2万9,000円前後でも景気循環の後退局面に当たる「冬前半」

 日経平均株価(225種)は、上がったり下がったりしながら、足元では2万9,000円あたりと、じわりと上昇してきています。さらに上昇していくのか、はたまた下落してしまうのか、見方は分かれるところですが、景気循環という視点からみたときの私なりの見方について、お伝えしていきたいと思います。

 まず、私が捉えている景気循環における株価のイメージは次のとおりです。

(図1)景気循環における株価のイメージ

出所:マネーブレインが作成

 景気循環において、各局面を独自分析に基づいて「春」「夏」「秋」「冬」という季節になぞらえていて、それぞれ次のように位置付けています。

「春」・・・不況から景気回復の局面
「夏」・・・景気回復から好況の局面
「秋」・・・好況から景気後退の局面
「冬」・・・景気後退から不況の局面

 現在は、「冬(前半)」という時期に独自分析上なっています。日経平均と景気循環の関係は次のとおりです。

(グラフ1)日経平均株価と景気循環との関係(1)

*薄いグレーは「冬(前半)」、濃いグレーは「冬(後半)」を示しています。
出所:日経平均株価は日本経済新聞社の公表データを基に作成。景気循環はマネーブレインが独自分析し作成

(グラフ1)において、2020年前半のコロナショックのあったイレギュラーな時期を除くと、濃いグレーで示した「冬(後半)」に日経平均はおおむね底値圏となっていて、「冬」の終わりごろには上がり始めていることが分かります。

 このため、「冬(後半)」の時期を予測することによって、日経平均の本格上昇してくる時期が読めるということになります。

メインシナリオは来年3、4月に底値圏から本格上昇か

 では、その「冬(後半)」がいつごろになりそうなのかですが、そのタイミングは、FA(ファクトリーオートメーション)やロボットを扱っているファナック(6954)の在庫循環で決めています。なぜファナックなのかというと、さまざまな銘柄を検証した中で、ファナックが一番、景気循環をみる上で適しているからです。

 ではさっそく、ファナックの在庫循環をみてみましょう。

(表1)ファナックの在庫循環

*青枠は売上高、棚卸資産がともに前年比で減少した最初の四半期
出所:ファナックの決算短信を基にマネーブレインが作成

(表1)において青枠で示した時期は、四半期決算において、売上高と棚卸資産がともに前年比で減少した最初の四半期で、この決算発表日を「冬(前半)」から「冬(後半)」に変わるタイミングと定義づけしています。

 4月26日に発表されたファナックの通期決算において、第4四半期のみを取り出すと、売上高は2,158億円と高水準を保っていて、棚卸資産はさらに積み上がり、3,505億円と過去最高となっています。

「冬(後半)」になるには、この売上高と棚卸資産がともに前年比でマイナスになる必要がありますが、現時点では、その時期は、2024年3月期第3四半期決算発表日である来年の1月下旬になる可能性が高いのではないかとみています。

 2024年3月期第3四半期決算発表日が「冬(後半)」になるためには、2023年3月期第3四半期決算の数字(売上高:2,199億円、棚卸資産:3,312億円)を下回る必要があります。

 受注高と売上高の関係をみてみると、ここ2四半期においては受注高が売上高を下回ってきていることから、今後、売上高がどんどん増えていくことは考えにくく、過去最高に積みあがっている棚卸資産も減ってくることが予想されます。

 このため、2024年3月期第3四半期において、売上高、棚卸資産ともに、2023年3月期第3四半期の数字を下回ってくるのではとみています。

 今一度、日経平均と景気循環の関係をみてみましょう。

(グラフ2)日経平均株価と景気循環との関係(2)

*薄いグレーは「冬(前半)」、濃いグレーは「冬(後半)」を示しています。
*青矢印は「冬(前半)」から「冬(後半)」に変わった時期
出所:日経平均株価は日本経済新聞社の公表データを基に作成。景気循環についてはマネーブレインが独自分析し作成

「冬(前半)」から「冬(後半)」に変わった時期を青矢印で示しましたが、そのタイミングは日経平均のおおむね底値圏となっています。そして、「冬(後半)」の期間はだいたい3カ月程度で、「冬」の終わりには日経平均は上がり始めてくることを考えると、日経平均が本格上昇を始めてくる時期は、来年3月か4月ごろと予想され、これをメインシナリオと私は考えています。

今は高値圏でも、業績悪化や株価下落を警戒して慎重に

 ただし、このメインシナリオになるためには、通常、景気循環で起こってくるように、企業業績が悪化してくることが前提となります。過去においては、「冬(前半)」に実際に企業業績が悪化してくることによって株価は下落し、「冬(後半)」を迎える形となっています。

 足元では、企業業績は明確に悪化している状況にないため、現在のように株価が保たれる状態が続くということも考えられますが、これから先、企業業績が落ち込まないという保証もありません。

 日経平均の動向は、今後の企業業績次第ということになりますが、景気循環においては「冬(前半)」は警戒をしないといけない時期でもあるので、私は、現時点では慎重に構え、本格的に投資していく時期は、青矢印の「冬(後半)」になってからでも遅くはないと考えています。

 投資はあくまでも自己責任で。