投資スタイル・性格別で考える、新NISAの使い方

武田 退職金が出たタイミングや、子育てがひと段落したタイミングなど、ライフイベントの変化があったタイミングで成長投資枠を使うこともできるということですね。一方で、投資スタイルや性格によって使い分けるとしたら、どうすればいいでしょうか。

森永 三つご紹介します。たとえば、じっくり長期で増やしたい、もうつみたてNISAをやっているという人は、現行のやり方を無理に変える必要はないと思います。つみたて枠や成長投資枠でインデックス投信を積み立てる。現在のつみたてNISA枠が増えたくらいの考え方ですね。

 真ん中は、成長投資枠で割安な大型高配当株などを買っておけば、配当と同時に値上がり益も期待できるというものです。右側は成長投資枠で値動きが激しくても大化けしそうな中小型株や、米国IT企業だけ、アセアンの株だけ、などエッジのきいたテーマ投信です。

 この3パターンに決めたら走り切らなきゃいけないということではないです。現在のつみたてNISAは、一度投資をしたらその枠が消えてしまうため、結婚してマイホーム、子どもの学費などで積み立てていた資産を取り崩す可能性がある若い世代では制度を活用することをちゅうちょしてしまう人もいたけど、新NISAは一度売った場合に枠が復活する。(長期で投資するほどメリットが大きくなる)複利の面では、引き出すのはどうなのかという考えもあるけど、複利だけが全てではないので。出し入れが自由というメリットはあります。

 投資はやってみるほど精神的に耐えられるパワーがつくし知識が増えてきて見えなかった世界もみえてくるので、インデックスだけでなく自分色にアレンジしてみるのもいいと思います。

 複利の効果を得るには最短の5年間で1,800万円の生涯投資枠をうめる、というのが多くのインフルエンサーさんに言われていますが、僕はそれ結構危険だと思っています。

 例えばその5年間が1985年からの5年間だったとしたら、値上がり時に買い付けてしまいその後大きく落ちるという可能性も大いにある。枠を使い切った5年後に金融緩和が終わったり、地政学リスクが勃発したりと、株式の暗黒の10年がきた場合、耐えられるのか。投資では時間の分散も大事なので、一気に入れずじっくりやってくのが大事だと思う。

▼森永さんの記事はこちら

武田 つみたて投資では米国のインデックスファンドが王道といわれていますよね。有名な人がお勧めしているからこれ、という人もいるかもしれません。ただ、長期投資や分散投資について理解しないまま始めると、暴落した時に怖くなって投資を止めてしまう場合もあるのではないかと思うんです。

 改めて、インデックス投資、長期投資、分散投資の意味を教えてください。

森永 一括で買うと、その時点が安い可能性も高い可能性もあります。一方、毎月定額で投資すると高い時もあれば安い時もある。投資期間が長ければ長いほど、ある一定のラインに落ち着きます。ネット証券では設定すれば自動でこの買い方をやってくれます。

 相場を随時見ながらやっていける人ばかりでもないので、長く投資するなら相場に疲れないために機械的にやることも大事です。

 また、投資を長くやると、複利の効果で雪だるま式に利益が積みあがってきます。途中で引き出しちゃうと複利がきかなくなってしまう。でも、引き出せるのは新NISAの良さでもあるので、あまり過度に引き出さないことにとらわれない方がいいと思います。

 投資信託にかかる信託報酬についても触れておきます。今ほとんどのネット証券では投資信託を買うときに販売手数料がかからないですが、持っている時は信託報酬という手数料がかかります。1%程度とはいえ、この差が以外とばかにならないので、コストも商品を選ぶ一つの基準にするといいですね。

投資するお金のつくり方

武田 将来に向けて2,000万円~3,000万円の資産をつくりたいという時に、少額の積立投資だけではなかなか難しく、どこかでギアを変えないといけないという考えもあります。投資に向けるお金って、どうつくればいいでしょうか。

横山 ライフプランは一定ではないので、臨機応変に濃淡や強弱をつけていい。無理しないことが大事です。もう一つは、経済は絶対ではないので、最大の防御は家計を強くしてどんな経済状況でも引き出さずに生活できるという体制にしておくこと。家計と投資のバランスは難しいものですが、そこをきちんとするのが大切です。

 資産をつくるならまずは家計に目を向けて、収支の把握や見据えた金額を長く出せるように投資してほしい。収入が高くなくてもコントロールしてだせるのが強い家計です。何となくやって出来上がるものではないので、ゴールをシミュレーションして今どうゆう動きをしたらいいのか考えてほしいです。

武田 資産づくりのために投資を使う。それに先立つ元本は、家計をしっかり管理して余裕ができた分で投資をする。それをやるならNISAを使うというのがまとめですね。

 続いて、何のために投資するのか、という話をしていきます。お金のために働く投資は本末転倒です。

森永 日本人は世界一の長寿国といわれていてそれを誇らしく思っているところがありますけど、その前提条件は元気である程度経済力があるということだと思います。貧しい老後は迎えたくないですよね。

 賃金が上がらない中で無理して投資をすると疲弊してしまいます。それを避けるためには積立投資です。自動設定すれば投資することは忘れて値動きから解放される。内容が拡充する新NISAのような制度やツールをうまく利用して、ストレスフリーで将来に備えるスタイルが良いと思います。

武田 精神的なストレスもうまくコントロールしながら資産づくりをじっくりやることが大きなポイントかもしれないですね。今日はありがとうございました。