懸念される中国当局から日本企業への報復措置。高まる邦人拘束リスク

 そんな中、私が心底懸念しているのが、今回のG7サミットで議長国を務めた日本の対中ビジネスが、日本への報復措置を狙う中国政府によって阻害される事態です。

 コミュニケに含まれる次のセンテンスを見てみましょう。

・我々は、中国に対し、外交関係に関するウィーン条約及び領事関係に関するウィーン条約に基づく義務に従って行動するよう、また、我々のコミュニティの安全と安心、民主的制度の健全性及び経済的繁栄を損なうことを目的とした、干渉行為を実施しないよう求める。

 想起されるのは「邦人拘束リスク」です。3月下旬、日本の製薬会社幹部が赴任を終えた帰国間際に北京で拘束され、現在に至るまで釈放されていません。中国が2014年に「反スパイ法」を施行して以降、計17人の邦人が拘束され、うち9人に実刑判決が下っています。

 邦人がなぜ拘束されるのか、に関してここでは深入りしませんが、軽視できない要素の一つが、中国政府が日本の対中政策に不満を持てば持つほど、中国における邦人が拘束される、日本企業が嫌がらせを受けるリスクが高まるという定律です。これは現実問題として、日本経済を取り巻く不都合な真実として横たわっているのです。米中対立、経済安全保障、ウクライナ戦争、台湾問題など日本と中国の関係に深く影響する地政学・地経学的課題は山積し、今回のG7広島サミットを経て、それらはさらに顕在化するのが必至です。

 中国とビジネスをする企業だけでなく、日本経済、もっと言えば、日本の安全と繁栄という国益全体に直結する問題として、正視しなければならないと切に思います。