コロナ規制解除後も消費低迷続く、一段の刺激策に期待

 コロナ規制解除後のリオープン(経済活動の再開)に伴う回復期待とは裏腹に、中国の消費指標はさえず、BOCIはしばらく低調が続くとみている。年初からのマクロ経済の低迷が影響しているためで、消費の押し上げには強力な刺激策が求められるとの見方だ。また、総需要の押し上げには政策介入が効果的だとする半面、企業業績にその効果が反映されるまでにはある程度時間がかかると予想。ネット通販の一大セール「618商戦」(EC大手のJDドットコム(09618)が毎年6月18日前後に開催するイベント)期間中の消費性向の変化、例えば買い控えや低価格指向などに注目するよう投資家に勧めている。ただ、香港上場の消費大手に関しては、最終的にリオープンの恩恵が及ぶと予想。まずは同程旅行(00780)や華住集団(01179)など、旅行関連銘柄を有力視している。

 PMI(購買担当者景気指数)やマネーサプライM2、雇用など、各種指標の弱さを考慮すれば、5月の小売売上高も低調が続く見込み。消費銘柄の株価も逆風の下、全体的に低調に推移する可能性が高い。8月の中間決算発表シーズンまでは支援材料も限られる見通しという。

 BOCIは第三者機関による消費者調査を参考に、国内の消費力が弱体化している可能性を指摘。消費者の低価格指向は事実であるとした上で、こうしたトレンドがやや誇張されている可能性もあると分析した。コロナの影響は富裕層で相対的に小さく、その結果、消費市場でさらに分断化が進んでいるとの認識であり、これが中高価格帯市場の不安定感につながるとみている。また、消費者の価格重視型へのシフトは「618商戦」において、小売企業側の利益率の低下につながる可能性を指摘している。

 一方、消費刺激策においては、一般世帯の所得の底上げが重要になるとの見解。消費者調査において、特に低所得層の買い控えが進んでいるとの結果が示唆されたためで、雇用の安定化(特に若年層)による全体の所得の安定増が結果的に、消費の拡大やGDP(国内総生産)の成長を後押しするとしている。

 マネーサプライや社会融資総量といった金融指標も5月には市場予想を下回り、BOCIは一段の金融緩和の余地を指摘している。消費低迷の一因として、コロナ禍での消費者信用市場の混乱を挙げ、緩和策による負の循環の抑止に期待感を示した。

 個別では、短期的には旅行・観光銘柄が最良の選択肢になるとの見方。2023年1-3月期決算を受け、コト(体験型)消費と国内旅行市場をより楽観視。政策支援の必要性が最も薄い分野だとした。個別では2023年4-6月期決算や通期決算の好調が期待できる同程旅行、華住集団を選好している。

 ほかに、景気刺激策の恩恵銘柄も焦点の一つ。この点では、不動産支援政策に対する敏感度の高い白物家電最大手、海爾智家(06690)を有望視している。