ASMLホールディング
1.EUV露光装置は長期的な需要拡大が続こう
ASMLホールディングは、7ナノから先の先端半導体の経済的生産に不可欠なEUV露光装置を世界で唯一生産販売している会社です。このほか、1世代以上前のArF液浸露光装置で95%、KrF露光装置で75%の市場シェアを持つ露光装置の専門メーカーです。
EUV露光装置は長期的な需要拡大が続くと予想されます。12月に入って出たニュースによれば、TSMCは現在アメリカ・アリゾナ州で新工場を120億ドルかけて建設中ですが、この工場では5ナノだけでなく4ナノ半導体(5ナノの進化版)も生産する予定です。生産開始は2024年になる予定です。
また、この新工場の横に2つ目の工場の建設を始めた模様ですが、この工場で3ナノ半導体を2026年から生産する計画です。これらの総投資額は400億ドルになるということです。この工場の最大顧客はアップルになる見込みです。なお、TSMCはアメリカCHIPS法の補助金を受ける可能性があります。
この動き(アメリカで最先端半導体工場を建設する動き)に対して競合するサムスンが追随する可能性もあります。EUV露光装置需要は長期的拡大が予想されます。
また、アメリカ政府が対中国半導体製造装置輸出規制に従うようにASMLホールディングに求めていると報道されています。EUV露光装置はもともと中国には輸出していませんので、対象となる露光装置はEUV露光装置の1世代前のArF液浸露光装置と、それ以前のKrF露光装置等になると思われますが、特に7ナノ半導体生産ラインでも使われるArF液浸露光装置が輸出規制の対象になると思われます。
ASMLホールディングはオランダ籍の会社であり、オランダは地政学的リスクの観点から、アメリカとの同盟関係がなければ存続が危うい国と思われます。従って、オランダとASMLホールディングは最終的にはアメリカ政府の要望を受け入れることになると思われます。その場合、一時的にArF液浸露光装置の売上高の伸びが鈍化するか、減収になる可能性もありますが、中国以外の国での半導体生産が活発になる可能性があるため、早期に減収分を取り戻すことができると思われます。
表5 ASMLホールディングの業績
グラフ2 ASMLのEUV露光装置:販売、出荷台数
グラフ3 ASMLホールディングの新規受注高
2.今後6~12カ月間の目標株価を前回の600ドルから770ドルに引き上げる
ASMLホールディングの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の600ドルから770ドルに引き上げます。
ASMLホールディングの楽天証券業績予想は変更しません。2022年12月期は顧客がEUV露光装置を早期に求めているため、それらの要望に応えて最優先でEUV露光装置を出荷した結果、検収(収益認識)が遅れています。また、部品不足、人手不足とインフレの影響が出ていることから、2022年12月期は増収減益が予想されます。この状況は2023年12月期以降に順次正常化すると思われるため、2023年12月期は20%以上の増収増益が予想されます。
今回の目標株価は、楽天証券の2023年12月期予想EPS18.45ドルに、今の2022年12月期ベースの予想PER41~42倍を当てはめました。高い評価ですが、EUV露光装置の半導体業界に対する重要性と成長性を考えると、この高い評価が今後も続くと予想します。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。
表6 ASMLホールディング:機種別サービス別売上高
本レポートに掲載した銘柄:アプライド・マテリアルズ(AMAT、NASDAQ)、ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)