5月見通し

材料面から見た5月見通し

 こうした中、材料面から5月の相場を展望すると、まず、金融不安はなかなか鎮火はしそうにない。自主清算を選んだシルバーゲート銀行を含め、これまで破綻、買収された米地銀は、シリコンバレー銀行、シグニチャー銀行、そして最後にJPモルガンに買収されたファーストリパブリック銀行の4銀行だ。

 最後の買収の翌日に、次の候補先として、パックウエスト銀行、ウエスタンアライアンス銀行株が急落した。JPモルガンによる買い推奨や空売り規制の動きを受けて、相場は持ち直しているが、根本的な問題は何も解決していない。

 すなわち、破綻した地銀の経営陣を非難しようが、空売り規制をしようが、急激な利上げにより膨らんだ銀行の含み損は変わらないし、調達金利の上昇による逆ザヤで、銀行の体力は日に日に衰えている。

 また、銀行の経営陣は、進退をかけて自己資本比率の向上、すなわち資産の圧縮に励み、結果的に信用収縮で経済は萎縮していく。こうした中、FRBは早晩、利下げに方向転換せざるを得なくなるだろう。そして、パウエルFRB議長がFOMC後の会見で口にした「幾つかの(a few)」後悔の中には、急速な利上げで銀行経営を苦しめたことも入っているだろう。

 しかし、こうした方向展開がすぐに訪れるかどうかは疑問だ。例えば、市場で有力視されている、9月時点での利下げの有無が議論されるのは、早くても7月辺り。7月の利下げに至るには5月の数字はそれほど悪化していないことが確認されつつある。そのため、6月の数字が急速に悪化する必要がある。いずれにせよ5月内では判断が難しく、相場の上抜け材料にはなり難いか。

 もう一つ、5月に注目される材料として、米債務上限問題がある。イエレン米財務長官によれば、早ければ6月1日にも支払いが滞る見通しだ。仮に、本当に足りなくなると、2019年以来の米政府閉鎖となりかねない。

 あまりデータがないので何ともいえないが、過去2018年1月、2018年末~翌年1月の、2度の政府閉鎖に、BTCはあまり反応していない。あまり長引くと米景気を冷やし、ドルの信認を失うという面で、BTCにポジティブかもしれないが、リスクイベントとしてファーストアクションはBTC売りかもしれない。

 また、広島G7(主要7カ国)サミットで、暗号資産に関する規制が首脳宣言に盛り込まれる可能性が指摘される。しかし、これまで暗号資産関連規制派G20(主要20カ国・地域)を中心に、すでに議論されてきており、BRICS諸国が参加しないG7における「グローバル」な規制にどれほど意味があるかはやや疑問だ。

 こうして5月のBTCは決め手に欠ける中、2万7,000ドルから3万ドルのレンジでの取引が続きそうだ。

テクニカル面から見た5月見通し

BTC/USD一目均衡表

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 テクニカル的に見ても、5月のBTC相場は方向感をなくしている。一目均衡表では転換線(黄)が基準線(赤)を下回り、遅行線(緑)がローソク足を下回り、ローソク足が雲の上限を下回り、1カ月以上続いた3役好転の三つの買いサインが全て消滅した。

 基準線が横ばいで、ローソク足が雲の中に入り、相場はもみ合いを示唆している。5月末には雲が薄くなり、上下どちらかに抜ける必要があるが、もし下に抜ければ3役逆転の売りサインとなる。1年以上続いた雲の下から、今年1月に上に抜け出し、トレンド転換を見せた経緯から、上抜けの可能性が高いと考える。

BTC月別パフォーマンス

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 アノマリー的には、5月は7勝5敗と4月よりやや弱めだが、過去4カ月連続の陽線となった7回中7回とも、翌月は陽線となっている。すなわち、1~3カ月連続陽線の場合は気迷いもあるが、4カ月連続で陽線となるような場合は強いトレンドが出ており、5カ月連続陽線となる可能性が高い訳だ。

5月見通し

 まとめると、5月のBTC相場は、2万7,000ドルから3万ドルのレンジ内で横ばい推移。3万ドル近辺での「やれやれ売り」圧力に上値を抑えられそうだが、月末にかけて若干の上抜けを予想する。ただし、これまで陽線は5~6カ月連続で続いた辺りで、一度調整が入る傾向にあることから、6月か7月辺りに反落もあり得るかもしれない。