5月の売上高はコロナ前の8割前後、夏休みを迎えて回復トレンド持続へ

 BOCIのリサーチによれば、中国の外食市場の回復傾向は5月も全般に続いた。前年同月比の伸び率はベース効果で減速したものの、コロナ前の2019年実績の回復に向けて前進した。BOCIは店舗売上高の復調とコスト構造の見直しにより、2023年には飲食銘柄の採算性が改善するとの見方。うち「太二」や「慫重慶火鍋廠(Song Hot-Pot)」、「奈雪の茶」といった有力チェーンに関しては、店舗網拡大の勢いが続いていると報告している。また、1月上旬のピーク時からの株価調整で、飲食銘柄のバリュエーションの割高感はすでに消えたと指摘。セクター全体に対する強気のレーティングを継続した。

 5月は4月より前年同月の実績が高く、既存店売上高やテーブル当たり売上高の伸びが4月に比べて減速した。個別では海底撈国際(06862)の既存店のテーブル売上高は前年同月比30%増(4月は同40%増)。海底撈国際の5月の既存店売り上げ伸び率は、競合の九毛九国際(09922)傘下の「太二」チェーン(同8%増)や、「九毛九」および「慫重慶火鍋廠」チェーン(同5%増)、海倫司国際(09869)のバーチェーンである「Helen’s」(横ばい)を上回ったもよう。コロナ前の実績までの距離は、「九毛九」と「太二」が20%、21%と、海底撈国際の20-25%、「Helen’s」の25%を上回ったものの、海底撈国際の場合は5月に、コロナ前の実績との距離を前月より縮めた。

 一方、一部の有力チェーンでは店舗網の拡大の勢いが続いている。店舗採算性を重視する海底撈国際が堅実な出店ペースを維持する半面、ティーショップチェーンの奈雪の茶(02150)や、九毛九国際の「太二」、「慫重慶火鍋廠」は今も急速な出店局面にあり、年初からそれぞれ約80、31、13店舗を開業した。うち「慫重慶火鍋廠」の通期の出店数は、同社目標の25店舗を上回る可能性が高いという。

 九毛九国際と海底撈国際の株価は1月上旬から各45%、28%下落したが、これは3-4月の店舗売上高の低迷によるもの(マクロ経済の減速による消費意欲の萎縮が背景)。九毛九国際に関してはほかに、CFO(最高財務責任者)の交代も響いた。ただ、コロナ規制解除後の初の夏休みシーズンを迎え、BOCIは客足の回復が続くと予想。両社の現在株価のバリュエーション(2023年予想EV/EBITDA倍率で九毛九国際が9.4倍、海底撈国際が12.4倍)にも、すでに割高感はないとしている。

 BOCIは2023年EV/EBITDA倍率18倍をあてはめ、九毛九国際、海底撈国際、海倫司国際の目標株価を設定。うち九毛九国際と海底撈国際の株価の先行きに対して強気見通しを継続。海倫司国際に対しては中立見通しを維持した(EV/EBITDA倍率はEV=企業価値がEBITDA=利払い・税引き・償却前利益の何倍に当たるかを表す指標)。レーティング面の潜在リスク要因としては、コロナ禍のダメージの長期化や消費者の嗜好の変化、食の安全問題、商品・賃金インフレの加速などの可能性を挙げている。