アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2023年5月31日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。

 5月31日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

日経平均はバブル崩壊後の高値更新、海外投資家の日本株買い強まる

 5月(5月2日終値~31日終値まで)の日経平均株価(225種)は5.9%の上昇となりました。

 12日以降に上昇トレンドが強まり、7日連続で上げ幅が200円を超える大幅高の展開が続きました。17日には3万円の大台をあっさりと突破し、19日には2021年9月14日につけたバブル経済崩壊後の高値を更新、29日の取引時間中に高値3万1,560円まで上昇しました。

 インフレ指標の落ち着きによる米金融引き締め懸念の後退、為替市場でのドル高円安の進行、海外投資家による日本株への資金流入活発化などが、相場上昇の要因となりました。

 PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に対する東京証券取引所の改善要請、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の五大商社株買い増し宣言などが、日本株の評価向上につながりました。5月後半には、米半導体大手エヌビディア(NVDA)の好決算発表に伴う半導体株の上昇がけん引役になりました。

 こうした中ではありましたが、ランキング上位銘柄の株価は軟調な動きのものが目立ちました。全般的に、高配当利回り銘柄などのバリュー(割安)株よりも、半導体関連を中心としたグロース(成長)株に資金がシフトした影響もあったようです。また、決算発表を受けて、個別で売られる銘柄もありました。

 上昇が目立ったのはJFEホールディングス(HD)(5411)です。2024年3月期業績予想で想定外の大幅増益見通し、増配計画としたことで、ポジティブなサプライズが強まりました。TOYOTIRE(5105)も第1四半期決算が好感されました。

 半面、日本郵政(6178)、総合化学メーカーの東ソー(4042)などは2024年3月期の業績見通しが売り材料視され、2ケタの下落率となっています。日本製鉄(5401)は今期減配となる配当計画がマイナス視されました。貴金属の精錬事業などのアサヒホールディングス(5857)は特に材料が観測されませんでしたが、月末にかけて大きく売り込まれています。

高配当ランキングで7銘柄入れ替え、JFEHDは予想外の増配が好材料

 今回、新規にランクインしたのは、電炉大手の大和工業(5444)NIPPON EXPRESS(9147)、日本郵政(6178)、東ソー(4042)、中電工(1941)、TOYOTIRE(5105)、JFEHD(5411)の7銘柄です。

 除外となったのは、建物賃貸事業などを手掛ける大東建託(1878)、建材・住宅設備最大手のLIXIL(5938)、飲料向けなど包装容器大手の東洋製缶グループホールディングス(5901)SOMPOホールディングス(8630)、資源開発大手INPEX(1605)、準大手ゼネコン熊谷組(1861)、電子部品や半導体販売などを展開する加賀電子(8154)となっています。

 日本郵政や東ソーは株価の急落で利回り水準が高まる形となりました。JFEHDは会社側が予想外の2023年度増配計画を発表しています。その他は、決算発表を通過して、アナリストの配当コンセンサス予想が切り上がったものとみられます。

 一方、LIXILはアナリストの投資判断格下げがあり、コンセンサスレーティングが基準値未達となりました。大東建託は決算発表を受けて、アナリストの配当コンセンサス予想が切り下がったものとみられます。その他は、株価パフォーマンスが相対的に堅調だったため、ランキング順位が低下した形です。

 アナリストコンセンサスと会社計画で配当予想が大きく異なっている銘柄は4銘柄あります。会社計画よりもアナリスト予想が低いものはJFEHD(5411)です。会社計画での配当利回りは5.80%の水準であり、今後はアナリストのコンセンサスも切り上がっていくと考えられます。

 逆に、日本製鉄(5401)、NIPPON EXPRESS(9147)、TOYOTIRE(5105)は、会社計画をベースにすると、それぞれ、5.16%、3.83%、3.24%となります。各社ともに配当計画引き上げの余地はあるとみますが、それでも、コンセンサス予想は高過ぎると考えます。

 SBIホールディングス(8473)は、会社側で2024年3月期の配当計画を示していません。アナリストの配当予想は2023年3月期と横ばいになる150円となっています。

日本株急ピッチの上昇、米利下げにはやる市場予想…過度な上値追いは慎重に

 6月に注目されるイベントとしては、まずは、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会、13~14日開催)が挙げられるでしょう。

 足元では利上げ継続の可能性なども指摘されていますが、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が利上げの停止を示唆した事実があること、5月以降の米国株式市場の調整などからも、直前の雇用統計やCPI(消費者物価指数)に大幅な上振れがない限り、金融政策は据え置きとなる公算が大きいとみられます。

 あらためてグロース株を中心に短期的な買い材料とされる可能性は高そうですが、直近での日経平均の上昇ピッチが速いこと、米国が利下げに転じるには市場期待よりも時間を要するとみられることから、上昇している銘柄に対する過度な上値追いは控えるタイミングが近づいていると判断したいです。

6月は株主総会シーズン、低PBR銘柄の株主還元向上に注目

 6月は3月期決算企業の株主総会のシーズンともなります。企業サイドとしては、株主総会前はなるべく株高を演出したいと想定されます。公募増資など株安要因となる材料は控えられる可能性があります。

 一方、東京証券取引所が改善への具体策公表を要請しているPBR1倍割れ企業に関しては、株主総会前に還元姿勢強化などの施策を打ち出しておきたいところでもあるでしょう。

 アクティビストファンド(物言う投資家)の動きも併せて、バリュー株の動きには引き続き期待できます。現在高配当利回りでありながら、一段の増配余地が残るような銘柄群、株価上昇のトレンドに出遅れた感じが強い低PBR銘柄などに注目したいと考えます。