先週の日経平均株価(225種)は5営業日全て値上がりし、4月14日(金)の終値は前週末の7日と比べて3.5%高の2万8,493円と、実に975円も上昇しました。

 日本銀行の新総裁に就任した植田和男氏が10日(月)の記者会見で金融緩和の継続を打ち出したこと、日本に来日していた米著名投資家のバフェット氏が11日(火)、大手新聞などのインタビューで商社株買い増しを公表したことなど、日本株には強い追い風が吹きました。

 一方、米国株は米国経済の景気後退懸念から、機関投資家が運用の指針にするS&P500種指数が前週比0.79%高となるなど小幅高で終わりました。

 15日(土)には和歌山市で、衆議院和歌山1区補選の応援演説前だった岸田文雄首相に向かって、爆発物が投げ込まれる「テロ」が発生しました。

 幸い、岸田首相は無事で、17日(月)以降の株式市場に与える影響も軽微だと思われます。

 バフェット効果に沸いた先週に続き、今週17日(月)~21日(金)の東京株式市場は割安株、成長株ともに続伸が期待できそうです。日経平均株価は3月9日につけた年初来高値2万8,734円の更新が視野に入った、といえるでしょう。

 週明け17日の日経平均株価の終値は、前週末比21円高の2万8,514円でした。円安が自動車など輸出関連銘柄に追い風となりました。ただ、取引時間中は下落する場面も目立ち、先週大きく上昇した商社やファストリなどが利益確定売りに押されました。

先週:バフェット商社株買い増し、好決算&増配など好材料満載で急上昇! 

 先週の日本株はここ最近では珍しいほどの好材料満載で力強く続伸しました。

 10日(月)には、日銀の植田新総裁が就任会見を開き、「金融緩和策の継続が適当」と発言しました。

 短期金利だけでなく長期金利の指標となる10年国債を市場から大量購入して、短期金利に加えて長短金利も操作するYCC(イールドカーブコントロール)政策についても「総じて前よりスムーズになっている。経済・物価の基調判断で修正するかどうか決めていく」といった無難な発言に終始しました。

 植田新体制となって初めて開く27日(木)、28日(金)の金融政策決定会合では、YCC政策の修正を実施しない可能性が濃厚になったことを受けて、株価は上昇しました。

 さらに先週の日本株上昇の起爆剤になったのは、米著名投資家のバフェット氏が保有する日本の5大商社株の経営者との会合などのために来日したこと。

 11日(火)の日本経済新聞などとのインタビューでは、5大商社株の総株数(金庫株を除く)に占める保有比率を全て7.4%まで高めたこと、最大で9.9%まで保有比率を高めて長期保有する可能性に言及。

 5大商社株の14日の終値は、丸紅(8002)が前週末比11.4%上昇、伊藤忠商事(8001)が10.1%上昇と、全社が大幅上昇しました。

 バフェット氏はまた、日本企業への新規投資について「考えている企業は常に数社ある」と発言。

 今後も「バフェット氏が次に買うのはどの日本株」といった市場の関心が長期的に持続しそうです。

「投資の神様」とあがめられるバフェット氏が日本を訪れ、商社株の買い増しを表明したことは、日本株は優れたリターンをもたらすと太鼓判を押したことに他なりません。

 それは、他の海外投資家が日本株を買い始めるきっかけになる可能性も高く、日本市場にとって、これ以上の宣伝効果はないでしょう。

 12日(水)には大阪府や大阪市が大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)で進めるカジノを含むIR(統合型リゾート)の整備計画を政府が認定する方向で最終調整に入ったというニュースも報じられました。

 夢洲に倉庫などの不動産を持つ桜島埠頭(9353)がストップ高を連発して、14日の終値は前週末比89.3%も上昇。

 カジノなど娯楽施設向け紙幣識別装置などを製造する日本金銭機械(6418)が15.6%高になるなど、訪日客増加もあってレジャー関連株がにぎわいました。

 14日(金)には、「ユニクロ」のファーストリテイリング(9983)が2023年8月期通期業績の上方修正を発表しました。

 この日2023年2月中間決算では、東南アジアや北米など海外事業が好調で、営業利益などは過去最高を更新。期末配当も1株115円から125円に増配したことで、14日の株価は前週末比13%高と急騰しました。

 一方、東京証券取引所は3月末に、会社の理論上の解散価値よりも株価が低い「PBR1倍割れ」企業に対して経営改革や株主還元策の強化などを要請しました。

 それに対して、金融情報会社QUICKが実施した株式月次調査が10日(月)発表され、市場関係者の62%が「適切」と回答したことが報じられました。

 これにより、割安株の増配や自社株買いに対する期待感が今後も膨らみそうなことが日本株好調の下支え材料になったといえるでしょう。

 実際、13日(木)の決算発表で2024年2月期の株主配当を前期比50円増配することを表明したローソン(2651)が前週比7.9%高となるなど、積極的な株主還元を表明する企業にも買いが集まりました。

