上方修正された国防費と不安視される台湾問題

 経済成長率が下方修正された一方、毎年外国メディアが注目する国防費は、昨年の7.1%増からさらに上昇し、7.2%増の1兆5,500億元(約2,240億ドル)に設定されました。経済成長に比べて軍事拡大を優先するという習近平新時代の特徴を如実に表していると言えます。

 と同時に、財政が過去3年「ゼロコロナ」下ですり減ってきた中、「限られた財源」をどこに使うのかという視点も重要でしょう。昨年、中国は61年ぶりに人口減を記録し、少子高齢化が進行する中、社会保障費などにも財源を回すことがますます求められるようになるからです。

 習近平指導部が軍拡の先に意識する一つの標的が台湾問題です。

 李首相が発表した「政府活動報告」は、台湾問題に関して、平和的統一を推し進めるとしつつも、台湾独立に反対する姿勢を前面に打ち出しています。言い換えれば、平和的統一を最優先するが、状況次第では、武力行使も辞さないということです。来年1月に総統選を控える台湾内部で独立志向を目指す動きが拡大したり、米国と台湾の間で従来の枠組みを超越する連携や協力が見られれば、中国は台湾に対する軍事圧力を躊躇(ちゅうちょ)なく強化するでしょう。そのたびに、台湾海峡が緊張化、不安定化する事態は容易に想像できます。

 経済だけでなく、軍事や台湾を巡る動向も、習近平氏率いる中国の行き先を展望する上で、軽視できない要素になっていくものと思われます。来週のレポートでは、全人代閉幕(3月13日)を受けてのアップデートを行う予定です。