指標は明らかに下向きに推移した。販売面積は4月に前年同月比4.6%増加したが、5月には2.7%減。販売額も26%増から7%増へ大きく鈍化した。その後の先行指標も思わしくなく、6月にはさらに落ち込む可能性が高い。また、不動産開発投資も不調で、前年同月実績の異例の低さ(上海市がロックダウン下にあった)にもかかわらず、5月に10.2%減(4月は7.2%減)。着工面積は27.3%減(4月とほぼ同じ減少率)。完工面積は4月の41.4%増から24.4%増に鈍った。新築物件の販売不振は再びデベロッパーの資金繰りを悪化させ、新規の着工だけでなく完工状況にも影響する可能性がある。

 インフラ投資は4月の前年同月比7.9%増から5月には8.8%増へ加速。引き続き固定資産投資をけん引した。ただ、中央政府が計画する地方政府の特別債発行枠は前年比を明らかに下回っており、地方財政収入(土地売却収入など)も限定的。不動産投資の減少をカバーするためにも、インフラ投資に対する新たな財政支援が必要となる可能性が高い。

 5月にはまた、製造業投資も前年同月比5.1%増と、3月、4月の6.2%増、5.3%増から減速した。内需と外需の萎縮が影響したもよう。国内の消費指標となる小売売上高は前年同月実績の低さを背景に5月に12.7%増加したが、4月の18.4%増から減速している。