 好材料が相次いだ日本株に比べると、米国では、インフレ鈍化を示す明るい指標と、年後半の景気後退に対する懸念が錯綜(さくそう)し、一進一退の展開でした。

 12日(水)発表の3月CPI(消費者物価指数)は、前年同月比5.0%の上昇にとどまり、伸び率は市場予想以上に低下しました。

 ただ、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)がこの日発表したFOMC(連邦公開市場委員会)3月会合の議事録では、米地銀の相次ぐ破たんによる金融不安などで、2023年後半の景気後退入りについても議論されたことが判明しました。

 にもかかわらず、5月2~3日に開催される次回FOMCでは、インフレ対策優先で0.25%の利上げに踏み切る論調が優勢だったこともあり、12日の米国株は下落しました。

 しかし、企業間で取引される原材料や製品の価格を対象にした3月PPI(卸売物価指数)が13日に発表され、前月比では0.5%低下、前年同月比で2.7%上昇と市場予想より上昇率が大幅に低下しました。

 インフレ率の鈍化が鮮明となったことを好感して、米国株は上昇しました。

 14日(金)は米国の大手銀行が2023年1-3月期の決算を発表。

 最大手のJPモルガン・チェース(JPM)の純利益が52%の大幅増益となり、同社の株は前日比7.6%も上昇しました。

 しかし、その後、発表された3月小売売上高が前月比1.0%減少と不振で、米国の景気後退懸念が再燃。全体相場は下落して終わりました。

今週:米国の製造業景況指数や地銀の決算発表が不安、日本株は続伸か? 

 今週は18日(火)に、中国の2023年1-3月期のGDP(国内総生産)が発表されます。

 ちょうど、中国が人々の移動を厳しく制限した厳格な「ゼロコロナ政策」を解除して、経済再開に動き出した最初の四半期です。

 前期比2.1%の伸びが予想されていますが、さらに上振れすれば、中国経済の恩恵を受けやすい鉄鋼、機械、精密機器などの日本株にも好影響でしょう。

 米国では、17日(月)に4月ニューヨーク連銀製造業景気指数、20日(木)に4月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、21日(金)に4月製造業・サービス部門のPMI(購買担当者景気指数)速報値などが相次いで発表されます。

 原材料高や需要減少で落ち込む製造業の景況感がさらに低下すると、米国の景気後退に対する懸念が深刻化し、株安につながる恐れもあります。

 また今週は、3月に破たんしたシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行などと同じ米国地銀の2023年1-3月期決算発表が多数控えており、市場の波乱要素になりそうです。

 17日(月)にはM&Tバンク(MTB)、19日(水)にはシチズンズ・フィナンシャル・グループ(CFG)、来週24日(月)には、預金の大量流出が懸念されたファースト・リパブリック・バンク(FRC)など、3月の金融危機以降、株価の急落と低迷が続く米国地銀の決算に関心が集まりそうです。

 特に懸念されている商業用不動産向け融資や商業用不動産ローン担保証券(CMBS)に絡んで、巨額赤字を計上するようなことがあった場合、再び、金融不安が台頭する恐れもあります。

 先週スタートした2023年1-3月期の米国企業決算も、全体としては暗い業績内容になるという見通しが出ています。

 いまだFRBは「年内の利下げはない」という姿勢を崩しておらず、年内利下げに踏み切るのは深刻な金融危機や景気後退が到来した場合でしょう。

 つまり、そうした金融危機などを受けて株価が下落しない限り、FRBが利下げを始めるとは考えにくい面もあります。

 一方、市場ではすでに年内の利下げ期待を織り込んで、米国株がかなり上昇している点が少し気がかりです。

 また、無難なデビューを飾った日銀の植田新総裁ですが、鈴木俊一財務相が11日(火)の閣議後の記者会見で、「政府としては日銀が国債を買い入れるとの前提に立った財政運営を行うことが適切とは考えていない」と発言するなど、量的緩和策の修正に向けた地ならしも進んでいます。

 植田新総裁がYCC終了など量的緩和策の縮小に乗り出した場合、日本株にとっては明らかにネガティブです。

「株は5月に売れ(セル・イン・メイ)」という投資格言にもあるように、5月3日(水、日本は祝日休場)のFOMC以降、株式市場に波乱が起こる可能性もあります。

 ただ逆に、4月いっぱいはまだ株価が上昇する余地もありそうです。

 バフェット効果で割安な日本株に世界的な注目が集まり、日本企業が積極的な株主還元策で資本効率の改善や割安感払拭(ふっしょく)に努力することに期待したいものです。