中国金融政策のキーマン「リスクはコントロール可能」
中国金融政策のキーマンが易鋼・中国人民銀行総裁です。中国最高学府の一つである北京大学の経済学部を卒業し、イリノイ大学で経済学博士を取得しています。経済の専門家、学者出身の中国金融政策統括者です。習近平第2次政権(2018~2023年)で人民銀行総裁を務めた易氏ですが、今年3月の全人代前後に多くの閣僚級人事が変わる中、易氏は総裁を続投。それだけ習近平総書記を含めた指導部の信頼が厚いということだと思います。
そんな易総裁ですが、このほど米ワシントンD.C.で開催された主要7カ国(G7)と20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議に出席した際、日本、オーストリア、スイス、米国、ザンビア、スリランカ、エチオピア、パキスタンの中銀総裁あるいは財務相と会談をし、昨今の金融不安への対応や世界経済について意見交換をしています。金融不安が世界経済への足かせとなり、それが中国経済の成長を押し下げるリスクを警戒する中銀のトップとして、各国のカウンターパートと現状認識を共有し、政策を協調していく必要性を感じているのでしょう。
また、G20会議では、「中国の金融市場は全体的に安定している。リスクは全体的にコントロール可能である。銀行など金融機関の経営状況も良好で、一部中小金融機関も改革を通じてリスクの緩和を進めている」とした上で、「中国経済は現在安定的に回復しており、インフレ率も低い。不動産市場にも前向きな変化が見られる。今年のGDP成長率は5%前後になると予測している」という見通しを示しました。
IMF(国際通貨基金)は4月11日、一連の金融不安や金融市場の引き締めは世界経済の下振れリスクになるという見通しから、2023年の世界経済成長率見通しを2.8%増に下方修正しています。中国政府が警戒するように「外需の伸び鈍化」は中国経済にとっても下振れ圧力と化し、今年5.0%前後に設定している年間目標を達成する上でのリスク要因になるということでしょう。中国政府は「コロナフリー」という新常態下において、引き続き小刻みな金融緩和や大胆な財政政策を通じて景気を下支えしていくものと思われます。