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2月の中小型株ハイライト

中小型グロース株がかすんだ「低PBR株ブーム」

「グッドニュースはバッドニュース」…米雇用統計、CPI(消費者物価指数)など経済指標が市場予想を上振れる「強い数値」となることを、株式市場が嫌った2月相場でした。

 想像以上に楽観方向へ傾いた1月相場(※ナスダック総合指数で1月は月間10.7%高)の揺り戻しとはいえ、経済指標のグッドニュースを受け、早期利下げ期待は後退。また、FRB(米連邦準備制度理事会)高官の発言も重しになり、2月の米国株市場は足踏み状態に。

 米国株のバリュエーション的な割高感を指摘する声が強まる中、日本のグロース株も値下がりするものが多くなりました。そんな中、日本株市場でブーム化したのがバリュー株(=低PBR(株価純資産倍率)株のこと)。

 東京証券取引所がPBR1倍割れ銘柄を減らそうと動き出したことや、バリュー株には高配当銘柄も多く3月期末に向け配当を狙う意識も強まったといえそうです。これは、バリュー株の少ない東証グロース市場には逆風でした。

 指数別に見てみると、バリュー株を多く含む指数ほど好パフォーマンスだったのが2月相場。2月の月間騰落率は、TOPIX(東証株価指数)バリュー指数の+2.3%に対して、TOPIXグロース指数は▲0.5%とバリュー株優位の展開に。TOPIXバリュー指数は算出来高値を更新しました。

 市場別で見ると、東証プライム市場指数の+0.9%に対し、東証スタンダード市場指数+2.9%、東証グロース市場指数▲2.8%(マザーズ指数は▲3.5%)。2月末時点の市場別PBR(プライム1.18倍、スタンダード0.95倍、グロース4.06倍)が一番低いスタンダードが最良パフォーマンスを残した点からも、低PBR株を重宝した相場付きをよく表しています。

決算ラッシュ…ショック安は人気株イーディーピーで発生

 決算発表シーズンでしたが、衝撃度合いで最大だったのが(ネガティブサイドですが…)東証グロースの人気銘柄イーディーピー(7794)でした。2月10日の決算発表の手前、2月8日に上場来高値3万250円を付けていました。

 発表直前時点の信用買い残は金額ベースで約99億円と、東証グロース市場全体でそーせいグループに次ぐ2位。上方修正期待、そして東証グロース市場トップの値がさ株になっていたこともあり、大幅な株式分割への期待も乗っていました。

 同社は10日、一部投資家の期待に応える株式分割(4月1日付での5分割)を発表。そして、第3四半期決算と合わせて「業績修正」もセットでした。が…修正方向が予期せぬ「下方」。売上高を従来予想の30.98億円から27.06億円に、営業利益を13.65億円から12.42億円へ引き下げています。とりわけ疑念を広げたのが、下方修正の理由、そして大株主の全株売却でした。

 これまで、主力商品であるLGD(人工ダイヤモンド宝石)用種結晶は引き合いが非常に強く、第3四半期の新工場稼働でさらなる業績拡大が見込めると会社側は説明してきました。それが、第2四半期からわずか3カ月で一変。

「第3四半期の末頃から、一部でLGD供給量に過剰感」「2カラット以下の小型宝石の業者間取引価格の値下がりが顕著」といったネガティブな新情報が記載されていました。

 成長を予測する前提条件が崩れたことに失望感が広がり、決算発表翌日から2日連続の終日ストップ安売り気配に…。また、16日には大株主であり、ビジネスパートナーでもあったコーンズテクノロジーが同社株21万5,000株(発行済み株数の8.19%)を売却すると発表。

 東証グロース市場屈指の人気株が、四半期の決算発表一発で半値以下に急落する事態となり、「中小型グロース株は長期で持てない」なるトラウマを投資家に広げた意味でもショックの大きい事例になりました。

決算ラッシュ乗り越え株価上昇した中小型グロース株は?

 四半期決算での「サプライズ」をきっかけに、スターの階段を駆け上がることも多い中小型グロース株。今回つまずいたイーディーピーも、昨年評価を高めたきっかけは決算発表でした。四半期に一度の決算発表シーズン、この2月に業績材料で値上がりした銘柄を確認しておきましょう。

2月発表の決算通過で大幅上昇した東証グロース銘柄

コード 銘柄名 2月騰落率 時価総額 (億円)
9553 マイクロアド 96% 233
4011 ヘッドウォータース 93% 84
6026 GMO TECH 76% 32
6568 神戸天然 56% 127
7792 コラントッテ 50% 109
1400 ルーデン 49% 20
7694 いつも 48% 61
5240 monoAI 48% 192
6562 ジーニー 46% 291
7066 ピアズ 45% 36

 2月は、話題になったChatGPTに関連しそうなAI関連株や、相次いだ飲食店での迷惑行為を受けた監視カメラ関連株などの材料株物色も見られました。それでも、値上がり率上位の半数程度は今回の決算発表を買い材料にした銘柄でした。

 第1四半期の好調ぶりから、マイクロアド(9553)コラントッテ(7792)などが買われたほか、今回が本決算だったヘッドウォータース(4011)GMOTECH(6026)などは強いガイダンスを手掛かりに買い進まれました。

