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黒田「逆バズーカ」で金融市場が波乱に

 日本銀行は、12月19~20日の金融政策決定会合で「大規模金融緩和」の修正を行うとしました。

 日銀による大規模金融緩和は、景気低迷とデフレが続く中、2%の「物価安定目標」を達成することを目標に、黒田東彦総裁が就任後の2013年4月に導入した量的・質的金融緩和です。

 当時「黒田バズーカ」と称されたほどインパクトが強く、第2次安倍政権の経済政策「アベノミクス」を側面支援し、株価の大幅な上昇にも貢献しました。

 今回の修正はイールド・カーブコントロール(長期金利の誘導水準を定め、国債買入れを実施すること)の運用見直しです。

 具体的には、長期金利の変動幅を従来の「プラスマイナス0.25%程度」から「プラスマイナス0.5%程度」へ拡大を容認するものです。国債買い入れ額を月間7.3兆円程度から9兆円程度に増やしました。

 金融マーケットは、この修正を「事実上の利上げ」と捉え、発表直後から、株安(=金利上昇はデメリット)、円高(=金利上昇で買われる)となりました。

 黒田総裁は決定会合後の記者会見で「修正は金融市場の歪みの是正であり、利上げではない」、「市場機能の改善によって金融緩和の効果はさらに高まる」、「景気への悪影響はない」と強調したものの、当日の日経平均株価(225種)の終値は前日比669円安、TOPIX(東証株価指数)は1.5%下落しました。

 ドル/円相場は1ドル=137円台から一時130円台まで急速に円高が進行しました。

 大方の市場関係者や投資家は2023年4月8日に任期を迎える黒田総裁の後任就任後に政策変更に移るとみていたため、完全なサプライズとなった格好です。

 株式市場でも想定より早い時期の修正がカウンターパンチとなり、買いポジション解消が強まりました。

 この市場の動きは時間の経過とともに過剰反応だったとされる可能性はあるものの、いずれにしても「混乱」は生じたことになります。

 株式市場では主に二つの目立った動きがあります。今回生じた円高進行が今後も持続する場合、輸出企業の業績の下方修正リスクが意識され、自動車や精密・機械セクターが総じて売られました。

 ちなみに主要輸出企業の通期もしくは下期の想定ドル/円レートは、デンソー=135円、アドバンテスト=130円、ファナック=130円、京セラ=135円、太陽誘電=143円、村田製作所=140円、トヨタ自動車=135円、スズキ=138円であり、現行水準と大幅に乖離(かいり)するものではないものの、株価の動きからは、投資家は「さらに円高方向に進む(下方修正含み)」と警戒している様子が見て取れます。

・トヨタ自動車の3カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

・村田製作所の3カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)