 この中におそらく、今年の年末にかけた大化け株が潜んでいるはず…そう期待させるくらい、小型グロース株にとってサプライズ決算は中長期の株価形成に効きます。

3月の中小型!今月のキーワードは…バリュー株の出遅れマイナー組

 中小型株を選ぶにも、バリュー株orグロース株、どっちにするか? その二択の選択次第で明暗が分かれる状況になっています。

 3月はどっちが正解でしょうか? 3月の季節性でいえば、3月決算企業の期末配当の権利月ですので、「高配当株を狙う投資家が多そう」という想像はできます。グロース株に高配当株など皆無ですので、配当狙いの雰囲気が強まるならバリュー株優位でしょうか。

 ただ、グロース株が優位になる展開だって考えられます。3月1日に米長期金利が約4カ月ぶりの4%台に乗せるなど、金利上昇に伴って割高感からグロース株には不利な展開。雇用統計、CPI、PCE(個人消費支出)など経済指標が強い数値だったことで、インフレ高止まりを市場は気にしています。

 21~22日に控える3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)に向け、ほぼ確率ゼロと見ていた0.5%利上げも「あるかも」の可能性アップが背景です。

 今後のFRB高官の発言、経済指標から確率が上下する不透明感を抱えていますが、コンセンサス通りの「0.25%利上げ」で決まった場合には、グロース株に買い安心感が強まるでしょう。

 その場合、手前の「バリュー株買い/グロース株売り」のアンワインド(巻き戻し)となるため、バリュー株には不利な展開にもなり得ます。ただ、これに関しては事前に予想しようがないため、「FOMCを待ちましょう」としか言えないわけですが…。

 さて、バリュー株?グロース株?論はさておき、この3月の日本株市場で注意すべき決定事項を挙げておきましょう。この3月は、超大型のPO案件が決定しています。それが、3月後半に予定されている「ゆうちょ銀行の株式売出し」です。

 10億株強のオファリングサイズとなり、資金吸収額は推定1.2兆円! 国内外の投資家に幅広く募集する予定ですが、金額が金額だけに、個人投資家にも相当量が配分される見通しです。個人マネーがゆうちょ銀行のPO株購入に費やされる(資金が吸い上げられる)ことは中小型株市場にはマイナス要因といえます。

 また、3月下旬にかけ、IPO(新規公開株)もラッシュ化することが決まっています。今年に入り、IPO数は1月1社、2月1社と例年に無いような不作ぶりでした。その反動か、2月IPOから丸1カ月空いた3月22日よりIPOが再開すると、ここから月末までに計16社の怒涛のIPOラッシュが控えます。

「1日に3社上場」が23日、28日、29日、31日の4日もある超過密スケジュール。これ、12月のIPOラッシュ期と同等といえ、IPOに資金が向かうことでマザーズ指数が下がるという展開も十分あり得ます。短期系の個人マネーがIPOに向かう影響は、個人投資家に人気の銘柄にとってはマイナス要因。この点にも注意をしておきたいところです。

 となると、低PBR株に対する関心の高まり、配当狙いの動きを想定して中小型では「バリュー株」が安全策と現時点では言えそうです。ゆうちょ銀行POやIPOラッシュによる資金分散影響を考えると、個人に人気の銘柄は回避したほうが賢明とも言えます。消去法的には、そもそも人気化していない中小型のバリュー株が残りそう。

 PBR1倍割れ銘柄の比率(2月末時点)を調べると、東証プライムが全銘柄のうち49%に対し、東証スタンダードは61%、東証グロース市場は6%。人気度では東証グロースに劣る東証スタンダード市場から、出遅れているバリュー株を探してみましょう。

東証スタンダードの出遅れバリュー株(時価総額大きい順)

【条件】(1)PBR0.5倍未満、(2)配当利回り3%以上
(3)過去1年騰落率10%未満、(4)売買代金25移動平均1,000万円以上

コード 銘柄名 PBR (倍) 配当利回り 過去1年 騰落率 時価総額 (億円)
7287 日精機 0.3 4.5% -7% 544
2790 ナフコ 0.3 3.1% 8% 540
5658 日亜鋼 0.3 3.4% 7% 153
5363 TYK 0.4 3.5% 7% 148
8542 トマト銀 0.3 4.4% 7% 133
8537 大光銀 0.2 3.9% -8% 125
8383 鳥取銀 0.2 3.9% 2% 122
9768 いであ 0.5 3.2% -12% 119
4404 ミヨシ 0.4 4.1% -14% 101
8349 東北銀 0.3 4.7% 4% 101
※株価データは3月1日終値時点

 PBR1倍どころか、0.2倍台といった超低PBR株もゴロゴロしているのが東証スタンダード市場。PBR0.5倍未満で、かつ配当利回りも3%以上ある高配当銘柄をピックアップしました。そもそも、こんな低PBR株ブームで出遅れてる株なんてあるの?と疑問が浮かびますが、出遅れ株はかなり多く存在しています。

 TOPIXバリュー株指数と並び、昨年来高値を更新している東証スタンダード指数。人気グロース株に目を奪われてるうちに、気付いたら上がってた的存在の東証スタンダード銘柄。人の行く裏に道あり花の山!